馬場入りの常歩はすこぶる柔らかい。トモの張りも目を引く。フローレスマジックは美浦Wの向正面からゆったりと駆けだし、僚馬の後ろでしっかり脚をためる。追い出しへの反応も素早い。手応え十分に2馬身先行するパロネラ(3歳未勝利)の内から同入。木村師も「よかったと思います。健康状態はいいのでは」と、状態に関してはなんら心配していない。
しかし、この馬がトレーナーの寿命を縮めてきた理由は別の所にある。オークスを最後に約2年、1800メートルを超える距離は走っていない。流れは近走よりゆったり。通常は折り合いの可否が争点になる。そこを問われると意外にも思える本音が垣間見えた。「むしろ引っ掛かってほしい。対応しちゃうかもしれない」
重賞で入着止まりに終わること実に5度。上にラキシス、サトノアラジン、2頭のGI馬がいる血統だ。早くから期待の大きかった良血が、ここというところで勝ちきれずにいる理由を闘争心とみているのだろう。
「コントロールが利くのがいいのか難しいところ。中山牝馬Sからチークピーシーズ? つけざるを得ない。つけてもツラっとしてますよ。つけてマイナスにはなってない」。いかに勝つ気持ちを引き出すか。腐心を重ねるトレーナーの、胃の痛い日は少なくともあと4日は続く。でもこの馬が本気を出せば、きっとあと4日で終わる。 (若原隆宏)