平成デジタルガジェット史
スマホが世界を席巻。PC・家電業界の大きな潮目が訪れる

激動の平成デジタルガジェット史 第8回:平成22~24年(2010~2012年)

30年にわたった「平成」という時代も今年で終わりを告げる。そんな平成という時代は、価格.comとも深い関わりのあるパソコンやデジタルガジェットが急激に成長した時代であった。そこで、平成時代の終わりに、この30年でパソコンやデジタルガジェットの世界がどのように変化してきたかを、3年ごとにざっくりとまとめてみようというのがこの連載企画だ。第8回の今回は、平成22~24年(2010~2012年)の3年間にフォーカスして、この時代をデジタルガジェットたちとともに振り返ってみよう。

平成22年(2010年) Androidスマホが多数登場、「iPhone」との競争が激化。いっぽうでタブレット「iPad」が登場

2年前の平成20年に、アップル「iPhone 3G」が発売されたことに端を発したスマートフォンブームだが、この時点での「iPhone」は、まだソフトバンクが日本国内における独占販売を行っており、大手キャリアのNTTドコモ、auの2社は、これに対抗できるようなラインアップを持っていなかった。しかし、この平成22年から、Googleが開発したスマートフォン向けOS「Android」を採用したスマートフォンが数多くリリースされ、NTTドコモ、auの2社を中心に、Androidスマホのラインアップが大きく拡充した。

ソニー「Xperia SO-01B」(ドコモ)

ソニー「Xperia SO-01B」(ドコモ)

サムスン「GALAXY S SC-02B」(ドコモ)

サムスン「GALAXY S SC-02B」(ドコモ)

その代表格とも言えるのが、ソニーの「Xperia」シリーズ、およびサムスンの「GALAXY」シリーズのそれぞれファーストモデルとなった「Xperia SO-01B」(ドコモ版。4月発売)と「GALAXY S SC-02B」(ドコモ版。10月発売)である。どちらの製品も、ワイドVGA解像度の4インチディスプレイを採用したハイエンドモデルだが、「GALAXY S SC-02B」は当時としては珍しかった有機ELパネルを採用していたのが特徴。Googleが開発した「Android」は、Googleのさまざまなアプリケーション(G-Mail、Chrome、Googleマップなど)との親和性が高く、iOSに比べてカスタマイズも自由に行えたため、ガジェット好きのマニア層を中心に人気を呼んだ。年末にはauからも、「おサイフケータイ」「ワンセグ」など、日本市場向け機能を搭載したシャープ製の「IS03」が11月に発売されるなど、auもこの流れに追随することになり、3大キャリアすべてがスマートフォンのラインアップをそろえるに至った。

シャープ「IS03」(au)

シャープ「IS03」(au)

対する「iPhone」は、相変わらずソフトバンクの独占販売状態だったが、6月に、デザインを一新した「iPhone 4」を発売。高解像度の「Retinaディスプレイ」を搭載するなどハードウェアが進化したほか、使い勝手の面でも「iOS」はまだまだアドバンテージが大きく、Androidスマホの追随は許さない独走状態だった。

アップル「iPad」初代モデル

タブレットという新たなジャンルを確立した、アップル「iPad」初代モデル

こうしてスマートフォンの市場では、アップル「iPhone」vs Google「Android」といった対立構図が鮮明になっていったが、そのいっぽうで、アップルはこの年、新たなジャンルのプロダクトを発売し、注目を集めた。それが「タブレット」というジャンルを定着させた「iPad」である。9.7型(1024×768)の大画面液晶ディスプレイを備えた「iPad」は、発売されるやいなや多くの消費者の注目を集め、たちまち大人気に。この頃すでに、スマートフォンが一般化しつつあり、使えるアプリもかなりの数にのぼっていたことから、自宅などで手軽にインターネットを楽しんだり、ゲームなどをプレイしたりといった用途で、「iPad」は多くのユーザーに受け入れられた。なお、「iPad」もこのときは、ソフトバンクの国内独占販売となっていた。

このように、アップルは、スマートフォン「iPhone」に続き、タブレット「iPad」を発売することで、携帯端末の市場シェアと人気を確実に押さえていっており、それまで栄華を誇っていた日本の携帯電話市場を大きく変えることになったが、影響を受けたのは携帯電話市場だけではない。パソコン市場も、この「iPad」の登場によって、微妙に変化せざるをえなくなった。というのも、この当時すでに、パソコンの主要な用途はインターネット閲覧(およびコミュニケーション)になっていたが、それらの用途をより手軽に行えるのがまさに「iPad」だったため、この頃から徐々にパソコンよりもタブレットの使用頻度が増え、逆にパソコンの利用頻度が低下していったのだ。パソコンの世界出荷台数は、翌2011年にピークを迎え、その後徐々にピークアウトしていくことになるが、その一因がこの年に発売された「iPad」および、これに続くタブレット端末の登場にあることは明らかだろう。

Acer「Aspire One 753」

低価格ネットブックの中でも人気のあった、Acer「Aspire One 753」

そんなパソコン市場では、相変わらず低価格のネットブックが人気で、ASUSの「Eee PC」シリーズや、Acer「Aspire One」シリーズ、HPの「HP Mini」シリーズなどが人気となっていた。この頃になると、ネットブック自体もだいぶ高性能化しており、以前の「低性能&低価格のモバイルノート」という雰囲気から「低価格&コンパクトなモバイルノート」という感じになってきていた。こうしたネットブックの高性能化はノートPC自体の低価格化を招いたが、同時に、新たに登場したタブレット端末によって、ネットブックは、インターネット端末としての地位を奪われつつもあった。

アップルの「MacBook Air」(11インチモデル)

アップルの「MacBook Air」(11インチモデル)。コンパクトさと低価格で、多くのユーザーを魅了した

そんなパソコン市場でこの年話題となったのは、やはりこちらもアップルの「MacBook Air」だった。この年の10月、初代モデルを刷新した新モデルのラインアップが登場。なかでも、従来の13.3インチモデルに加えて、新たにコンパクトな11.6インチモデルが登場したのがポイントで、その携帯性のよさと、最廉価モデルで88,800円~というリーズナブルな価格設定によって爆発的なヒットとなった。ストレージも従来のHDDからSSDへと変更され、OSの起動が速くなるなど、今の「MacBook」シリーズ人気の基本が確立されたと言っていい出来事だった。

大成功を収めた「iPhone」に加え、この年発売された「iPad」それに「MacBook Air」と、この年はまさにアップルがノリにノっていた時期と言えるだろう。

●この年発売された主なデジタルガジェット

・ソニー「α NEX-5D」
軽量コンパクトなミラーレス一眼デジカメとして人気を博した製品。当時としては画期的だった「レンズマウントよりもボディサイズが小さい」というスタイルは賛否両論あったが、その機動性の高さと、画質のよさなどから人気となった。ある意味で、ソニーの「α」シリーズの人気を決定づけた1台。

・シャープ「GALAPAGOS」
この年電子書籍市場に満を持して参入したシャープが発売したメディアタブレット。「TSUTAYA」と連携した電子書籍ストアと連携できるのがウリだったが、あまり流行ることなく終了してしまった悲運の製品。

平成23年(2011年) 東日本大震災、そして地デジ化完了。テレビの需要が一気に冷え込み、デジタル家電需要が一気にしぼむ

平成23年(2011年)の3月、「東日本大震災」が起こり、東北地方を中心にした東日本全域に甚大な被害を出した。まだ記憶に新しいこの大震災は、直接的・間接的に、日本国内の家電業界も大きな影響を与えた。

実は、この年の7月に「アナログ地上波停波」という、デジタル家電業界(特にテレビ市場)にとっての一大イベントが待ち構えており、地上デジタル放送(地デジ)への移行リミットに向けて、地デジチューナー搭載の薄型テレビの駆け込み需要が見込まれていた。実際、平成21年から開始された「家電エコポイント」の後押しもあって、この前年の平成22年には、過去最高レベルの販売台数でテレビが売れに売れた。そして迎えた平成23年、最期の駆け込み需要を狙おうと、各メーカーともテレビの増産に舵を切って備えていたが、3月に発生した東日本大震災の影響で一気に消費マインドが冷え込んだ。「家電エコポイント」によって元々需要を先食いしていた部分もあり、薄型テレビはこの年一気に販売不振に陥り、市場には売れ残った液晶テレビの在庫が目立つようになった。このときの過剰在庫が引き金となり、この後、日本国内のテレビメーカーの収益性は悪化の一途をたどることになる。

また、地デジ化の次の目玉機能としてテレビ業界が期待していた「3D機能」についても、「目が疲れる」「必要性を感じない」などの理由から不人気で、テレビ市場を盛り上げるまでには至らなかった。

このように、あまり明るい話題のなかったこの年であるが、東日本大震災で麻痺してしまった携帯電話網に代わって、重要な連絡手段として脚光を浴びたのが「SNS」である。この3年前から国内でのサービスが開始された「Twitter」「Facebook」などのSNSは、すでに多くのユーザーを抱えていたが、スマートフォンの普及とともにユーザーが急拡大しており、この震災をきっかけにさらにユーザーが拡大した。

この頃、すっかり携帯電話市場の中心となったスマートフォンは、相変わらず「iPhone」vs「Android」という図式の中にあったが、この年、ついにauからも新モデル「iPhone 4S」が発売されることとなり、ソフトバンクの「iPhone」国内独占販売は終わりを迎えた。いっぽうで、Androidスマホも参入メーカーが増え、これまでスマートフォンに及び腰だった国内の携帯電話メーカーも相次いで参入するなど、Androidスマホの種類はこの年飛躍的に増加した。前述のソニー「Xperia」やサムスン「GALAXY」シリーズを中心に、シャープ「AQUOS PHONE」、富士通「ARROWS」、東芝「REGZA Phone」、NECカシオ「MEDIAS」、HTC「EVO」、LG「Optimus」といったさまざまなシリーズが登場して、それぞれの個性を競い合いながら進化していった。

アップル「iPad 2」。ボディが薄くなり、処理速度も高速化されたことから、初代機を超える人気となった

アップル「iPad 2」。ボディが薄くなり、処理速度も高速化されたことから、初代機を超える人気となった

また、前年に登場したアップル「iPad」の後を受けて、タブレット市場もにぎやかになってきていた。アップルは「iPad」の改良版「iPad 2」を発売。ボディが全体的にスリムになり、処理速度も上がったことで、初代機を超える人気となった。また、これに対して、Androidを採用した「Androidタブレット」も一気に増え、ソニー「Sony Tablet」や東芝「REGZA Tablet」など、国内メーカーからもさまざまなタブレット製品が登場している。これらのAndroidタブレットは、全体的に「iPad」よりも価格が安めだったことから一定の人気を得たが、それでもこの市場における「iPad」の優位性を覆すまでには至らず、この当時、「タブレット=iPad」という図式は揺らぐことがなかった。このほか、巨大ECサイトとして急成長を遂げていたAmazonからも、Androidをベースとしたオリジナルの電子書籍端末(7インチタブレット)「Kindle Fire HD」が発売されている(日本での発売は翌年12月)。こちらは199ドル(約2万円)という低価格が受けて、アメリカ本国ではかなりのセールスを記録した。この成功が、翌年のアップル「iPad mini」発売につながっていったと言われている。

ソニー「Sony Tablet」。Androidタブレットの黎明期に生まれた製品だ

ソニー「Sony Tablet」。Androidタブレットの黎明期に生まれた製品だ

なお、ゲーム機市場では、携帯ゲーム機で新たな動きがあった。任天堂からは、当時人気だった「ニンテンドーDS」を改良した「ニンテンドー3DS」が2月に登場。当時一種の流行だった「3D」に対応した製品で、3Dメガネをかけずに3D効果を得ることのできる「裸眼3D機能」を備えていたのが特徴。ただ、実際には、この3D機能はあまり使用されることはなく、従来の「ニンテンドーDS」の順当なバージョンアップモデルとしての人気を得ていくことになる。

任天堂「ニンテンドー3DS」。裸眼3D機能を搭載した「ニンテンドーDS」の改良版

任天堂「ニンテンドー3DS」。裸眼3D機能を搭載した「ニンテンドーDS」の改良版

また、ソニー(SCE)からは、年末の12月に、従来機の「PSP」を置き換える携帯ゲーム機の新モデル「PlayStation Vita(PS Vita)」が発売。5インチの有機ELタッチディスプレイや、背面に備わったタッチパッドなど新機軸が満載で、ゲームタイトルの記録メディアも、PSPで採用されていた「UMD」から、メモリーカードに変更されるなど、大幅なアップデートが行われた。ネットワーク機能にも力が入れられており、据え置き機の「PS3」や、後年発売される「PS4」との連携機能など、かなり性能の高いハードウェアであった。

ソニー(SCE)「PlayStation Vita(PS Vita)」。UMDを廃し、ネットワーク機能を強化したハイスペック名携帯型ゲーム機として登場した

このほか、デジタルカメラ市場では、一眼レフカメラとは別の「ミラ-レス一眼」というジャンルがこの頃、かなり確立していた。前述のオリンパス「PEN」シリーズや、パナソニックの「LUMIX GX」シリーズといったフォーサーズ規格の製品のほか、ソニーの「α」シリーズ、ペンタックスの「Q」シリーズなど、各メーカーの独自規格を採用するさまざまな製品が登場していた。この時点で様子見だったのは、キヤノンとニコンの2大メーカーという状態だったが、この年、ついにニコンからミラーレス一眼の「Nikon 1」シリーズが登場。第1弾モデルとして「Nikon 1 V1」が発売された。ただ、この当時のミラーレス一眼カメラは、どちらかと言えば、エントリーユーザー向けに作られた、小型・軽量を強く意識した製品ばかりで、画質面がやや犠牲になってしまっている点は否めず、価格的に競合する各社のエントリー向け一眼レフカメラとの差別化が難しいなど、セールス自体は苦戦を強いられることになった。

ニコンが初めて製品化したミラーレス一眼カメラ「Nikon 1 V1」

ニコンが初めて製品化したミラーレス一眼カメラ「Nikon 1 V1」

●この年発売された主なデジタルガジェット

・富士フイルム「FinePix X100」
レトロな雰囲気を持った高級コンパクトデジカメとして人気を博した製品。発売当初の価格は128,000円となかなか強気だったが、光学ファインダーと電子ファインダーを組み合わせた独自のファインダーや、フジならではのフィルムシュミレーションモードなどが好評を呼び、後の「FUJIFILM X」シリーズとして展開されていくことになる。

平成24年(2012年) 7インチタブレットと変形モバイルノートが登場! スマホはAndroid勢がますます進化

前年、平成23年10月に、アップルの産みの親であり、「iMac」「iPod」「iPhone」「iPad」といったヒット製品を立て続けに世に送り出してきたスティーブ・ジョブズが亡くなった。このことを境に、アップルのモノ作りは変わったと後年言われるようになるが、プロダクトの面から振り返っても、確かにこれ以降のアップル製品で爆発的ヒットになった製品は数少ない気がする。

アップル「iPhone 5」。画面が3.5インチから4インチに縦方向に拡大したのが大きなトピック

アップル「iPhone 5」。画面が3.5インチから4インチに縦方向に拡大したのが大きなトピック

そのジョブズの死後、初めてとなる年に発売されたのは、画面が拡大した「iPhone 5」と、7.9型の液晶ディスプレイを搭載した「iPad mini」だった。「iPhone 5」は、それまでの「iPhone」が採用していた3.5インチという画面サイズから縦に拡大した4インチの液晶ディスプレイを採用。この頃進化の目覚ましかったAndroidスマホは4インチが標準の画面サイズだったので、これに対抗したものとも見られるが、多くのアプリが、互換性の問題からこの縦長の画面に対応せず、結局画面の上下に黒い枠が残ってしまうということが多いなど、やや拙速な感があったのも否めなかった。

7.9インチの液晶ディスプレイを搭載した小型タブレット、アップル「iPad mini」

7.9インチの液晶ディスプレイを搭載した小型タブレット、アップル「iPad mini」

また、小型タブレットである「iPad mini」は、片手で持ちやすい絶妙なサイズ感として多くのユーザー、特に日本市場では愛された製品であるが、ジョブズは生前「iPad mini」の発売に反対だったと言われている。その反対を押し切ってまで、アップルが7.9インチの「iPad mini」を発売したのには、前述の通り、前年に発売されたAmazonの「Kindle Fire」の成功が大きかったとされる。日本国内でも、この年の12月に、2代目となった「Kindle Fire HD」が発売されたほか、これに先立つ9月には、Androidを擁するGoogleから、オリジナルの7インチタブレット「Nexus 7」が発売され、19,800円(16GBモデル)という低価格設定もあって爆発的なヒットを記録。これらの製品群の登場によって、従来の10インチクラスのタブレットよりもコンパクトな「7インチタブレット」という新たなジャンルが一気に花開くことになった。

7インチタブレットの代表モデル、Google「Nexus 7」。当時19,800円という価格の安さもあって大ヒットとなる

7インチタブレットの代表モデル、Google「Nexus 7」。当時19,800円(16GBモデル)という価格の安さもあって大ヒットとなる

特に、Google「Nexus 7」の衝撃はすさまじかった。Googleのリファレンスモデルということで発売された「Nexus 7」は、いわゆる「ピュアAndroid」の最新版「Andoroid 4.1」を搭載しており、カスタマイズの幅が広かったことと、価格の安さもあって、多くのガジェット好きがこぞって購入した。価格.comの売れ筋ランキングでも1年近く首位をキープし続けたほどの人気で、「iPad mini」とともに7インチタブレットを代表するモデルとなった。

Amazon「Kindle Fire HD」。Amazonの電子書籍リーダーを兼ねた7インチのAndroid互換タブレットとして発売された

このようにタブレット端末がバリエーションを増やしていったのにともなって、タブレットとノートPCとの中間を狙ったコンセプトの製品も登場した。この年くらいから増えてきた「コンバーチブルノート」あるいは「2in1ノート」といったジャンルの製品がこれで、この年発売された代表的なモデルとしては、ソニー「VAIO Duo 11」や、デル「XPS 12」などがあげられる。これらの製品は、スレート状にしてWindowsタブレットのようにして使えるほか、変形機構によってキーボードを露出させれば、ノートPCとしても使うことができるという2wayの使い方ができるのが特徴。この後も、このような「2in1ノート」的な製品はバリエーションが増えていき、ノートPCの1ジャンルとして定着していくことになる。

デル「XPS 12」。画面が180°回転するギミックを搭載し、タブレットスタイルとノートPCスタイルの両方で使えるコンバーチブルノートだった

いっぽう、Androidスマートフォンは、ますますその進化のスピードを速めていた。特に、プロセッサーの進化スピードが速く、それまでは「iPhone」シリーズに大きく水を開けられていた操作のスムーズさが、この頃になると肉薄するようになり、処理速度だけならむしろこちらのほうが速いというモデルも登場していた。代表的なモデルとしては、サムスン「GALAXY S III」、ソニー「Xperia NX」、HTC「HTC J butterfly」、シャープ「AQUOS PHONE ZETA」、富士通「ARROWS X/Z」など。これらの製品はどれも処理速度が高速で、しかも操作がスムーズに行えることから人気となった。ただ、処理性能が高くなればなるほど、発熱も多くなり、バッテリー持ちも悪くなるという構造上の問題を抱えた製品もあり、トータルバランスにすぐれる「iPhone」の牙城を崩すまでには至っていなかった。

HTC「HTC J butterfly」。当時のAndrodiスマホの中では、性能、バッテリー、デザインのバランスにすぐれ、高評価を得た

デジタルカメラ市場では、スマートフォンの台頭とそのカメラ機能の進化にともない、コンパクトデジカメは徐々にその存在意義を失いかけていた。そうした流れの中で、高級路線に振った「高級コンパクトデジカメ」というジャンルが唯一人気を維持していた。その代表格とも言えるのが、この年発売されたソニー「サイバーショット DSC-RX100」だろう。手のひらに収まるほどのコンパクトサイズながら、1インチという大型センサーを内蔵。28~100mmの光学3.6倍ズームを備えたF1.8の大型レンズと組み合わせることで、非常に高精細な写真を撮影できると評判になった。この「RX100」の成功をきっかけに、ソニーをはじめ、キヤノン、ニコン、リコーなどのメーカーも、高級コンデジ路線をさらに強めていくことになる。

ソニー「サイバーショット DSC-RX100」。1インチという大型センサーを搭載し、コンパクトデジカメながら、非常に高精細な写真が撮れると話題になった

●この年発売された主なデジタルガジェット

・任天堂「Wii U」
平成18年に発売された「Wii」と後方互換性を持ちつつも、コントローラー側に画面を持たせ、テレビとの2画面で対戦ゲームを行ったり、コントローラー側だけでゲームをプレイしたりといった斬新なアイデアを盛り込んだ任天堂の新型ゲーム機。ある意味では、現在の「ニンテンドースイッチ」に近い考えを持ったハードと言える。ハードウェア性能も、当時のライバル機であった「PS3」や「Xbox 360」よりも高いと言われ、「ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オンライン」や「モンスターハンター3(トライ)G HD Ver.」などの人気サードパーティータイトルも発売されたが、今ひとつ人気が出ず、5年で終売となった。なお、現在スイッチでも人気の「スプラトゥーン」は、元々「Wii U」向けに作られたタイトルとなる。

鎌田 剛(編集部)

鎌田 剛(編集部)

価格.comの編集統括を務める総編集長。パソコン、家電、業界動向など、全般に詳しい。人呼んで「価格.comのご意見番」。自称「イタリア人」。

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