コルベット史上最も速く、最も強力なエンジンスペックを持つ『コルベットZR1』
アメリカ本国では「コーベットゥ ズィーアールワン」とでも呼ばれるのだろうか。ドバイモーターショー2017でついに『コルベットZR1』が正式発表された。
この『コルベットZR1』、とにかく“鬼すごいクルマ”なので、車種名だけでも覚えておいてほしい。「今ほしいクルマは?」と問われて『コルベットZR1』と答えれば、あなたを見る周囲の目が必ず変わるに違いない。
シボレーによる英文リリースの見出しには、「RETURN OF THE KING(王者の帰還)──コルベット史上、最も速く、最も強力で、最先端のパフォーマンスを実現するスーパーカー」とある。
一見すると大げさな表現だが、『コルベットZR1』の中身を知ると、この言葉でさえ控え目であることがよくわかった。いったい『コルベットZR1』の何がすごいのか? それはこのクルマの途轍もないエンジンスペックにある。
ポルシェ911ターボSやV12フェラーリをも凌駕する『コルベットZR1』のパワー
『コルベットZR1』に搭載されるパワーユニットは、熟練のエンジニアによって手作業で組み立てられた特別仕様の「LT5」型6.2L V8エンジン。新開発のスーパーチャージャーは、究極のロードゴーイングマシンといわれる『コルベットZ06』より52%も大容量化された。
このスペシャルなエンジンによって、最高出力755hp(563kw)、最大トルク969Nmという、まさしく鬼のようなパワーを発揮する。もちろん、シボレー車として史上最強の数値である。
実際、755英馬力という最高出力は、ポルシェ『911ターボS』のそれを軽く上回り、V12エンジンを搭載するフェラーリの最新フラッグシップモデル『812スーパーファスト』にもわずかに劣るだけにすぎない。最大トルク969Nmはあらゆるスーパースポーツのなかでも抜きん出ている。
トランスミッションには『コルベットZR1』として初のオートマチックとなるパドルシフト付き8速ATが設定された。それにより、アクセルをグイッと踏み込めば、 0~96km/hが3秒以下という驚異の加速力、最高速度338km/h (『コルベットZR1コンバーチブル』は341km/h)という異次元の世界に突入する。
筆者は以前、あるレーシングドライバーに「最高速300km/hの世界とはどういうものか?」を聞いたことがあるが、それはまさに「ワープの瞬間」だという。前方視界が丸くすぼまって点のようになり、左右の景色が線のように流れる…。『コルベットZR1』のアクセルは“ワープレバー”でもあるのだ。
ボディカラーは名車『コルベット スティングレイ』を代表する鮮やかなオレンジ色
『コルベットZR1』のアイコンモデルは、燃え立つようなオレンジを用いた「セブリングオレンジデザインパッケージ」。ボディ全体はもちろん、ブレーキキャリパー、シートベルト、ステッチなど、各所にオレンジが施されている。
この鮮やかなオレンジ色は、クルマ好きならご存じのとおり、名車『コルベット スティングレイ』を代表するカラーだ。
これだけの突出したパフォーマンスを持つマシンだけに、レーサーも当然用意されている。サーキット走行向けの「ZTKパフォーマンスパッケージ」は、強力なダウンフォースを生む大型のハイウイングと、高いグリップ性能を持つタイヤ、さらにチューンナップ済みのサスペンションが組み込まれている。きっとこのマシンはワンメイクレースの花形になるだろう。
ドバイモーターショー2017で正式にお披露目となった2019モデルの『コルベットZR1』。当然、中東の石油王やその王族をターゲットとしているに違いない。見渡す限り広がる砂漠の一本道を300km/hオーバーのオレンジ玉が砂煙を巻き上げ疾走する様を、ぜひ見てみたいものである。
Text by Katsutoshi Miyamoto
Photo by (C)General Motors