穏やかなるかなカルネ村   作:ドロップ&キック
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ようやくカルネ村から出ます(^^
そしてチラッとオリキャラ登場。




第61話:”お爺ちゃんの思い出”

 

 

 

「では出発する!」

 

村人に見送られながら、城門と呼ぶべきカルネ村の正面門から飛び出す3騎のアイアンホース・ゴーレム。

ゼロとエンリがそれぞれ1騎。当然のようにイビルアイ(キーノ)は先頭を走るダークウォリアー(モモンガ)のゴーレムに同乗、しかも後に乗るのではなく前に、モモンガの腕に抱きかかえられるように騎乗していた。

まあ、これが二人の昔からの定番の、あるいは鉄板の乗り方ではあるのだが。

ゴーレムは必要になればその都度に生成してる様だが、鞍はちゃっかり専用のタンデム用が用意されてる辺り確信犯だろう。

きっと愛する旦那(モモンガ)の腕に包まって、仮面の下のキーノの素顔は緩みきってるに違いない。勿論背中をぴたりと密着させるのも忘れない。

末永く爆発しやがれってってとこである。

 

今回、わざわざ馬でなくゴーレムを3騎も生み出したのは、キーノが種族的な縛りで馬に乗れないとかモモンガが実はあまり乗馬が得意でない……お骨様モードの時は無論、乗れないがダークウォリアー・モードだと今度は装備が重すぎて普通の馬だとすぐ潰れてしまうという理由もあるが、ひとえに磨耗はあっても疲労が無いゴーレムなら一気呵成にフルスピードでエ・ランテルまで駆け抜けられるからだ。

 

本当の緊急事態なら、むしろ複数人が移動できる上位の転移魔法でもいいのだろうが、法国の諜報機関員がエ・ランテルに潜伏していることがわかってる(というか王国に一定以上の人口を抱える都市には大抵法国の諜報員やら工作員が入っているようだ)のだから、こちらの手の内は可能な限り晒さない方がいいに決まってる。

 

蛇足ながら……かつて、見聞を広めるためにこの世界を自由気ままに二人旅してた放浪時代、本当の危険地帯を行く時はゴーレムではなくソウルイーターなどを騎馬代わりにして移動していたらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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その日のエ・ランテル城門警備担当エドガー・マクシミリアンとジョゼフ・ケンタッキーはありえない物を見た。

なんと全身を鎧で覆った巨馬が全速力で門に突進してくるのだ。

それも1騎ではなく3騎も!

 

先頭を切る馬に跨るのは、仮面の小さな人物を便乗させたエ・ランテルなら家の一件も買えそうな漆黒の全身甲冑に身を包んだ男だった。

 

(あんなのに跳ね飛ばされたら俺なんて一発でひき肉だろうなぁ……)

 

とはいえ自分は門番で給料をもらってるのだ。力づくで止める……のは無理でもせめて静止の一声でもかけなければ、給料泥棒の謗りを受け、命は助かっても失職してしまうかもしれない。

エドガーは官給品の槍を握りしめ勇気を振り絞り、

 

「止まってくださーーーいっ!!」

 

”キキキィーーーーーッ!!”

 

すると何故かアスファルトをタイヤで切り裂くようなGetWildな音を響かせながら、見事な横滑り(ドリフト)で馬を停止させる甲冑男。

堂々たる体格の甲冑男はエドガーが安堵する間もなく首からぶら下げた冒険者プレートを見せ付け、

 

「アダマンタイト級冒険者、ダークウォリアーであるっ!!」

 

そして仮面の小さいのも同じような仕草で、

 

「同じくその妻のイビルアイ」

 

さりげに正妻アピールを欠かさないキーノ。

そして立て続けに残りの2騎も、、

 

白金(プラチナ)級冒険者チーム”カルネ村修道会”、神官エンリ・エモット!!」

 

「同じくモンクのゼロ……!!」

 

全員の紹介を終えたところでモモンガ(ダークウォリアー)は代表し、

 

「火急の用件だっ!! 一刻を争う事態ゆえ、至急プルトン・アインザック冒険者組合長、パナソレイ・グルーゼ・デイ・レッテンマイア市長と会談したい! 速やかに手配するようにっ!!」

 

その低く響く雷鳴のような声の威厳と圧倒的な迫力にエドガーは腰が抜けそうになるのをなんとか堪え、大慌てで伝令を走らせるのだった。

 

 

 

どんな幸運が働いたのか、この世界の水準を考えれば十分に長い生涯を大過なく終えたエドガー・マクシミリアンは後年、孫にこう自慢げに語っていたという。

 

『お爺ちゃんは、漆黒の英雄から直接声をかけていただいたんだぞ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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エ・ランテル冒険者組合の登録名簿には、確かに竜王国の冒険者組合から移籍してきたダークウォリアーの名もイビルアイの名もきちんと登録されている。

だが、公的には王国内で冒険者としての活動記録が無いため、二人の存在はその御伽噺のような活躍も含めて眉唾と思う人間も少なくなく、半ば都市伝説化していたのだった。

そんな二人が冒険者組合建屋に現れたのだから、当然のように騒然となった。

 

いや、正確には半歩さがって臣下のように付き従うエンリとゼロの姿に最初は注目されたのだ。

”カルネ村修道会”自体は最大規模の冒険者チームとして冒険者組合のある周辺国にも知られた存在だが、お膝元であるエ・ランテルでは更に個々の存在もよく話題にあがるのだ。

 

中でも”カルネ村の七星剣”と名が知られた五人と一体と一匹は、純粋戦闘力なら白金級どころか上位のミスリル級……を通り越してオリハルコン級なのでは?と(まこと)しやかに囁かれていた。

 

七星剣の中でもグラップラー・ゼロとプリエステス・エンリ……二つ名持ちの二人を引き連れ先頭を切るあの漆黒の全身甲冑と仮面の女は何者だ?と。

 

「ダークウォリアー卿っ!! イビルアイ殿っ!!」

 

その答えを告げたのは、待ちきれず執務室からロビーにまで出てきていたプルトン・アインザック組合長だった。

 

 

 

都市伝説が、あるいは御伽噺の主人公が実在したことに、冒険者組合は驚愕に包まれた!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




お読みいただきありがとうございました。

ようやくエ・ランテルに到着です♪
いや~、ここまで無駄に長かった(^^

ちなみにカルネ村とエ・ランテルは一説には早朝に出れば夕方から夜には着くとのことなので、休息いらずで全力疾走できるアイアンホース・ゴーレムなら小一時間くらいで着くかな?



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