穏やかなるかなカルネ村   作:ドロップ&キック
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さて、手に汗握る緊張感に溢れた一戦です(笑
イグヴァルジ君はどのくらい頑張れるか?




第64話:”剣豪の闘気”

 

 

 

「では、始めようか」

 

エ・ランテル冒険者組合に併設された訓練場にてモモンガ(ダークウォリアー)は、ミスリル級冒険者チーム”クラルグラ”のリーダーであるイグヴァルジと対峙する。

 

こうなった要因は単純に言えば英雄願望を拗らせたイグヴァルジが、王国で冒険者活動もしてないのに英雄と呼ばれているアダマンタイト級冒険者ダークウォリアーにからんだからなのだが……

 

ただ、ダークウォリアーがいつ”死の螺旋”が発動するかわからない非常時においてもこんな勝敗がわかりきってるPvPを受けたのかと言えば……

 

(まあ、冒険者ってのは実力社会だからなぁ~)

 

生まれや身分、学のあるなしに関わらずのし上がれるのが冒険者稼業だ。少なくとも建前ではそうなっている。

もっとも、王国ではダークウォリアーとイビルアイ(キーノ)という、チームではなく()としてアダマンタイト級冒険者登録してる二人を除けば、残るアダマンタイト級冒険者は()()()であり、またそのリーダーは貴族だったりするのだが……

 

それはさておき、モモンガは竜王国でビーストマンの間引きを始めてから、どんなに少なく見積もっても職歴20年を超えるベテランの冒険者だ。

ならば、その在り方も慣わしもよく知っている。

 

(王国では、()()()()()()あんまり目立つことはしたくなかったんだけど……なんか貴族ともめそうだったし)

 

お忘れかもしれないが、モモンガはアダマンタイト級冒険者ダークウォリアーとして以外にもう一つ、”人間として行動する顔”を持っている。

そう、王都で活動するときによく使うアーグランド評議国特使”アインズ・ウール・ゴウン”としての顔だ。

ランポッサ王の命の恩人にして国王即位前からの友人、ラナー殿下の家庭教師……そういう立ち位置だからこそ、望む望まないに関わらず大半が腐敗と退廃の限りを尽くしている王国貴族とも相応の付き合いはある。

 

そういうバックボーンがあるからこそ時には人目を引く派手で華やかに振舞わねばならないアインズと異なり、ダークウォリアーとしては少なくとも王国では慎ましくやっていたかったところだが、今回のイレギュラーなケースは仕方ないと納得する。

降る掛かる火の粉は掃わねばならないし、この名前も知らない冒険者も振る掛かる火の粉の一つと思えば腹も立たない。

それに、

 

(多少は、実力を示すのも悪いことじゃないんだろうし)

 

情勢が変わって、エ・ランテルである程度の冒険者活動を行わねばならなくなる可能性も考慮すれば、そう悪い状況じゃないと自分を納得させる。

 

 

 

「テメェ……なんで剣を抜かねぇんだよっ! 背中の馬鹿でかい剣は飾りかっ!?」

 

自ら剣を抜き切っ先をダークウォリアーに向けながら吼えるが、

 

「必要なら抜くさ。むしろ私に剣を抜かせることが出来たら上出来だよ?」

 

と剣どころか拳を構えることすらしない。

 

「どこまでナメくさりやがってっ!! 往生せいやっ!!」

 

そう殺意満載で踏み込むイグヴァルジだったが、

 

(ある意味、往生はもうしてるんだけどな~。正体、骨だし)

 

小粋なアンデッド・ジョーク(?)を心の中で浮かべながら、

 

(かつ)っ!!」

 

()()()()()()()()()I()I()》発動っと)

 

 

 

「くはっ!?」

 

ダークウォリアーの喝破を受けた途端、イグヴァルジに出た反応は顕著だった。

持っていた剣をカランと滑り落とし、そのまま両膝を折り朽木が崩れるように倒れこんだのだ。

息も絶え絶えで、顔からは血の気が失せている……むしろ気絶してないだけ奇跡だろう。

誰がどう見ても戦闘不能である。

 

そもそも《剣豪の闘気》とはなんなのか?

モモンガは”死の支配者(オーバーロード)”モードのとき、種族スキルで《絶望のオーラ》というものを撒き散らせ、また原作に加え100年という月日を重ねたこの世界線では、本来は無指向性の範囲攻撃だったそれに指向性を持たせるまで研鑽していた。

 

だが、ダークウォリアーやアインズのような人間モードの時は、種族スキルである《絶望のオーラ》は使えない。

だが、その穴埋めをするように発現したのが、この()()()()()()()()である《剣豪の闘気》であった。

 

どうやら、このスキルは前衛職持ちで一定のレベルに達した者に発現する物らしい。

どれが得意というものが高ければ《武人の闘気》と発現するようだが、ダークウォリアー(アインズ時のステータスや職業スキルはダークウォリアーと共通)のように刀剣ステータスが高い者には《剣豪の闘気》、ゼロのように無手格闘のステータスが高い者には《拳鬼の闘気》など派生するようである。

 

またこのような派生スキルには装備によって効果ボーナスがつき、例えば《剣豪の闘気》は刀剣類を装備してるとブーストがかかり、ブースト率は前衛ステータスの上昇に比例して大きくなる。

本質的には原作でセバス・チャンがクライムの路地裏特訓でみせたあのオーラと同じものと考えていい。

 

また、発現条件は前衛職業技能を持ってることが前提で、総合Lvに依存する。簡単に言えば最低総合Lv40でI、Lv50でIIと上昇してゆく。またこれが通じるのは自分より格下であることのようだ。

基本、Iは訓練を受けてない者なら居竦(いすく)みにより行動不能にさせ、訓練を受け相応のものでも行動にウエイトがかかる。

IIならイグヴァルジのような訓練を受けた者でも、人間や亜人種なら生理機能に甚大なダメージを受ける。

IIIであれば、『斬られた』と脳が誤認し、良くて失神、運が悪ければショック死する場合がある……などである。

 

加えて面白い特性としては同じ”()()()()”で同じ階位なら、相殺……打ち消しあうことが往年の少年漫画よろしく可能なのだ。

例えば、ゼロはもうちょっとで《拳鬼の闘気I》に手が届きそうだが、それをエクストラスキルとして習得できれば、ダークウォリアーが《剣豪の闘気I》を発しても闘気同士をぶつけレジストすることが理論上は可能だ。

ただパラメータはスキル階位だけでなく総合レベルの差なども関わってくるため、実際に対峙すれば同じI階位の闘気でもゼロは相当重く、油断すれば押しつぶされバッドステータスに飲み込まれそうな感覚を味わうことになるだろう。

 

また《絶望のオーラ》と同じく本来は無指向の範囲スキルではあるが、扱いに慣れればダークウォリアーのように指向性をもたせることもできるようだ。

 

そしてダークウォリアーはイグヴァルジを見下ろし、

 

「これで納得してもらえたかな?」

 

仮面を被っているので表情はわからないが……きっと鼻で笑ってるイビルアイや「当然の結果」と言いたげなエンリやゼロを除き、見物していた周囲の冒険者達は、アダマンタイト級冒険者の実力の片鱗を目の当たりにし水を打ったような静けさに包まれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




お読みいただきありがとうございました。

エ・ランテルにおいてはミスリル級では最強冒険者(?)のイグヴァルジ君の雄姿はいかがだったでしょうか?

出オチと言ってはいけません(^^
人化モモンガ様ならセバスみたいなことできるだろうな~という捏造スキルでした。


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