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第20回 | ランボルギーニの最新車デザイン・性能情報をお届け

Terzo Millennio──ランボルギーニとMITが描く未来

アメリカのみならず、世界でも指折りの理系名門校、マサチューセッツ工科大学(MIT)。そして、イタリアを代表するスーパーカーブランドのランボルギーニ。一見なんの接点もなさそうな両者がコラボレーションし、現在開発している驚くべきクルマがある。その名はランボルギーニ『テルツォ ミッレニオ』。超先進的なテクノロジーを搭載した未来のEVスーパーカーだ。

ランボルギーニとMITが共同開発する「第三千年紀」の超先進的なEVスーパーカー

車名の『Terzo Millennio(テルツォ ミッレニオ)』は、イタリア語で「三番目の千年紀」を意味する。千年紀は英語でミレニアムといい、西暦を1000年単位で区切ったものだ。

無駄がなく、他を圧倒するような『テルツォ ミッレニオ』のスタイリングは、ひと目でそれとわかるランボルギーニらしいものだが、それでいて極めて未来的。フリントガラスはコクピットの下部まで伸び、テールライトは細い線のようなY字型をしている。

しかし、「三番目のミレニアム」という名にふさわしいのは、こうしたデザイン面ではなく、むしろ今後採用される予定の超先進的なテクノロジーだ。

開発の軸となるテーマは「蓄電システム」「革新素材」「推進装置」「先見的なデザイン」「エモーション」の5つ。このうち、MITとは「蓄電システム」「革新素材」の2テーマの研究開発でコラボレーションしている。

MITとの共同開発は、ランボルギーニが大部分の資金提供を行う形で約1年前にスタート。研究開発は始まったばかりだが、それでも『テルツォ ミッレニオ』には、その随所に「未来のEVスーパーカー」の姿が垣間見られるのだ。

『テルツォ ミッレニオ』はボディ自体がバッテリーで、車体の損傷を自ら修復する

まず注目すべきは、使用するバッテリーに「スーパーキャパシタ(電気二重層コンデンサ)」を想定していることである。

スーパーキャパシタは、通常のEVに搭載されるリチウムイオンバッテリーでは不可能だった急速な大電力充放電を可能とする。つまり、大量のエネルギーを一気に放出し、爆発的な加速力を持つスーパーカーに不可欠となる強力な電力を高速で供給できるようにするわけだ。

しかも、このバッテリーは車体のどこかに搭載されるのではない。ランボルギーニは、カーボン素材で構成された『テルツォ ミッレニオ』のボディとスーパーキャパシタを一体化させ、ボディ全体に蓄電機能をもたせる予定だという。これは、クルマそのものがバッテリーになるということだ。

また、このクルマは自らのボディ構造の状態を常時モニターし、事故などによる損傷を検出したときは、車体内のマイクロチャンネル(回復作用を持つ化学物質)を使って自動的に修復する。驚いたことに、まるでクルマが意思を持つかのように、ボディを自ら修復するというのである。

パワートレインは4つのホイールにモーターを搭載するインホイールモーターを採用

パワートレインには、4つのホイールにそれぞれ電気モーターを搭載する「インホイールモーター」システムを開発して搭載する予定。駆動方式は4つの車輪が直接トルクを発生する4WDだ。インホイールモーターは、大型エンジンを積む必要がなくなり、求める空力性能に応じた自由なデザイン設計が可能となるので、将来的に主流になるといわれるシステムである。

問題は、5つのテーマのうちの「エモーション」だろう。走りのフィールや運転の快適性に関しては今後、素晴らしい進歩を見せると思われるが、V12やV10を積まないEVのランボルギーニだけに、「イタリアンスーパーカーらしいサウンド」という面では課題が残る。

ランボルギーニは現在のV12エンジンが奏でるエキゾーストノートに替わるサウンドを研究中としているが、この難問の解決には時間がかかりそうだ。

いずれにせよ、これはランボルギーニが初めて本格的にプランニングするEVスーパースポーツのコンセプトカーである。ヨーロッパを中心に、将来訪れるはずのモータリゼーションの電動化を見据えたアプローチの第一歩だ。おそらく数年以内には、MITとともに開発を進めるこのプロジェクトの進展がまた報告されるに違いない。

Text by Kenzo Maya

Photo by (C) Automobili Lamborghini S.p.A

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第37回 | ランボルギーニの最新車デザイン・性能情報をお届け

最強オープン──アヴェンタドールSVJロードスター

『イオタ』の名は、ある世代の男たちにとって特別な響きをもつ。言わずとしれたランボルギーニの幻のスーパーカーである。この『イオタ』に由来する車名を与えられ、900台が昨年限定発売された『アヴェンタドールSVJ』は、“史上最強のアヴェンタドール”として大きな話題となり、瞬く間に完売となった。その興奮が収まらぬなか、さらなる魅力を加えた一台が登場した。オープントップモデルの『アヴェンタドールSVJロードスター』だ。至高のV12サウンドをオープンエアで愉しむ。こんな贅沢がほかにあるだろうか。

伝説の「J」再び。最速記録をもつ『アヴェンタドールSJV』のオープンバージョン

スーパーカー世代の男性は、「SVJ」という三文字に胸を踊らせるに違いない。1969年に先行開発の名目でたった一台だけが作られ、のちに事故で失われた伝説の実験車両「J」。その純正レプリカにつけられた名前だからだ。レプリカは『イオタ(Jota)』、あるいは『ミウラSVJ』と呼ばれている。「SVJ」は「スーパーヴェローチェ イオタ」の略だ。

ベースとなったのはランボルギーニ初のミッドシップスポーツカー『ミウラ』。生産台数については諸説あるが、6台、または8台ともいわれる。まさに幻のスーパーカー。だからこそ、『アヴェンタドール』シリーズの頂点に立つ存在として「SVJ」の名をもつモデルが登場したとき、ランボルギーニファンやスーパーカーファンが沸き立ったのである。

『アヴェンタドールSJV』が搭載するのは、最高出力770ps/8500rpm、最大トルク73.4kg-m/6750rpmを発生する6.5L V型12気筒エンジン。出力とトルクは、標準モデルよりもそれぞれ30hpと30Nm高められている。その圧倒的なパフォーマンスは、ニュルブルクリンク北コース“ノルドシュライフェ”での量産車最速タイム(当時)で証明済みだ。

従来の最速タイムは、昨年9月にポルシェ『911 GT2 RS』が記録した6分47秒3。『アヴェンタドールSJV』は、それを2秒以上も短縮する6分44秒97という驚異的なタイムを記録した。この最速クーペのオープンバージョンとなるのが、3月のジュネーブモーターショー2019でお披露目された『アヴェンタドールSJVロードスター』だ。

0-100km/h加速は驚異の2.9秒。ランボルギーニ史上“最速・最強”のロードスター

オープントップには『アヴェンタドールSロードスター』と同様の脱着式ルーフを採用した。ルーフは左右2分割式のカーボンファイバー製で、これを手動によって取り外す。クルマを降りなければならないが、オープン化の作業は非常に簡単で、ルーフも軽量。取り外したルーフはフロントのボンネット内にきれいに収納できるように設計されている。

電動で開閉するリヤウインドウを新たに採用したのもトピックだろう。ルーフを着けたクローズドの状態でも、ここを開ければV12サウンドをより愉しむことができるのだ。

脱着式ルーフにあわせてリヤのエンジンパネルの形状もフラットなものへと変更された。ただし、パネルにデザインされたランボルギーニファンにおなじみのY字は健在だ。そのほかのエクステリアはクーペを継承。大型エアインテーク、ワイドなサイドスカート、ヘキサゴン型スポイラー、リヤでは高い位置に設置された大型リアウィングが目を引く。

オープン化によって車重はクーペより50kgほど重くなっているが、それでも1575kg程度に収まっている。全長4943mm×全幅2098mm×全高1136mmものボディサイズをもち、12気筒エンジンを搭載するスーパーカーであることを考えると望外に軽量だ。それにより生み出されたパワーウエイトレシオはわずか2.05kg/hp。0-100km/h加速は驚異の2.9秒、0-200km/h加速は8.8秒でこなし、最高速度は350km/h超をマークする。

可変型エアロダイナミクスの搭載により、トップスピードを落とさず空力性能を強化

特筆すべきは「ALA2.0(アエロディナミカ・ランボルギーニ・アッティーヴァ2.0)」と呼ばれるテクノロジーの装備だろう。『アヴェンタドールSJVロードスター』が搭載するのは、クーペと同じ最高出力770ps の V12エンジン。この強力なパワーユニットを軽量ボディに積めば、車体を制御できず、フロントから浮き上がって一回転しかねない。

そこで、トップスピードを落とすことなくダウンフォースを強化する、ランボルギーニの特許技術である「ALA」が必要となるのだ。「ALA」は、簡単にいうと能動的に空力の負荷を軽減してくれる可変型エアロダイナミクスのこと。速度ではなく、車両状態に連動するという特徴をもつ。フロントスプリッタとエンジンフードのアクティブフラップをモーター制御することにより、フロントとリヤの空気の流れをコントロールしてくれる。

この「ALA」と、搭載されたすべての電子装置をリアルタイムで管理し、加減速やローリング、ピッチング、ヨーイングといった車両の挙動を常に把握する「ランボルギーニ・ピアッタフォルマ・イネルツィアーレ」(LPI)が連動し、あらゆる走行条件下で最高の空力設定を整えてくれる。さらに、曲がる方向に応じて「ALA」の設定をスポイラーの左右いずれかに切り替え、どちらかに多く気流を発生させる「エアロ・ベクタリング」も備える。

駆動方式は四輪駆動で、フロントアクスルとリアアクスルとの間トルク配分は道路条件、グリップ、ドライビングモードに応じて、リアルタイムに変化する。また、後輪操舵システム「ランボルギーニ・リアホイール・ステアリング」や磁性流体プッシュロッド式のアクティブサスペンションを採用し、高次元のドライビングダイナミクスを実現した。

走行モードは、標準の「STRADA(ストラーダ)」、スポーティな走りの「SPORT(スポーツ)」、サーキット走行向けの「CORSA(コルサ)」、そしてこの3種類をベースに自分好みにカスタマイズすることができる「EGO(エゴ)」の4種類から選択可能だ。

『アヴェンタドールSVJロードスター』は800台限定生産。価格は6171万4586円

インテリアは航空機に着想を得たデザインとなっており、ドアやメータークラスター、コンソールなどにカーボンファイバーを採用。シートやダッシュボード上部、コンソールボックスにはレザーやアルカンターラを使用している。また、コクピットの随所にもY字デザインがあしらわれ、「SVJ ロードスター」のインテリアプレートも装備する。

限定生産台数はクーペよりも100台少ない800台。日本での価格は、クーペからおよそ600万円高となる6171万4586円(税込み)と発表されている。しかし、これはあくまでも参考価格だ。ランボルギーニは、顧客の要望に応じてボディカラーやインテリアに事実上無限の選択肢を用意しており、それらによって価格も大きく変動する。

ランボルギーニのフラッグシップモデル『アヴェンタドールSVJ』のずば抜けたパフォーマンスはそのままに、オープン化をはたした『アヴェンタドールSVJロードスター』。シリーズ最速・最強の称号をもつオープンモデルの上陸がいまから楽しみでならない。

Text by Muneyoshi Kitani
Photo by (C) Automobili Lamborghini S.p.A.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
Lamborghini Press Conference – ジュネーブモーターショー2019
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