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第19回 | フェラーリの最新車デザイン・性能情報をお届け

極上の深紅の一台──フェラーリ ポルトフィーノ

ポルトフィーノ(Portofino)はイタリアン・リヴィエラの景勝地で、イタリアで最も美しい港街といわれている。日本ではなじみが薄いが、古くからリゾートとして名を馳せており、各界のセレブ御用達の土地だ。その街の名をそのまま冠したフェラーリのニューモデル『ポルトフィーノ』が登場した。電動リトラクタブルハードトップを備えた2+2のFRスポーツ。この情報からも読み取れるように『カリフォルニアT』の後継モデルとなる。西海岸からイタリアン・リヴィエラへと名称を変えた深紅の一台は、どのような進化を遂げたのか。

イタリア一美しい港町「ポルトフィーノ」へと名称を変えたフェラーリの入門モデル

2009年のデビュー以来、フェラーリのエントリーモデル(といっても2000万円を軽く超えるが…)として人気を博してきた『カリフォルニア』。2014年には、ターボモデルである『カリフォルニアT』へと進化した。その正統な後継が『ポルトフィーノ』である。

『カリフォルニア』が採用したGTカーとしての利便性、つまり、ゆとりのあるコックピット、街乗りや小旅行をこなす2+2のシート構成、広いトランクなどを継承しつつ、さらに進化させた多様性に優れたモデルだ。

たとえば、実用度はトランクルームに見てとれる。オープントップ時ではラゲッジルームに中型のキャビントロリーを2 個、ルーフアップした状態では3 個の収納が可能だ。ちなみに、リトラクタブルハードトップ(RHT)の開閉にかかる時間はわずか14秒。低速走行時での使用もできる。

GTカーとしての快適度はシートにも現れている。オプションの電動シートは18通りに調整が可能。シートの縦方向位置とバックレフト角度調整に加えて、座面の高さ、角度、サイドクッション、バレスト中央部分、ランバーエリアも自分好みに設定できる。

フェラーリのデザインチームとエアロダイナミクス部門の融合が生み出す機能美

エクステリアは、2ボックス・ファストバックで構成。リトラクタブルハードトップを搭載したコンバーチブルとしては前例のないアグレッシブなスタイルだ。“エレガンス”と“ダイナミズム”、この相反する要素を融合させたシルエットにより、スポーツ性を強調している。

優雅なデザインを実現しながら最大限の空力性能を発揮するために、デザインチームとエアロダイナミクス部門は、開発当初から密に連携したという。

その結果、ノーズの左右両端まで広がる大型のラジエターグリル開口部が、より水平フォルムとなった新デザインのフルLEDヘッドライト・アッセンブリーによって強調されるなど、機能とデザインの融合が生まれた。

ヘッドライトの外側のエッジには、フロントのホイールアーチから側面に沿って気流を排出し、ドラッグを軽減する革新的なエアインテークが隠されている。

リアでは、トリマラン・デザイン(三胴船に由来したネーミング)がテールのソリッドかつワイドな印象を強調。RHT収納部のボリュームも巧みに処理され、自然なフォルムに仕上がっている。

V8ユニットに導入された最新電子デバイスが『ポルトフィーノ』を駿馬たらしめる

跳ね馬を跳ね馬たらしめる動力性能についてはどうだろうか。

心臓部には、2016年と2017年に2年連続で「インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー」を受賞したV8 パワーユニット。そこに新メカニカル・コンポーネントおよび特定のエンジン制御ソフトウェアなどを導入し、最高出力600ps(441kW)/7500pm、最大トルク760Nm/3000-5250rpmを実現した。

最高速度は320km/h以上で、0-100km加速は3.5秒。これらは、先代の『カリフォルニアT』から出力で40ps、最高速は4km/hアップし、0-100km加速は0.1秒の短縮となる。

トランスミッションには、選択したギアに合わせてトルク伝達量を最適化する制御ソフトウェア「バリアブル・ブースト・マネジメント」が採用されている。これは、ギアを3速から7速までシフトアップしていくと、エンジンから伝達されるトルクが最大で760Nmまで増大するというもの。

高速ギアのギアレシオをさらに高めることで、燃費改善や排出ガス削減の効果を生み出すのだ。また、低速ギアでは力強く連続的な加速を実現した。

フェラーリサウンドも進化、状況に応じて変化する『ポルトフィーノ』のエンジン音

エンジンはまぎれもない跳ね馬でありながら、ステアリングを握ると従順な駿馬へと変貌する。その軽やかでありながら力強く、信頼感の高い挙動は、最新の電子システムによって実現している。

「E-Diff3」と呼ばれる第3世代の電子リアデフは、トラクションコントロールと統合された電子制御デフシステム「F1-Trac」との組み合わせにより、メカニカルグリップや限界域での車輌コントロールも改善している。

また、このクラスで初めてとなるEPS(エレクトリック・パワー・ステアリング)を装備。「EPS」と「E-Diff3」を統合することで、高速走行時の安定性を犠牲にすることなくステアリングレシオを7%引下げ、ステアリング・レスポンスをさらに向上させている。

そして、個人的に大いに気になったのが、フェラーリ最大の魅力であるサウンドの進化だ。新設計のエグゾーストラインに加えて、フェラーリ初の電子制御バイパスバブルを採用することで、使用状況に応じて様々なサウンドを奏でるという。

具体的には、「IGNITION(イグニッション)」はミュートされた控えめなサウンド、「COMFORT(コンフォート)」は都市部や長距離運転に最適化しながらも、特徴的なフェラーリサウンドを奏でる。そして「SPORT」は、低回転からレッドゾーンまで、よりスポーティーなフェラーリサウンドの咆哮を堪能できる。

すでにフランクフルモーターショーでワールドプレミアを済ませた『ポルトフィーノ』。まだ価格は公表されていないが、『カリフォルニア』の2450万円を大きく下回ることはないだろう。日本で拝める日も、遠くない時期にやってくるはずだ。

Text by Tsukasa Sasabayashi

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第29回 | フェラーリの最新車デザイン・性能情報をお届け

フェラーリP80/C──特注のサーキット専用スーパーカー

世界に一台だけのフェラーリを作るのは、コレクターにとって究極の夢だろう。それを叶えてくれるのが「フェラーリ・ワンオフ・プログラム」だ。元映画監督の自動車愛好家、ジェームス・グリッケンハウスが製作を依頼した『P4/5ピニンファリーナ』に始まり、フェラーリクラブ・ジャパン元会長がオーダーした『SP1』など、現在までに十数台のワンオフ・フェラーリが誕生している。そして先日、また一台、フェラリスタ垂涎のワンオフモデルが完成した。車名は『P80/C』。約4年の月日をかけて開発されたサーキット専用車だ。

依頼主はフェラーリ・コレクター。60年代のプロトタイプレーシングカーをオマージュ

『P80/C』をオーダーしたのは、フェラーリのエンスージアストの家に生まれ、自身も跳ね馬に対する深い知識と見識をもつフェラーリ・コレクターだ。オーナーの素性はそれ以外明かされていない。しかし、並外れた財力をもつ人物であることは間違いないだろう。

オーナーからの注文内容は、概ねこういうものだ。1966年の『330P3』、1967年の『330P4』、そして1966年の『ディーノ206 S』。これらのフェラーリから着想を得た現代版のスポーツプロトタイプを創造すること。つまり、伝説のプロトタイプレーシングカーをオマージュした、最先端で究極の性能をもったサーキット専用車を作るということである。

開発を担当したのは、チーフのフラビオ・マンゾーニ率いるフェラーリ・スタイリングセンターと、エンジニアリングとエアロダイナミクス部門からなるチームだ。彼らが互いに協力し、オーナーと価値観を共有することで、世界に一台だけのフェラーリを作り上げた。製作期間は、じつに約4年間。これはワンオフ・フェラーリのなかで最長だという。

ベースモデルはレース車両の『488GT3』。自由な発想で作られたサーキット専用車

『P80/C』はガレージで鑑賞することを目的としたクルマではない。前述したとおり、往年のプロトタイプレーシングカーをモチーフにしたサーキット専用車だ。そのため、ヘッドライドは取り払われ、サーキット走行に必要なテールランプもリアセクションと一体化した独特の形状となっている。フェラーリの市販車は通常、丸型のテールランプをもつ。

ベースとなったのは、レース用車両である『488GT3』。エアロダイナミクスはベースモデルを踏襲しているが、『488GT3』のように「グループGT3」のレギュレーションに準拠する必要がないので、車体の各所に自由な発想が盛り込まれている。たとえば、なんとも大胆なリアの形状は2017年シーズンのF1マシンに採用された「T字ウイング」にヒントを得たもの。フロントリップスポイラーやリアのディフューザーなども『P80/C』のために専用設計された。それらにより、『488GT3』より空力効率がおよそ5%向上している。

エンジンフードのアルミ製ルーバーと凹型のリアウィンドウは、『330P3』『330P4』『ディーノ206 S』といったプロトタイプレーシングカーへのオマージュ。これらはひと目で『P80/C』とわかる特徴的なエクステリアだ。筋肉質なフェンダーが目を引くボディはカーボンファイバーで、フェラーリらしく「Rosso Vero」と呼ばれる赤で塗装された。

まるで戦闘機のコクピット。ロールケージ、6点式シートベルトを備えるインテリア

戦闘機のコクピットを思わせる室内にはロールケージが組み込まれ、インパネやステアリングには『488GT3』の面影を色濃く残している。しかし、ダッシュボードのサイド部分は専用デザインだ。バケットシートは鮮やかなブルー。素材については発表されていないが、アルカンターラと思われる。2座にはそれぞれ6点式シートベルトが装備された。

たったひとりのフェラーリ・コレクターのための作られたモデルなので、エンジンパワーなどのスペックは公表されていない。むろん価格もしかり。実車を目にする機会があるかどうかも定かではないが、どこかのコンクール・デレガンスでお披露目される可能性はある。いずれにせよ、間違いなくフェラーリの歴史に名を残す特別な一台となることだろう。

Text by Kenzo Maya
Photo by (C) Ferrari S.p.A.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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