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第24回 | 大人ライダー向けのバイク

ブリンコに注目せよ──バイク+自転車の革新的ギア

40〜50代のライダーなら、「BULTACO(ブルタコ)」を覚えている人がいるかもしれない。かつて競技用オフロードモデルで世界に名を馳せたスペインのバイクメーカーである。このブルタコが2014年に電動バイクブランドとして復活。翌年から販売を開始したのが、電気モーターを搭載したバイクのような自転車であり、自転車のようなバイクの『Brinco(ブリンコ)』だ。

電動・人力・電動アシストの3つで走行できるトライアルバイクのような電動自転車

ブルタコといえば、スペインを拠点にトライアルやエンデューロ、モトクロスといったオフロード系の競技車両を製造し、1960年代から70年代にかけて一時代を築いたメーカーである。政情不安と経営不振によってメーカーとしての幕を閉じたのは1983年のことだった。

2014年に「ブルタコが復活した」というニュースが報じられると、世界中のバイクファンが驚いたものだが、さらに衝撃的で意外だったのは、そのマシンが電動アシスト自転車だったことだ。

スペイン人はモーターサイクル好きで、革新的なアイディアに賛辞を惜しまないお国柄で知られる。復活の第一弾となった『ブリンコ』は、メーカー側いわく“バイクと自転車のハーフ”。フレーム部分に1kW/hのリチウムイオンバッテリーを搭載し、電動、人力、その両方を組み合わせた電動アシストとして走行する。

そのかつてないライディングスタイルに加え、軽量フレーム、トライアル風のフォルムは、アクティブな性能を予感させるには十分。その存在感はまさに革新的といえるだろう(下の写真は『ブリンコR ランドローバー ディカバリーエディション』)。

『ブリンコ』は山野を駆け回るアクティブライディングが可能な新しいスポーツギア

『ブリンコ』は動力として、最高出力4hp(3kw)、最大トルク6kg-mのパワーを発揮する電気モーターを後輪ハブに搭載。同時に、自転車のようなクランクペダルによって人力を伝えることができる。

しかし、なによりその特徴は、電動アシスト自転車としてではなく、山野を駆け回るアクティブライディングが可能な「新しいスポーツギア」であることだ。

近年のトライアルバイクは非常に進化し、スポーツとして先鋭化している。そのため維持・管理にかなりのコストがかかり、手軽に愉しめるバイクとは言い難くなっているのが実情だ。一方、手軽な電動アシスト自転車には、スポーツライディングが愉しめる車両がまだそれほど存在しない。

『ブリンコ』は、これらのニーズを補って余りあるポテンシャルを秘めている。そこにはかつてのトライアル車の設計ノウハウが随所に取り込まれており、すぐにでもフィールドに持ち出したくなるほどだ。

たとえば剛性の高さが明らかな多角異型断面のフレームとスイングアーム。そして、トライアル車からフィードバックされたと思われるディメンションと前後ディスクブレーキ…。サスペンションはフロントにインバートタイプのフォークで、リアはサブタンク付きのダンパーを持ったモノショックだ。

ハンドルやサドルも自由度の高いライディングスタイルが可能な設定となっている。さらに、自転車と同じようなペダルは、クイックターンなどの際、ライダーにとってコントロールしやすい位置にできるメリットもあるという。

『ブリンコ』の価格は約53万円〜57万円、並行輸入なら日本でも入手することが可能

モーターのバッテリーは、約2時間のフル充電で約30kmの走行が可能。リモコン操作でロック・アンロックするキーレスエントリー用のリストバンドも付属し、スマートフォンの設定で連動させればバッテリー残量がリアルタイムにチェックできるのも面白い。

モデルはサスストロークや最高速度などが異なる4タイプがあり、価格は4000〜4300ユーロ(約53〜57万円)。残念ながら、日本にはブルタコの正規ディーラーがないため、手に入れるにはヨーロッパから並行輸入する必要がある。

とはいえ、今は流通や決済システムの進化によって世界中からあらゆるモノを購入できる時代だ。『ブリンコ』を入手するのも難しくはないだろう。

余談だが、1990年代後半から10年余りに渡ってMotoGPのトップライダーとして活躍したセテ・ジベルナウは、「ブルタコ」創業者であるフランシスコ・ブルトの孫にあたる。スペイン人のモーターサイクル好きはここでも証明された形だ。

Text by Koji Okamura

Photo by (C)Bultaco Motores

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第69回 | 大人ライダー向けのバイク

ドゥカティ ディアベル1260──悪役感溢れるクルーザー

クルーザーとは、平坦で長い直線道路を巡航(クルーズ)することに重点をおいたオートバイのスタイルのことだ。ハーレーダビッドソンやインディアンをイメージするとわかりやすいだろう。広大な北米大陸で発達したことから、日本ではアメリカンバイクとも呼ばれている。それをイタリア流のセンスによって味つけしたのが、ドゥカティ『ディアベル』である。従来のクルーザーと一線を画す独創的なデザインをもつ『ディアベル』は、2011年にデビューするや世界中で大ヒット。そして今回、第二世代へと進化した。

クルーザーでも「走りはやっぱりドゥカティ」。ファンの期待に応えるキャラクター

2010年にEICMA(ミラノモーターサイクルショー)で発表された初代『Diavel(ディアベル)』は、斬新なデザインだけではなく、従来のドゥカティのイメージと異なるクルーザージャンルに挑戦したモデルとして話題を集めた。じつは、ドゥカティは2014年にフォルクスワーゲングループに属するアウディに買収され、その傘下となっている。レース由来のスポーツモデルというブランドのアイデンティティを脇に置き、経営戦略を優先した結果の新型車と見る者が多かったことも、注目された理由のひとつだったのだろう。

しかし、初代『ディアベル』は見た目以上にスポーティで、実際にライディングを味わった人々からは「やっぱり走りはドゥカティ」との評価を得ることが多い。そうしたユーザーの声は、期待どおりのキャラクターに仕上げられていることを証明するものだ。

その『ディアベル』が第二世代へと進化した。ドゥカティは3月に開催されたジュネーブモーターショーで2019年モデルの発表を行ったが、そこで専用スペースを与えられ、ショーのアイコンモデルとしてお披露目されたのが『ディアベル1260』だ。しかも、2014年のようなマイナーチェンジではなく、すべてを見直した2代目としての登場である。

低回転域でもパワフルな排気量1262ccの「テスタストレッタDVT」エンジンを搭載

アイコニックな外観は、シルエット自体に大きな変化はない。しかし、全体にボリュームアップしており、重量感も増していると感じる。トレリス(格子状)フレームもまったく新しくなり、ぱっと見た印象としては、よりヒール(悪役)感が演出されているようだ。短いシートエンドとスラッシュカットで跳ね上がるサイレンサーエンドは、リアまわりをすっきりとさせた。同時にマスが凝縮されているようで、鍛えられた筋肉を連想させる。

その細部への作り込みによる質感の高さが評価されたのか、『ディアベル1260』は第二世代であるにもかかわらず、ドイツの権威あるプロダクトデザイン賞「Red Dot Award 2019:Best of the Best(レッド・ドット・デザイン賞)」にも輝いているくらいだ。

エンジンは、初代から継承されてきた排気量1198ccの水冷L型ツインからスープアップされ、1262ccの強力な「テスタストレッタDVT」エンジンを搭載。それにより、最高出力は従来の152hp/9000rpmから159hp/9000rpmへ、最大トルクは12.5kgm/8000rpmから13.2kgm/7500rpmへとそれぞれ高められている。車体重量はドライウエイトで218kgもあるが、これだけのトルクがあれば低速域でも軽快に扱えるはずだ。

ドゥカティ自身も新エンジンについて、「息を呑む加速とスムーズな低回転域のパワー特性を備え、日常ユースにも長距離ツアーにも対応する」としている。そのパワーを受け止めるのは、『ディアベル』のトレードマークである極太のリアタイヤだ。クルマ並の240mmという超ワイドタイヤを装着し、ボッシュ製のコーナリングABSも標準装備された。

特別なコンポーネントを与えられたスポーティ仕様車『ディアベル1260 S』も設定

新型には標準仕様に加えてスポーティな「S」バージョンも設定された。こちらには、専用のシートとホイールが与えられるほか、ブレンボ製M50ラジアルマウント・モノブロック・ブレーキ・キャリパー、オーリンズ製サスペンションなどを装備。さらに、クラッチ操作をせずに変速できる「クイックシフトアップ&ダウンエボ」も標準装備される。

『ディアベル1260』は、すでに1月半ばからボローニャにあるドゥカティの本社工場で生産が始まっており、ヨーロッパでは3月から販売が開始された。日本での発売は7月ごろを予定している。4月13日には大阪で「Ducati Diavel Meeting」が開催されたが、なんとこのミーティングの参加者は現行『ディアベル』のオーナー限定だった。新型のオーナーになれば、こうした特別なイベントへの招待状がドゥカティから届くかもしれない。

Text by Koji Okamura
Photo by (C) Ducati Motor Holding S.p.A
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
Ducati Diavel 1260 オフィシャル動画
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