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第20回 | 大人ライダー向けのバイク

さよなら、ヤマハSR400──幕を引く俺たちの単コロ

時代とユーザーの求めに応じて、デザインや採用される技術が絶え間なく変化し続けるクルマやバイクの世界で、約40年間も「変わらない」というのは、それ自体が名車である証だ。バイクでいうなら、ヤマハ『SR400』がその代表的モデルだろう。しかし、ヤマハは2017年9月1日、この名車の生産終了をアナウンス。突然の発表に、多くのファンから悲しみの声が上がり、ヤマハや販売店に問い合わせが殺到しているという。我々はもう二度と『SR400』に乗れないのか?

単気筒エンジン、クラシカルなスタイリング…約40年間変わらないヤマハ『SR400』

ヤマハ『SR400』は1978年の発売以来、細部の変更はあったものの、基本的にずっと変わらない。単気筒エンジンを搭載し、正統派クラシックのシンプルで美しいスタイリングは「オートバイの原型」とも評される。

また、独自のカスタムカルチャーはストリートバイクの王道でもあった。実際のところ、『SR400』の改造を通じて「ノートン」や「BSA(バーミンガム・スモール・アームズ)」といった英国の名車を知ったバイク乗りも多い。

ドラマや映画にも数多く登場し、なかでも印象深いのが、2003年に放送されたキムタク主演のドラマ『GOOD LUCK!!』だ。劇中には整備士役のヒロイン、柴咲コウの愛車としてライトカスタムされた『SR400』が登場。カスタムバイクがヒーロー物以外のテレビ番組に登場するのはとてもめずらしいことだ。

こうした具合に、『SR400』のエピソードは枚挙に暇がない。これほどファンに愛されてきたバイクがなぜ生産を終えるのか。その理由は、ご多分に漏れず、このところバイク業界を震え上がらせてきた新排ガス規制にある。

新排ガス規制とは、正式には「平成28年排出ガス規制」と呼ばれるもので、ヨーロッパの排出ガス規制「ユーロ4」に合わせて2016年10月に施行された。現行の『SR400』はこの新排ガス規制に適応しないため、これ以上継続生産できないというのがメーカー側の事情のようだ。

単気筒エンジンの鼓動でコーナリング中にマフラーが落ちる! まさかの「SR伝説」

『SR400』は、1976年に発売されたヤマハ『XT500』というオフロードモデルのフレームとエンジンをベースに開発された。そのため、必然的にセルモーターは搭載されず、キックスタートが標準となっている。

当初は400ccだけではなく500ccの『SR500』もラインナップされ、国内では普通自動二輪免許の限定解除が必要となることから登録台数は少なかったものの、海外ではマニアックなファンを多く獲得する。しかし、ヨーロッパや日本の排ガス規制に対応できず、2000年に生産終了となった。ビッグシングルの地面を蹴飛ばすトルク感がよほど刺激的だったらしく、コアなファンはこのときに「SR は終わった」と言うほどだ。

とはいえ、『SR400』の魅力はなんといってもそのエンジンにある。空冷SOHC 2バルブ単気筒エンジンをキックで目覚めさせると、圧縮と排気をまるで心臓の鼓動のように繰り返し、車体がその鼓動で振動する。

この振動は、『SR400』の“味”とも“弱点”ともいわれるくせ者で、暖機運転中にサイドスタンドが振動で折れて倒れたり、コーナリング中にマフラーが落ちたり、そんな「まさかの出来事」がよく聞かれた。しかし、これらの一つひとつを含めて「SR伝説」なのである。

開発中の『SR400』の後継モデルは、電気モーターを搭載した“静かなSR”になる!?

約40年のあいだ、『SR400』のモデルチェンジは驚きの連続だった。フロントブレーキがディスクからドラムに変更する“退行”があったかと思えば、再びディスクブレーキに戻されたり、ホイールがスポークホイールからキャストホイールに変更され、またスポークホイールに戻されたり…。『SR400』の未来像をめぐって試行錯誤が繰り返されたのである。

30周年を迎えた2008年にも、今回と同じように排ガス規制に適応できず、生産終了の憂き目にあっている。しかし、翌年にキャブレターからフューエルインジェクションに変更した環境規制対応モデルを開発。2010年モデルとして再度登場した経緯があった。

こうして簡単に振り返っただけでも、「なんてドラマチックなバイクなのだろう」と思わずにはいられない。『SR400』のようなバイクが消えてしまうのは本当に惜しい。

ただし、『SR400』はこのまま絶版になってしまうわけではない。ヤマハによると、発売時期は未定だが、「後継モデルの開発に取り組んでいる」という。

おそらく、従来の“SRのイメージ”を引き継ぎながら、新排ガス規制に対応した新しいモデルとして販売されることになるのだろう。そのときは、電気モーターを搭載した“静かなSR”が登場するかもしれない。

Text by Katsutoshi Miyamoto

Photo by (C) Yamaha Motor Europe

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第69回 | 大人ライダー向けのバイク

ドゥカティ ディアベル1260──悪役感溢れるクルーザー

クルーザーとは、平坦で長い直線道路を巡航(クルーズ)することに重点をおいたオートバイのスタイルのことだ。ハーレーダビッドソンやインディアンをイメージするとわかりやすいだろう。広大な北米大陸で発達したことから、日本ではアメリカンバイクとも呼ばれている。それをイタリア流のセンスによって味つけしたのが、ドゥカティ『ディアベル』である。従来のクルーザーと一線を画す独創的なデザインをもつ『ディアベル』は、2011年にデビューするや世界中で大ヒット。そして今回、第二世代へと進化した。

クルーザーでも「走りはやっぱりドゥカティ」。ファンの期待に応えるキャラクター

2010年にEICMA(ミラノモーターサイクルショー)で発表された初代『Diavel(ディアベル)』は、斬新なデザインだけではなく、従来のドゥカティのイメージと異なるクルーザージャンルに挑戦したモデルとして話題を集めた。じつは、ドゥカティは2014年にフォルクスワーゲングループに属するアウディに買収され、その傘下となっている。レース由来のスポーツモデルというブランドのアイデンティティを脇に置き、経営戦略を優先した結果の新型車と見る者が多かったことも、注目された理由のひとつだったのだろう。

しかし、初代『ディアベル』は見た目以上にスポーティで、実際にライディングを味わった人々からは「やっぱり走りはドゥカティ」との評価を得ることが多い。そうしたユーザーの声は、期待どおりのキャラクターに仕上げられていることを証明するものだ。

その『ディアベル』が第二世代へと進化した。ドゥカティは3月に開催されたジュネーブモーターショーで2019年モデルの発表を行ったが、そこで専用スペースを与えられ、ショーのアイコンモデルとしてお披露目されたのが『ディアベル1260』だ。しかも、2014年のようなマイナーチェンジではなく、すべてを見直した2代目としての登場である。

低回転域でもパワフルな排気量1262ccの「テスタストレッタDVT」エンジンを搭載

アイコニックな外観は、シルエット自体に大きな変化はない。しかし、全体にボリュームアップしており、重量感も増していると感じる。トレリス(格子状)フレームもまったく新しくなり、ぱっと見た印象としては、よりヒール(悪役)感が演出されているようだ。短いシートエンドとスラッシュカットで跳ね上がるサイレンサーエンドは、リアまわりをすっきりとさせた。同時にマスが凝縮されているようで、鍛えられた筋肉を連想させる。

その細部への作り込みによる質感の高さが評価されたのか、『ディアベル1260』は第二世代であるにもかかわらず、ドイツの権威あるプロダクトデザイン賞「Red Dot Award 2019:Best of the Best(レッド・ドット・デザイン賞)」にも輝いているくらいだ。

エンジンは、初代から継承されてきた排気量1198ccの水冷L型ツインからスープアップされ、1262ccの強力な「テスタストレッタDVT」エンジンを搭載。それにより、最高出力は従来の152hp/9000rpmから159hp/9000rpmへ、最大トルクは12.5kgm/8000rpmから13.2kgm/7500rpmへとそれぞれ高められている。車体重量はドライウエイトで218kgもあるが、これだけのトルクがあれば低速域でも軽快に扱えるはずだ。

ドゥカティ自身も新エンジンについて、「息を呑む加速とスムーズな低回転域のパワー特性を備え、日常ユースにも長距離ツアーにも対応する」としている。そのパワーを受け止めるのは、『ディアベル』のトレードマークである極太のリアタイヤだ。クルマ並の240mmという超ワイドタイヤを装着し、ボッシュ製のコーナリングABSも標準装備された。

特別なコンポーネントを与えられたスポーティ仕様車『ディアベル1260 S』も設定

新型には標準仕様に加えてスポーティな「S」バージョンも設定された。こちらには、専用のシートとホイールが与えられるほか、ブレンボ製M50ラジアルマウント・モノブロック・ブレーキ・キャリパー、オーリンズ製サスペンションなどを装備。さらに、クラッチ操作をせずに変速できる「クイックシフトアップ&ダウンエボ」も標準装備される。

『ディアベル1260』は、すでに1月半ばからボローニャにあるドゥカティの本社工場で生産が始まっており、ヨーロッパでは3月から販売が開始された。日本での発売は7月ごろを予定している。4月13日には大阪で「Ducati Diavel Meeting」が開催されたが、なんとこのミーティングの参加者は現行『ディアベル』のオーナー限定だった。新型のオーナーになれば、こうした特別なイベントへの招待状がドゥカティから届くかもしれない。

Text by Koji Okamura
Photo by (C) Ducati Motor Holding S.p.A
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
Ducati Diavel 1260 オフィシャル動画
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