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第8回 | MINIの最新車デザイン・性能情報をお届け

クラシックミニ──200万円でプリミティブを愉しむ

日本で今、一番売れている輸入車をご存じだろうか。それはBMWが展開するモダンでおしゃれなクルマ「MINI」だ。街を歩けば、1日に何度も様々なタイプのMINIを見かけるはずである。しかし、昔を知る40〜50代にとって、MINIと聞いてイメージするのは現在のモデルではなく、クラシカルな形をしたミニマムカーの「ミニ」かもしれない。そうした古いモデルは「クラシックミニ」と呼ばれ、大人の男たちの間では今も人気を集めている。とはいえ、ひと昔前のクルマだけに市場に出回る台数には限りがあり、いつまでも手頃な価格で手に入るわけではない。良い状態のクラシックミニに乗れるのは、今がラストチャンスなのだ。

生産終了から17年が経過し、良質な状態の個体が激減している「クラシックミニ」

クラシックミニとは、1959年に「BMC(ブリティッシュ・モーター・カンパニー)」傘下の「オースチン」と「モーリス」から発売され、「BL(ブリティッシュ・レイランド)」などを経て、「ローバー」が2000年まで生産・販売してきた実用コンパクトカーのことだ。

最大の特徴は、「ミニ」という名前が示す通り、その小ささだ。全長はわずか3070mmで、全高は1400mm未満。にもかかわらず、その小さなボディに大人4人が乗れる十分な空間を確保しているのである。

この画期的な設計によってミニはコンパクトカーに革命を起こし、イギリスの人気テレビシリーズ『Mr.ビーン』でローワン・アトキンソン演じるビーンの愛車に使用されるなど、大ヒットを記録。日本でも1980〜1990年代に大人気となった。それは今も変わりなく、マニアックなコレクターが多い旧車の世界で、クラシックミニは一、二を争う人気モデルとなっている。

ただし、手頃な価格でこの革命的なミニマムカーを手に入れられるのは、今が最後のチャンスとなりそうだ。生産終了から17年も経つだけに、良質なクラシックミニが市場から年々減っているからである。

「2000年まで生産していたとはいえ、クラシックミニは半世紀以上も昔に設計されたクルマです。ボディは錆が出やすく、良い状態を維持するにはエンジンなどもこまめにメンテナンスしなければなりません。そうしたメンテナンスを行わず、乗りっぱなしにされてきた個体が今、淘汰されつつあるのです」

そう話すのは、東京・世田谷にあるミニ中古車専門店「iR(イール)」の代表を務める綾部俊さんだ。

良質な個体を購入するためのコツは1997年以降に生産された最終モデルを選ぶこと

綾部さんの店は、比較的新しい年式の良質な個体だけを扱う、ミニ初心者にとってありがたい専門店。ショールームには新車のようにピカピカに磨き上げられたクラシックミニがずらりと並ぶ。

「市場に今残っている良質なミニは、きちんと手入れされていた個体、あるいはずっと大切に保管されていた低走行の個体のどちらかです。クラシックミニは、過去には数十万円から100万円以内で手に入れることができましたが、現在は安心して乗れる個体の最低ラインは150万円。それだけ良質な個体が少なくなっているということです」

具体的には、その限られた台数のなかからどんな個体を選べばいいのか。

「当社がおすすめしているのは、1997年以降に生産されたいわゆる『最終モデル』。この最終モデルはエアバッグなどの導入で安全性が向上し、エンジンの信頼性も高いのです。でも、本当に重要なのは年式や走行距離ではありません。その個体がそれまでどのような整備をされてきたか、その“ヒストリー”を見ることです」

淘汰されつつあるといっても、大ヒットモデルのクラシックミニは今も数多く市場に出回る。そこから状態の良い個体を探すとなると、どんなオーナーのもとでどう扱われていたかという歴史を知る必要がある。そもそも、整備履歴がわからなければ、次にどんな整備を行えばいいかもわからない。

「価格の安い個体は、購入費用を低く抑えられる反面、日常使いできる状態に仕上げるまでに莫大なお金と時間がかかります。錆などによってボディの状態が悪く、完全に修復できないケースも多い。安心して乗ることのできるクラシックミニをお探しなら、多少高くても仕上がっている個体を選ぶべきです」

最初に整備にお金をかければ後は3000kmごとのオイル交換と年1回の点検だけでOK

綾部さんは「もし修理できる状態の個体があるとしても、それはすでに専門店が仕上げているはず」と指摘する。つまり、今市場に出ているクラシックミニは、「オンボロ」か「完璧」かのいずれかということだ。どちらを選ぶべきかは言うまでもない。

綾部さんの店では、クラシックミニの購入時に納車整備費として16万円を請求しているが、実際にはその金額で済むことはあまりない。数十万円かかることもざらで、ときには店が大赤字になるのを承知で100万円以上のコストをかけてクルマを仕上げているという。

仮にもビジネスなのに、なぜ一台のクラシックミニにそれほどお金をかけるのか。それは、そこまでの手間をかけなければ安心して乗れるミニに仕上がらないからだ。

「よくお客様から『故障は大丈夫?』と聞かれるのですが、故障しないクオリティまで仕上げてお渡しするのが当社の方針です。安心して乗っていただきたいですからね。そこまで仕上げたうえで、3000kmごとのオイル交換と年1回の点検さえ怠らなければ、ほぼ問題なく日常的に乗っていただけます」

ちなみに、1997年以降の最終モデルには、ベーシックな「メイフィア」、ラグジュアリーな「ケンジントン」、スポーティな「クーパー」と、いくつかの限定モデルが存在するが、メカニズム面はどれも変わらない。純粋に、それぞれの好みの仕様やボディカラーで個体を選んで大丈夫だという。

プリミティブがクラシックミニの魅力、200万円で手に入るのは今が最後のチャンス

そうはいっても、古いクルマにそれだけの手間とお金をかける理由がわからないという人もいるかもしれない。たしかに、装備や快適性、走行性能だけを見れば、現在のMINIのほうがクラシックミニよりはるかに上だろう。

しかし、クラシックミニには、このクルマでしか味わうことのできないプリミティブ(素朴)な魅力がある。

「クラシックミニには、『オート◯◯』『パワー◯◯』といった装備が一切ありません。まさにプリミティブで、そこには操る愉しみがある。クルマの本質が詰まっているといってもいいでしょう」

綾部さんの店には、こうした素朴さに魅せられた人たちがたくさん訪れる。年齢層は20〜30代から60代以上まで様々だが、共通するのは、その幅広い層の人々が一様に「クルマを買う」ではなく「ミニを買う」と言って来店すること。「指名買い」というより、「ミニの世界を買う」という感覚なのだ。

そして、もう一度言うが、そのミニの世界を手頃な価格で愉しめるのは今が最後なのである。

「良質なクラシックミニの価格相場は今、150万円から300万円。平均すると200万円前後でしょう。お金をかけてリフレッシュされた個体には、新車時より高い価格のものもあります。しかし、今以上に良質な個体に出会えるチャンスは、時間の経過とともにどんどん少なくなっていく。そうなれば、良質な個体の価値もさらに跳ね上がります」

クラシックミニのように、200万円前後の価格で買えて、クルマ本来の操る歓びも味わえるクルマには滅多に出会えない。もし興味があるなら、もはや悩んでいる場合ではなさそうだ。

Text by Muneyoshi Kitani

Photo by (C) BMW AG

取材協力
ミニ中古車専門店 iR(イール)
東京都世田谷区上野毛4丁目39−7 1F
TEL 03-5797-2288
ストック数とクオリティでは全国TOPレベルのミニが集まる専門店。インテリアショップのような100坪の屋内ショールームと70坪の屋外展示場には、約50台の厳選したROVER MINIとBMW MINIが並ぶ。ミニ専門工場 iR MAKERS(大田区)も設置し、購入後のバックアップ体制も万全。
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Eクラシック ミニ──電動化された古き良き時代のMINI

いわゆる「クラシック ミニ」は英国を代表するミニマムカーである。1959年から2000年までオースチンやローバーといったブランドから販売され、現在の「BMW MINI」のルーツとなった。ボディサイズは、全長わずか3070mm、全高1400mm未満。これほど小さいのに大人4人が乗車することができたのだから、まさに画期的な小型車だ。その「クラシック ミニ」に電動モデルが登場。しかも、コンセプトモデルなどではなく、限定100台の市販車である。クラシカルなデザインと小さなボディもオリジナルのままだ。

英国の老舗エンジンメーカーが生産販売する「クラシック ミニ」初の量産電動モデル

生産終了してから19年が経過した「クラシック ミニ」を、現代にEV(電気自動車)として甦らせる。そんな計画が発表されたのは、今年2月に英国で開催されたロンドン・クラシックカー・ショーでのこと。製造と販売を行うのは、1971年に創業し、モータースポーツ用のエンジン設計などにかかわる英国企業のスウィンドン・パワートレイン社だ。

「EVなのだからベンチャー企業が作るに違いない」と考えるのは大間違い。英国南部のウィルトシャー州に本拠地をおくスウィンドン社は、英国ツーリングカー選手権やラリーに出場するレース車両にエンジンを供給する内燃機関のプロフェッショナル。そのエンジンメーカーが初めて手がける量産型EVが、今回の『Eクラシック ミニ』なのである。

「クラシック ミニ」の電動モデルはBMWも製作したことがあり、同社は現行型MINIにモーターを搭載したEVバージョンを計画している。しかし、100台というまとまった台数の電動「クラシック ミニ」が一般向けに販売されるのは、これが初めてのことだ。

EVパワートレインの最高出力は、オリジナルの「クラシック ミニ」のおよそ2倍

スウィンドン『Eクラシック ミニ』は、フルレストアした「クラシック ミニ」のボディに自社開発のEVパワートレインと蓄電容量24kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載する。モーターの最高出力は80kW(約109ps)。これはオリジナルモデルのおよそ2倍に相当する出力だ。それ加えて、EVの特性として低速から強力なトルクを発生する。

最高速度は80マイル(約128km/h)、0~100km/h加速は9.2秒。けっして速くはないが、遅くて困るほどでもない。とはいえ、エンジンを降ろしたことで車両重量は720kgに軽量化された。その結果、車両の前後バランスが良くなり、バッテリー搭載によって低重心化されたのでキビキビ走ることだろう。満充電からの航続可能距離は約200km。バッテリーの充電には4時間ほどかかるが、オプションで急速充電にも対応するという。

「クラシック ミニ」はミニマムカーなので荷室の狭さが弱点のひとつだったが、ガソリンタンクを排除したことでその点も少し改善された。容量は200Lに拡大している。

価格は約1128万円と高額! BMWも現行MINIの電動モデルを今年中に発表予定

インテリアはオリジナルモデルを受け継ぎ、極めてシンプルなデザインだ。とはいえ、パワーステアリング、パワーウインドウ、電動サンルーム、シートヒーター、充電用USBポートといったオリジナルになかったEVらしい装備を充実させている。Apple CarPlayやAndroid Autoに対応するインフォテインメント・システムはオプションだ。

ボディカラーは6色から選ぶことができ、標準でルーフの塗り分けも可能。価格は7万9000ポンド、邦貨換算で約1128万円とかなり高額だ。しかし、これはベース車両となる中古車をハンドメイドで修復することから生産を始めるため、やむを得ない部分もあるのだろう。なお、BMWも現行MINIのEVバージョンを今年中に発表する予定だ。

Text by Kenzo Maya
Photo by (C) Swind
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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