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第90回 | 大人のための最新自動車事情

通は“型式の数字”を選ぶ──ナンバープレートの薀蓄

どんな超高級車でも、どんな格安の中古車でも、そこに格差のない平等なクルマの部位。それが「ナンバープレート」だ。これがなければ、クルマは公道を走行することができない。しかし、クルマに欠かせないものなのに、普段からナンバープレートについて気にかけている人は意外と少ないようだ。なぜナンバープレートには「お」「し」「へ」「ん」の4文字が使われないのか? 欧州車のオーナーに人気の希望ナンバーは? 渋滞時に会話のネタになり、助手席に座る女性に「へえ」と言われるようなナンバープレートの薀蓄を厳選して紹介しよう。

御料車に付けられる「円形」「銀色地」「“皇”の字」があしらわれたナンバープレート

ナンバープレートとは、少しむずかしく言えば「国土交通省が交付する個別の自動車を識別するために取り付けられた標識板」のこと。

このナンバープレートには、じつはいくつか種類があり、よく見れば、色も白のほかに、緑、黄、黒などがある。大きくは、「自動車登録番号標」「車両番号標」「原動機付き自転車番号標」の3種類に分けられるのだ。

「自動車登録番号標」は、普通自動車や小型自動車などに付けられるもの。白プレートは自家用で、緑プレートは事業用の車となる。「車両番号標」は軽自動車や二輪小型自動車につけられるナンバーの正式名称。黄色プレートが自家用で、黒プレートが事業用の車となる。そして最後が、原付バイクに付けられる「原動機付き自転車番号標」だ。

ほかにも、台数は多くないが、外務省が交付する大使館関係の車に付けるナンバープレートや在日米軍関係者の使用車両である「Y」を記したナンバープレート、また、自衛隊車両が付けるナンバープレートなども存在する。レア度でいうと、天皇陛下や皇族が乗車する御料車のナンバープレートだろう。円形で、銀色地に金文字で「皇」の字があしらわれている。

ナンバープレートの“ひらがな”にはなぜ「お」「し」「へ」「ん」が使われないのか?

ナンバープレートは、「地名」「分類番号」「ひらがな等」「一連指定番号」の4つの項目から成立している。まず地名は、その車の使用本拠地を管轄する運輸支局、または自動車検査登録事務所の名称や所在地だ。これに加えて、29のナンバー名からなる「ご当地ナンバー」も存在する。「富士山」は、特に有名なご当地ナンバーだろう。

地名の横にある3桁の数字はクルマの分類番号だ。「全長4.7m、全幅1.7m以下、全高2.0m、ガソリン車の場合は総排気量が2000cc」の基準を下回るクルマは小型乗用車となり、いわゆる5ナンバー。これを上回れば300番台、3ナンバーとなり、普通乗用車に分類される。

ひらがなは用途の区別で、自家用や事業用などによって異なる。自家用には「さすせそたちつてとなにぬねのはひふほまみむめもやゆらりるろ」、事業用には「あいうえかきくけこを」が割り当てられている。ちなみに、よく知られているように「わ」はレンタカー用だが、観光でのレンタカー需要が多い沖縄などでは「わ」が足りなくなり、「れ」も増えてきている。

さて、ここでトリビアをひとつ。ナンバープレートの文字には「お」「し」「へ」「ん」の4文字が使われていない。その理由は、「し」は「死」、「へ」は「屁」を連想させ、「お」は「あ」と似ているためだという。また、「ん」は発音しづらいことからナンバーに採用されていないといわれている。

ひらがなの右側にあり、ナンバープレートで最も大きく表記されている4桁の数字は一連指定番号だ。この部分に関しては、自分の希望する番号を申請することができる。これが、いわゆる「希望ナンバー制度」である。

3ナンバー車に人気のナンバーは「1」「3」「8」、欧州車は車名に入る数字を付ける

希望ナンバー制度とは、その名の通り、自分が希望するナンバーを申請できる制度。ただし、当然ながら、人気の番号は抽選となる。全国一律で抽選となる番号は、「・・・1」「・・・7」「・・・8」「・・88」「・・33」「・555」「・777」「・888」「1111」「2020」「3333」「5555」「7777」「8888」の14通り。

これ以外に、地域によって追加される番号もある。たとえば、「2525(ニコニコ)」は大宮や品川、横浜、神戸などで抽選となっている。

では、3ナンバー車で人気があるのは、どんな番号なのか。全国自動車標板協議会が発表した資料によると、3ナンバー車の一番人気は、ほとんどの地域で「1」。それ以外では「3」と「8」が目立つ。そんななか、「富士山」ナンバーで人気だった数字は、標高と同じ「3776」だった。

車名に数字が入ることが多い欧州車では、その数字を希望ナンバーにすることが多い。もっとも分かりやすい例は、ポルシェ911の「911」だろう。個人的には、996型や997型など、ポルシェ911の形式から取り、「996」「997」といった数字をナンバーにしている人を見ると、より通のカーガイと感じてしまう。

黄色ナンバーの軽自動車に普通車のような白色ナンバーを付けることのできる“裏ワザ”

最後に、軽自動車の黄色ナンバーについての話題を紹介しよう。

インターネット上では「黄色ナンバーはカッコ悪い」などという声も散見されるが、じつは現在、軽自動車も期間限定で白色のナンバーを取得することができる。それが、「2017年4月3日から販売が始まったラグビーワールドカップ特別仕様ナンバープレート」だ。この特別仕様のナンバープレートは、下地が白色なので、軽自動車でも白色のナンバーを付けることができるのだ。

特別ナンバープレートの交付にかかる費用は、地域によって異なるが、東京地区なら7000円。また、大会開催を支援する寄付を1000円以上すれば「図柄入り」、寄付しない場合は「ロゴ入り」の特別仕様ナンバープレートを装着することができる。上の写真は国土交通省が発表した見本で、右の中段が「寄付金付き」、下段が「寄付金なし」のナンバー。

ちなみに、軽自動車に現在乗っている人も同じ番号のままで交換可能。取り付けた特別ナンバープレートは、ラグビーワールドカップが終了しても、廃車まで使用可能だ。

普段は、運転中もあまり気にすることがないナンバープレート。女性とのドライブデートで会話のネタに困ったら、こうした薀蓄を披露してみるといいかもしれない。

Text by Tsukasa Sasabayashi

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第130回 | 大人のための最新自動車事情

エモーションEV──バタフライドアの電動スポーツカー

ポルシェ初の量産EVスポーツカーとして話題の『タイカン』は今年生産を開始し、驚異的なスペックを誇るテスラのスーパースポーツカー『ロードスター』も2020年の発売を予定している。EVスポーツカーは、いま旬を迎えつつあるカテゴリだ。そうしたなか、アメリカのフィスカーがCES 2019で初公開した『エモーションEV』が予約受付を開始した。バタフライ4ドアが特徴の高級フルEVスポーツは、いったいどんなクルマなのか。

BMW『Z8』やアストンマーチン『DB9』のデザイナーが手がけた高級スポーツEV

フィスカー『エモーションEV』は、ヘンリック・フィスカー氏の手によるエレガントなデザインの高級EVスポーツカーだ。フィスカー氏はデンマーク出身の著名なカーデザイナー。BMWに在籍していた当時に『Z8』、EVコンセプトモデルの『E1』などを手がけ、アストンマーチンでは『DB9』『DBS』『ヴァンテージ』のデザインを担当した。

その後、独立してメルセデス・ベンツやBMWをベースにしたコンプリートカーやハイブリッドエンジン搭載のオリジナルモデルを製作するが、じつは、テスラで『ロードスター』『モデルS』の2モデルの開発に参加したこともあるようだ。そのせいというわけではないだろうが、『エモーションEV』のデザインはどこかテスラに似た雰囲気もある。

ともあれ、スタイリングは「美しい」のひと言に尽きる。とりわけ特徴的なのは、開くとドア側面が蝶の羽のような形に見える「バタフライ4ドア」だ。同じ上部に向かって開くドアでも、縦方向に開くシザースドアと違い、バタフライドアは外側が斜め前方に、内側が下向きに開く。駐車スペースに苦労する日本ではなかなかお目にかかれないドアだ。

バッテリーはリチウムイオンではなく炭素素材コンデンサ。多くの先端技術を搭載

面白いのは、バッテリーに多くのEVに採用されるリチウムイオンではなく、炭素素材コンデンサのグラフェンスーパーキャパシタを採用したことだ(全個体充電池搭載モデルもラインナップ)。1回の充電あたりの最大走行距離は約640km。急速充電の「UltraCharger」に対応しており、9分間の充電で約205km分の容量までチャージ可能という。

EVパワートレインは最高出力700psを発生し、最高速度は260km/h。このスペックを見ると、テスラ『ロードスター』のようなEVスーパースポーツではなく、あくまでスポーティカーという位置づけなのだろう。全長5085×全幅2015×全高1465mmのボディは軽量のカーボンファイバーとアルミニウムで構成され、駆動方式は四輪駆動だ。

このほか、ADAS(先進運転支援システム)としてクアナジー製LIDARセンサーを5個搭載し、コネクテッドなどのEVスポーツカーらしいさまざまな先端技術を装備する。

『エモーションEV』の価格は1440万円。予約も開始され今年中にデリバリー予定

前述の通り、『エモーションEV』はグラフェンスーパーキャパシタ搭載モデルと全個体充電池搭載モデルの2モデルを設定。価格はグラフェンスーパーキャパシタ搭載モデルが1440万円(税別)、全個体充電池搭載モデルの価格は未定だ。すでに日本でもデロリアン・モーター・カンパニーを正規代理店に予約受付を開始しており、グラフェンスーパーキャパシタは今年中の納車を予定している。ただし、予約金として約24万円が必要だ。

最近では東京都心部などでテスラをよく見かけるようになり、もはやEVは現実的な乗り物になりつつある。たしかに価格は1000万円オーバーと高価。しかし、この美しいルックスなら、他人と違うクルマに乗りたいという欲求を満たすことができるのではないか。

Text by Kenzo Maya
Photo by (C) Fisker, Inc.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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