山本: そのだれかっていうのは自分の会社じゃないひとですか?
学生3: もちろんフリーランスで山本さんのように専門性を持っておられる方が残るのであれば、むしろ僕がマスメディアとして残るよりは、そういう人たちにしっかりお金を出して情報を買うというのも一つありかなと思います。
山本: 一つの考え方として、今の視点もあるかもしれませんが、要するに、ただお金の問題なのかっていうこともありますよね。
会社の中でも、例えば自分が経済部だったら、海外の取材をしたことがないという人がいきなり出て行くことはないと思うんですが、それまでの状況をずっと取材してきた専門家だったとしたら、やはり現地に残りたいと思う人は多いと思います。
学生3: 有給休暇を使って行くかもしれません。
山本: なるほど。でも、有給も会社が制限するかもしれないっていう問題もありますよね。
ここでどうしても考えてほしいのは、「やらなきゃいけない」という空気が、会社の中にあるかないかですよね。まず会社の中で「これはやるべきことだ」と決めて、で、実際にどうやるのかを考える。やるかやらないかではなく、当然やるのです。
世界的、歴史的にとても重要な大事件で、やらない理由は見つからないわけですよ。やはり会社はどんどん大きくなってくると、さっき言ったように部下の安全や保険はどうするのか、家族はどうするのか、あるいは世間の目も気になってくる。
それを全部おろそかにしていいという意味ではないですよ。それらを踏まえたうえで、やるべきことをやるためにどんなシステムをつくり、何をフォローしていけばいいのか、というところから考えていかないといけないと思います。
行けと業務命令を下した上司に責任はないのです。指示した直属の上司の責任を問わない。万が一、記者が現場で怪我をしたり命を失うことがあったとしても、その人の上司や社長のクビをきったりはしない。これは仕事としてやるべきことをやって、発生した事故だと考えるべきです。職業上のリスクだと会社全体がきちんと考えを統一することです。そしてそれを世間に対してもちゃんと説明する。