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第9回 | ベントレーの最新車デザイン・性能情報をお届け

Galene Edition──メガヨット仕立てのベントレー

ある調査によれば、個人資産10億円以上のビリオネアのうち、その20%が全長80フィート以上のメガヨットを所有しているという。プライベートジェットやスーパーカーのスペチアーレと同様に、豪華ヨットはひと握りの人しか持つことのできない別世界の代物といえる。だからこそだろう、ロールスロイスなどが特別な顧客の注文を受けて作るワンオフモデルには、ヨットをモチーフとしたものが多い。そして先日、また一台、そうしたスペシャルモデルが登場した。ベントレーのコーチビルディング部門が『コンチネンタルGTコンバーチブル』をベースに製作したもので、海原の女神の名を持つ美しい一台である。

超高級ヨットクラブに集う特権階級のために作られたベントレーのビスポークモデル

このモデルは『Galene Edition(ガレーヌ エディション)』と名付けられ、全世界でわずか30台のみが販売される。モデル名の由来は、ギリシャ神話に登場する穏やかな海の女神「ガレーヌ」。英国のラグジュアリーヨットメーカー「Princess Yachts(プリンセス ヨット)」とのチームアップで製作したものだという。

高貴な家柄の人々や富裕層にヨット(セーリング)を趣味とする人が多いのは、ヨットそのものと維持費に莫大なお金がかかるだけではなく、その成り立ちに理由がある。

セーリング文化は国によって異なるが、ヨーロッパやアメリカの場合、その起源は1700年代の英国王室に遡る。イングランド南岸に現在の英国ロイヤルヨットクラブの前身が創設されたのは1815年。植民地時代のアメリカでも1844年にニューヨークヨットクラブが創設された。そして、ヨーロッパとアメリカの貴族、富裕層にヨットを嗜む人が増えていき、大規模な国際ヨットレースが行われるようになったのである。

こうした歴史から、セーリングは伝統を重んじる傾向が強く、スタートの合図には今でも必ずキャノン砲が使われ、ヨットクラブのパーティーにはドレスコードがある。ヨットクラブに入会する際も会員の紹介がなければならない。

彼らは子どものころからヨットクラブで海に関する知識やセーリングを学び、大人たちはクラブの組織活動やヨットレースの企画運営、さらに次の世代の育成も担う。つまり、こうした特権階級においては、ヨットクラブが結社のような役割を果たしているのだ。そう考えると、今回の特別仕様車『ガレーヌ エディション』は、彼ら特権階級のために作られたビスポークモデルともいえるだろう。

メガヨットからインスピレーションを得て作られた内外装のスペシャルなディテール

手がけたのは、これまでのビスポークモデルと同様に、ベントレーが誇るコーチビルディング部門の「Mulliner(ミュリナー)」だ。

透明な水が持つ虹色の輝きをイメージしたエクステリアは、ボディカラーに「グレイシャーホワイト」を採用し、下部には「シークインブルー」のアクセントライン。通常の『コンチネンタルGTコンバーチブル』ではグロスブラックに塗られているフロントグリルも明るいクリームに変更された。フードはダークブルーで、足元にはプロペラデザインの21インチホイールを装着する。

ホワイトと、いわゆるTaup(トープ)を基調としたキャビン内は、シート、ドアの内張り、ステアリングホイールなどに、リネン、ポートランド、ブリュネルといったカラーを組み合わせたレザーを採用。シートのスティッチやセンターコンソールのトリム等はキャメルと青みがかったグレーでまとめられた。

さらに、ヨットの雰囲気を演出するため、ウォールナット素材を敷き詰めてデッキ風にしたパーツがトランクルームなどに配されているのも『ガレーヌ エディション』の特徴だろう。助手席のダッシュボードには、スペイン人イラストレーターのJaume Vilardell氏による直筆のイラストを飾ることもできる。

ちなみに、エンジンは通常モデルの6.0L W型12気筒エンジンではなく、アウディ製の4.0L V8ツインターボが搭載される。

当然のことながら「ガレーヌ エディション」の価格は公表されていないが、すでに全台が予約済みと思われる。そして、そのオーナーは、おそらくメガヨットを所有する別世界の住人たち…。なんともため息が出るような一台である。

Text by Kenzo Maya

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第16回 | ベントレーの最新車デザイン・性能情報をお届け

ウルス超えの最速SUV──Bentleyベンテイガ スピード

ベントレーの創業者であるウォルター・オーウェン・ベントレーは、1888年生まれだ。「ベントレー・モーターズ」を設立したのは31歳のとき。1919年のことである。今年は、それから100周年のメモリアルイヤー。その記念すべき年に、世界最速、最強の一台が発売される。『ベンテイガ スピード』。「スピード」は、ベントレーのなかでも高性能モデルが冠する名称で、『ベンテイガ スピード』はその名の通り、SUVである『ベンテイガ』の高性能モデルだ。ベントレーいわく「世界最速のSUV」である。

最高速度306km/h。ランボルギーニ『ウルス』を上回る世界屈指のパフォーマンス

燃費や利便性が話題になりがちな、昨今の新車発表。しかし、カーガイにとっての興味は、そこだけに留まらない。世界最速をうたう雲上の一台は、手に入らずとも憧れの的だ。そういった意味で、ベントレーが「ラグジュアリーを極めた世界最速SUV」と自称する『ベンテイガ スピード』は非常に気になるクルマだろう。

『ベンテイガ』は、“超”高級SUVという新しいセグメントを切り拓いた一台。ラグジュアリー性だけでなく、スピードやパワーにも究極的にこだわった。すでに頂きにあるモデルのさらなる高性能モデルとは、どういったポテンシャルを秘めているのか。

その実力を客観的に示すために、パワートレインの数字を述べよう。定評ある6.0L W12ターボエンジンのハイパワーバージョンを搭載し、最高出力635ps、最大トルク900Nm、最高速度306km/h、0–100 km/h加速3.9秒。これらは、標準の『ベンテイガ』よりも最高出力で27ps、最高速度で5km/hのパワーアップ、0-100kmの加速で0.2秒短縮している。いわずもがな、SUVとしては世界屈指のパフォーマンスだ。最高速度にいたっては、世界最速のSUVである、あのランボルギーニ『ウルス』を上回っている。

世界最高速のスピードで走る約2.4トンの車体。そのエネルギーを受け止めるのが、ベントレーのなかで最大・最強、6000 Nmの制動力を発揮するカーボン・セラミック・ブレーキだ。足回りに関しては、『ベンテイガ』と同じく全輪駆動で、エレクトロニック・デファレンシャルロック(左右のタイヤの回転差を固定する機構)を採用している。

オンロードとオフロードを合わせて計8種類のドライブモードを搭載する充実ぶり

走りの性能については、状況に応じて4種類から選択できるオンロード用走行モードも重要な役割をはたす。乗り心地を最優先させた「コンフォート」、走りを重視した「ベントレー」と「スポーツ」、そしてドライバーが好みに応じて設定できる「カスタム」だ。

特に「スポーツ」モードは専用にチューニングされており、W12エンジンと8速ATのレスポンスに加え、サスペンションと電動アクティブスタビライザー「ベントレーダイナミックライド」の応答性も向上。これまで以上にダイナミックで一体感のある走りを実現した。コーナリング時のロールを即座に抑え込み、タイヤの接地性を最大限に高め、クラストップのキャビン安定性と快適な乗り心地、優れた操縦性を実感することができるだろう。

SUVであるだけに、オフロード用の走行モードも準備されており、その場合は「雪道・草道」「土道・砂砂利」「泥道・小道」「砂道」の4種類が選択可能。合わせて計8種類の走行モードは『ベンテイガ』と同じで、ほかのラグジュアリーSUVを圧倒する充実ぶりだ。

専用スティッチングや「Speed」があしらわれたスポーティでラグジュアリーな室内

エクステリアは『ベンテイガ』を踏襲しつつ、専用装備が与えられた。フロントマスクでは、深い色調のダークティントヘッドライトが質の高さを物語る。また、サイドスカートや前後バンパーのスプリッター、テールゲートスポイラーなどをボディと同色でまとめることで統一感を演出。また、新設計の22インチ10本スポークホイール、ダークティントで統一されたラジエターグリルとバンパーグリル、3種類の仕上げに対応する22インチ専用ホイール、ボディにあしらわれた専用バッジもスポーティなデザインを引き立ててくれる。

キャビンは職人の技が光るハンドクラフト。英国モダンデザインが濃縮された空間に仕上がっている。注目のひとつが、『ベンテイガ』シリーズ初となるアルカンターラの採用だ。後席が2人乗りの4シートモデルでは、クッションボルスターやバックレスト上部、ドアパッド、バックボードのダイヤモンドキルトにもコントラストステッチを施すことができる。

専用の意匠では、「Speed」のロゴをブラインド/コントラストステッチのいずれかで入れることが可能だ。コクピットには、イルミネーション付き「Speed」トレッドプレートが、助手席側フェイシアにはメタル製「Speed」バッジが輝きを添える。

発売は2019年後半。価格や日本導入時期は発表されていない。ちなみに、『ミュルザンヌ スピード』は、『ミュルザンヌ』と比較すると約10%高い。『ベンテイガ』は2786万円なので、3000万円程度になるのだろうか。世界最強のSUVにふさわしい価値である。

Text by Tsukasa Sasabayashi
Photo by (C) Bentley Motors
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
Bentley Bentayga Speed オフィシャル動画
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