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第47回 | メルセデス・ベンツの最新車デザイン・性能情報をお届け

AMGの特別なオープン──メルセデスAMG GTロードスター

スローガンは「Handcrafted by Racers.」、直訳すると「レーサーの手作り」。メルセデスAMG『GT』は、スポーツカーを愛するカーガイのために、モータースポーツを心から愛する職人たちが創り上げたスポーツカーだ。通常、AMGモデルは各ラインナップをベース車両とした高性能バージョンとして位置づけられているが、『GT』だけはベース車両が存在しない。そこからも、この車の特別さが伝わるだろう。そんな特別な一台であるメルセデスAMG『GT』のオープンモデルが、ついに日本でも発売されることになった。

激戦区を制するための特別なオープンモデル、メルセデスAMG『GTロードスター』

プレミアムスポーツカー市場は、世界的な激戦区だ。熾烈な競争を勝ち抜くためには、ライバルに引けをとらないライナップの拡充が必要となる。そういった意味で、オープンモデルの投入は欠かすことができない。

欧州では、短い夏を満喫するためにオープンカーでのドライブが盛んだ。また、最近は北米でもオープンモデルの人気が高まっている。プレミアムブランドがそこに注力するのは当然のことである。そんななか、満を持して導入されたメルセデスAMG『GTロードスター』が耳目を集めないわけがない。

オープンカーとしての最大の特徴は、アコースティックソフトトップだ。古くからオープンモデルを数多くライナップしたメルセデス・ベンツだけに、その作りには安心感がある。

マグネシウム、スチール、アルミニウムの三層構造によって軽量化を図り、低重心化に大きく貢献した。開閉動作はすべて自動。オーバーヘッド コンソールにあるスイッチを押せば走行中も50km/hまでは開閉が可能で、所要時間はわずか11秒ほどだ。

開放時にはソフトトップがシートの後ろに折りたたまれる。スペースに限りがあるオープンモデルで、この省スペース化はうれしい配慮だ。

プレミアムスポーツらしく、シックでスパルタンな『GTロードスター』のインテリア

幌が開いたときに存在感を示すインテリアにも注目したい。プレミアムスポーツららしく、印象はシックかつスパルタン。黒を基調とするなかに、シルバーのセンターコンソールやフロアセレクターが栄える。ダッシュボードは水平基調とすることで幅を強調し、力強い翼を思わせる雰囲気を醸し出す。

室内のポイントは見た目だけではない。スポーツカーだけにドライバーファーストの作りも十分だ。高いベルトライン、ドアパネル、ダイナミックにせり上がるセンターコンソール、低いシートポジションは、ドライバーの身体をコックピットに一体化してくれる。また、AMGのシートとして初めて、温風で首元を暖めるエアスカーフを装備した。

エクステリアで目を引くのは、フロントグリルだ。クロームメッキを施した 15本の垂直フィンの基本デザインは、1952年にメキシコで開催された伝説の公道レース、カレラ・パナメリカーナ・メヒコで優勝したレーシングカー『300 SL』で初めて採用された由緒あるもの。低く構えたフロントセクションと前傾したフロントグリルは、「サメの鼻先」のような独特な形状を演出し、車体が路面に張り付くような印象を与えてくれる。

1人のマイスターが最初から最後まで手作業で組み上げる『GTロードスター』の心臓部

スーパースポーツとして気になるのは、その動力性能だろう。心臓部はひとりのマイスターが最初から最後まで責任を持って一基のエンジンを手作業で組み上げる“One man – one engine”だ。

搭載されている4.0L V8直噴ツインターボエンジンには、メルセデス・ベンツのF1チーム「メルセデスAMGペトロナス」の技術も使われた4.0L V8直噴ツインターボエンジンが搭載されている。上位モデルである『GT ロードスター』は最高出力476ps(350kW)、最大トルク630N・m、『GT C ロードスター』は最高出力557ps(410kW)、最大トルク680N・mを発揮。『GT Cロードスター』は、0-100km/h加速3.7秒を実現した。

このモンスター級のパワーは、デュアルクラッチ式トランスミッション「AMG スピードシフト DCT」、各種センサーからの情報によりドライビングの状況を検知して、マウントの硬さを自動で調整する「ダイナミックエンジントランスミッションマウント」(『GT C ロードスター』に搭載)、さまざまな運転状況から最適な後輪操舵量を計算してアシスとする後輪操舵システム「AMG リアアクスル ステアリング」(『GT C ロードスター』に搭載)などによって、路面へと伝えられる。

日本でオープンカーにぴったりの季節は、湿度が高く空気がベタつく夏よりも秋から初冬にかけてだ。個人的には、真冬でも厚着をしてグローブを装着し、乾いた冷たい空気のなか、帆を開けたオープンカーを操るのは、粋な大人のクルマの楽しみ方のひとつだと憧れてしまう。

『AMG GTロードスター』の価格は1834万円、『AMG GT C ロードスター』は2298万円となっている。少々お高いが、このスーパーオープンスポーツで晴天の冬の日に景色が良いワインディングを駆け抜けたら、さぞかし気持ちがいいことだろう。

Text by Tsukasa Sasabayashi

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第77回 | メルセデス・ベンツの最新車デザイン・性能情報をお届け

エンスー垂涎の納屋物──メルセデス300SLガルウィング

ヒストリックカーの世界には、「バーン・ファウンド(Barn Found)」と呼ばれるジャンルが存在する。バーンは「納屋」、ファウンドは「見つかった」。つまり、納屋で見つかった古いクルマという意味だ。いわゆる「納屋モノ」。2年前の夏、岐阜県の納屋から発掘された1969年のフェラーリ『365GTB/4“デイトナ”』がオークションで高値落札され、世界中で大きなニュースとなったのは記憶に新しい。そして今年3月、やはり納屋で見つかった古いメルセデス・ベンツが、フロリダ州で開催されたコンクール・デレガンスに登場して注目を集めた。朽ち果てた姿で会場に展示されたそのクルマは、1954年に製造された『300SL“ガルウィング”』。名車中の名車とうたわれる、コレクター垂涎の一台である。

亡き石原裕次郎も愛車にしていたメルセデス・ベンツの名車『300SL“ガルウィング”』

『SLクラス』の「SL」は、ドイツ語でライトウェイトスポーツを意味する「Sport Leicht (シュポルト・ライヒト)」の頭文字からとったものだ。メルセデス・ベンツがラインナップする2シーターオープンカーの最高峰に位置づけられている。その初代モデルとなったのが『300SL』である。1954年のニューヨークモーターショーでデビューした。

通称は“ガルウィング”。特徴のひとつであるガルウィングドアに由来する。『300SL』はワークスレーサーのプロトタイプとして開発されたモデルで、当時のレーシングカーと同じ鋼管スペースフレーム構造をもっていた。それゆえに、ドアの下半分をフレームが通っており、また、開口部の敷居が高いうえに車高が低くて非常に乗り降りがしづらい。こうしたことから、やむを得ずガルウィングが採用されたというエピソードが残っている。

世界初の直噴エンジン搭載車としても知られ、車名の「300」はメルセデス・ベンツの排気量表記で3.0Lを意味する。直列6気筒エンジンは最高出力215psを発生し、最高速度は260km/h。当初は市販予定がなかったが、有力インポーターが北米市場に需要があるとメルセデス・ベンツを説得し、わずか1400台が生産・販売された。そのうちの一台は、あの昭和の大スター、石原裕次郎の愛車となり、現在も北海道小樽市の石原裕次郎記念館に展示されている。その『300SL』が、ご覧のような姿で納屋から発見されたのだ。

半世紀以上もガレージでホコリをかぶっていたが、ほぼオリジナルに近い状態を保持

シャシーナンバー「43」の『300SL』は、2018年末にフロリダ州のとあるガレージで見つかった。発掘したのはドイツ・シュツットガルト郊外に専用施設をもつ「メルセデス・ベンツ クラシックセンター」。同社のヒストリックカーのレストアのほか、レストア済み車両の販売も行う。施設内には真っ赤なボディカラーの『300SL』も展示されている。

この『300SL』は1954年にマイアミ在住のオーナーに出荷された個体で、走行距離計が示しているのは、たったの3万5000kmだ。Englebert社製のCompetition(コンペティション)タイヤにはまだ空気が少し残っていたという。車両自体もほぼ出荷時のままで、ボディパネル、ライト類、ガラスパーツ、グレーのレザーシート、ステアリングホイール、インテリアトリム、パワートレイン、ホイールにいたるまでオリジナルを保持している。

注目してほしいのは、「フロリダ植民400年」を記念した1965年のリアのナンバープレートだ。これを見ると、持ち主は少なくとも1954年から1965年までクルマを所有していたことがわかる。つまり半世紀以上を納屋で過ごしていた可能性が高いのである。

フロリダの国際コンクール・デレガンスには連番シャシーの二台の『300SL』が登場

ボロボロの『300SL』は発見したクラシックセンターの手にわたり、フロリダ州の高級リゾート地、アメリア・アイランドで毎年開催される「アメリア・アイランド・コンクール・デレガンス」(今年は3月7日から10日)にて旧車ファンたちにお披露目された。

その隣に並んでいたのは、見事に修復された鮮やかなブルーの『300SL』。驚いたのは、この個体のシャシーナンバーが「44」だったことだ。そう、納屋で発見された『300SL』の次に生産された個体なのである。『300SL』のような希少なヒストリックカーが連続するシャシーナンバーでコンクール・デレガンスに登場するのはかなりレアな出来事だろう。

『300SL“ガルウィング”』はメルセデス・ベンツのなかでも名車中の名車として知られ、自動車コレクターなら必ず所有したい一台といわれている。その価値は現在も上昇し続けているほどだ。そういう意味では、なんとも貴重で贅沢な光景といえるのではないか。

Text by Kenzo Maya
Photo by (C) Daimler AG
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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