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AptBrush

健全な歯と歯茎のために適切な歯磨き力を誰でも実現できる歯磨き力リミッタ付き歯ブラシ

  • 以下に関するキャプション付き画像 利用イメージ

概要

歯や歯茎など口内環境は,虫歯の問題だけでなく,様々な病気との因果関係があります.口内環境を健全に維持する方法として,適切な力での歯磨きが挙げられます.弱すぎる歯磨き力では歯石等を除去できず,強すぎる磨き力では歯や歯茎へダメージを与えます.AptBurshはブラシのサイズ,歯磨き力,グリップ形状等をユーザごとに組み合わせ可能です.設定した閾値の磨き力になると歯ブラシが曲がると同時にクリック感でユーザに知らせます.電池等を使わないシンプルな構造で,従来の歯ブラシの習慣の中で,より質の高い口内環境維持をサポートします.


経緯

ある日,歯医者で,ちゃんと歯を磨いていますか? “100gf~200gf 程度の力でやさしく磨いてください”といいう曖昧で実効性の低いアドバイスを受けました. この際,“適切な歯磨き“があまりに管理されていないことに疑問を感じていました. 普段学んでいる機械は様々な規格でルール化されており,どのネジをどれくらいの力で締め付けるかルールがあり,それを誰でも実現できる道具も流通しています.そこで,個々人に必要な規定された歯磨き力を実現するAptBrushのアイデアの着想を得ました.  さらに調査を進めると,歯磨きのブラシ硬さや面積が口内環境の維持との積極的な関係性を示すデータが見当たりませんでした.逆に言えば,口のサイズや心地よさでブラシを選んでも,それに適合した歯磨き力×歯磨き時間,つまり各歯あたりに対して汚れを研磨して落とす仕事をコントロールすれば適切な効果がられると考えました.そこで,ユーザが好きな歯ブラシヘッドとハンドルを選べる組み換え構造と,歯磨き力リミッタを備えたAptBrushのアイデアに至り,開発を開始しました.開発にあたり,80%以上のユーザが500円以下の歯ブラシを選択していることを踏まえ,現在の歯ブラシと同じ感覚で利用できるデザインとすることを心掛けました.


機能

・歯磨き力が認識できる. 板ばねの飛び移り座屈現象を用いることで,事前に設定された歯磨き力の閾値を超えるまでは,ほとんど歯ブラシは曲がることはなく,閾値を超えた際に大きく曲がります.さらに,その際クリック感を発生させるため,口内から通じる音,手に感じるクリック感で,”今の歯磨き力が過剰である” と明確にユーザに認識させることが可能です. 飛び移り座屈現象は,アーチ断面構造等を有する板ばねにおいて発生させることができる現象です.元のアーチ形状と,それを裏返したアーチ形状のちょうど中間にあたる平たい板形状は,力を最もため込んだ不安定な極値となります.この極値を超える瞬間にクリック感と大きな変形が発生します. そのため,アーチ形状や板ばねの材質を調整することで,この極値を調整し,歯磨き力の設定に利用しています.外力,つまり手で押さえつける力を弱めると,元のアーチ状態に自動的に戻り,再度利用可能です.


開発過程

8割以上のユーザは500円以下の歯ブラシを購入する市場を考え,現在の歯ブラシになるべく近いシンプルな構成で,力を調整可能とすることを目指しました. 変形する歯ブラシを試作して自身で利用すると,歯磨き中は,どの角度までが適切な歯磨き力か歯ブラシの曲がり具合を正確に把握することは困難でした. ましてや,力に比例して歯ブラシが曲がると,単に歯磨きがしづらくなるだけと感じました. この体験から,閾値を超えた瞬間に大きく変形し同時にユーザにそのことを明示的に伝える方法の必要性を感じ,その実現方法を検討しました. これを実現する方法として,昔授業で学んだ材料力学の知識が役立ちました.ばねの座屈現象の1つである,飛び移り座屈現象に着目しました. この飛び移り現象が発生する瞬間にクリック感を生み出すこと,適切な歯磨き力で座屈するようにバネを含めた構造設計を進めました. 樹脂板の厚みやサイズ形状などを変更して,適切な座屈現象(クリック感)が発生する構造を試作を繰り替えしました.  最終的に,平板バネと,湾曲した板バネを並列で2枚利用する方法を発見しました. 平板ばねのばね定数を調整することで,歯磨き力を主に調整可能としました.湾曲した板ばねの厚みや湾曲度合いを調整することで,クリック感の強さを調整可能としました. 試作品を実際に利用すると,ブラシを前後左右に動かす摩擦抵抗では,2つの板バネが構成する平行リンク構造が力を支持して歯ブラシは大きく曲がらず,ブラシを歯に押しつける力が大きくなった場合のみに,カチというクリック感でそれを確認することが容易でした.最後に,このシステムをより実現性の高い構造としてデザインしました.樹脂の一体成型で,歯磨き力リミッタ機構を設計し3Dプリンタを用いて試作を繰り返しました.


差別化

強すぎる歯磨き力を抑制するために,柔らかいブラシの歯ブラシや,持ち手全体が柔軟に構成された歯ブラシは数多あります. しかし,これらが適切に利用されていないと感じました.その理由は,個人に適したブラシが選択できていないことと,どの程度歯ブラシが曲がった場合に強すぎる歯磨き力なのかがユーザには分からない点にあると考えました. これらを踏まえて,AputBrushが既製品と比較して,2つの特徴がありあす. 1)歯磨き力をクリック感で明示的にユーザに認識させる. AptBrushは,歯ブラシが曲がることで歯磨き力の大きさを伝えるのではなく,設定値を超えるまでは大きく曲がらず,超えた場合に,クリック感を発生させて大きく曲がる構造です.このため,”今の歯磨き力が過剰である” と明確にユーザに認識させることが可能です.これによって,ユーザは,歯磨き力を意識的にコントロールすることが期待できます. 2)個人に合わせて好みの歯ブラシを構成できる点です. AptBrushは, 口の大きさ,手の大きさなど,好みに合わせてブラシサイズやハンドルサイズを調整可能です.また, それらの構成部品を選んだ場合に,口内環境に適した歯磨き力を提供する歯磨き力リミッタばねを選ぶことが可能です. 歯石を除去したい人は,歯磨き力を強めに設定可能です.歯茎が下がっていたり,お子様が使用する場合は,弱い歯磨き力に設定可能です.


将来の計画

AptBrushの構成により,低価格においても,個々人の口内環境に適した歯ブラシを提供可能であると考えます. 一方で,どのような歯ブラシがそのユーザに適切なのかという点はいまだユーザには不明確です.どのような歯ブラシが開発されても,店頭で適切な歯ブラシを選択できなければ意味がありません. そのため,口内環境や年齢等と適切な歯ブラシ構成のガイドラインを作成し,スマホアプリ等でその組み合わせを選択可能とし,自分に適したオーダー歯ブラシが購入可能なシステム作りが必要と考えています. そこで,まずは歯科医師や歯ブラシ開発メーカと協力し,適切なAptBrush構成部品のレパートリーの策定を計画しています.


他アワードでの受賞歴

他アワード等には応募していません.


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