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第9回 | マクラーレンの最新車デザイン・性能情報をお届け

開放感という悦楽──マクラーレン570Sスパイダー

F1グランプリで培ったテクノロジーを活かしたハイパフォーマンスモデルを製造する自動車ブランド、マクラーレン・オートモーティブ。ラインナップは、最上位のスーパースポーツ「アルティメットシリーズ」、主力スーパーカー「スーパーシリーズ」、そして、エントリーモデルの「スポーツシリーズ」で構成される。『570シリーズ』は、エントリーモデルの「スポーツシリーズ」に位置する。現在は、ベースモデルである『570Sクーペ』、快適性と実用性を重視した『570GT』が存在。そして今回、待望のオープンモデル「スパイダー」が追加された。

マクラーレン『570Sシリーズ』に追加された大人の男を惹きつける高級オープンカー

オープンカーは意外に女子受けが悪い。室内は狭いし、収納も少ない。屋根を開ければ夏は暑く、冬は寒い。車内に入り込む風は、せっかくセットした髪をくしゃくしゃにして、入り込む日差しはじりじりと肌を焼く。

こう書くと、なんともデメリットが多い。しかし、オープンカーには大人のカーガイを惹きつけてやまない魅力があるのも、間違いない事実である。実際、彼らをターゲットとした高級スポーツカーには、ほぼ必ずといって良いほどオープンモデルが存在する。そういった意味では、マクラーレン『570S スパイダー』も、車好きにとっては興味が尽きない一台だろう。

車名が示す通り、『570S スパイダー』は『570S クーペ』のオープンモデルだ。一般的に、オープンモデルはルーフの開閉機構を加えたり、ルーフがない分の剛性を向上させるパーツを搭載したりするために、ベースであるクーペよりも車重が重くなり、動力性能が劣ることが多い。『570S スパイダー』も、構造全体の強度を保つために『570S クーペ』よりも46kg重くなっている。

しかし、これはたったの46kgの増加に抑えたというべきだろう。その秘密は、『570S スパイダー』が採用したカーボンファイバー製の「モノセルIIシャシー」にある。軽くて強いこの素材は、コンバーチブルでも強度が損なわれない。そのため、構造補強を施す必要がなく、車重の増加を抑えられたのだ。

結果として、『570S クーペ』と同等の動力性能を実現。最高出力570ps/7500 rpm、最大トルク600Nm/5000-6500rpmを発揮する3.8L V8ツインターボエンジンの動力性能は、0-100km/h加速3.2秒、最高速度328km/hを叩き出す。

クーペと同等の加速と操作性を実現した『570Sスパイダー』のデザインとハンドリング

オープンでありながらクーペと同等の加速性能を実現した理由は、デザインにもある。じつは、『570S スパイダー』はリアのスポイラーが『570S クーペ』よりも12mm高いのだ。これにより、ダウンフォースが増加し、空気力学面での全体的なバランスは、クーペに匹敵するようなレベルに保たれている。

これだけの動力性能を思いのままに操るため、足回りやハンドリングにも『570S クーペ』の技術を引き継いだ。

フロントとリアには、可変ダンパーとデュアルウィッシュボーンを採用。ハンドリングは、3つのモードから設定が可能で、シーンに合わせて、洗練されつつも操作性の高い走りの「ノーマル」、サーキット向けのドライビング・エクスペリエンスを堪能できる「スポーツ」「トラック」の3つモードから選ぶことができる。また、電動油圧式パワー・ステアリング、カーボンセラミックのブレーキなどが標準装備されている。

ボタンを押せば15秒で開閉する『570Sスパイダー』のルーフ、普段使いにも不便なし

オープンカーの醍醐味は、なんといってもルーフを開けたときの開放感だ。 『570S スパイダー』のルーフは、上位車種である『650Sスパイダー』『675LTスパイダー』に装備されたリトラクタブル・ハード・トップを採用している。開閉はボタンひとつ。15秒で動作を完了し、時速40kmまでなら走行中も使用可能だ。開けて走ると、マクラーレン独自のエキゾーストノートを満喫することができる。閉めたときには、ソフトトップよりも室内は静か。助手席に大事な人を乗せているときには会話も音楽もクリアに楽しめて、1人でドライブプレジャーを満喫したいときには、運転に集中できそうだ。

オープンカーは、ルーフを収納する形状上、ラゲージスペースに制限ができる。『570S スパイダー』も、セダンなどに比べるとけっして広くはないが、それでもオープン状態で 52Lものラゲッジスペースをリアに確保している。さらに、ミッドシップレイアウトを活かし、普通はエンジンルームになっているフロントにも150Lのスペースを確保。ちょっとした旅行など、日常使いには不便がない仕様となっている。

すでに全世界でオーダー受け付けを開始し、英国ウォーキングのマクラーレン・プロダクション・センターにおいて手作業で組み立てが始まっている『570S スパイダー』。デリバリーの予定は2017年秋頃からで、最初の400台はローンチエディションモデルとして限定生産されるという。車両本体価格は2898万8000円(税込み)。まさに、世界最高峰のオープンカーである。

Text by Tsukasa Sasabayashi

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第17回 | マクラーレンの最新車デザイン・性能情報をお届け

極上のオープンが上陸──マクラーレン720Sスパイダー

マクラーレン・オートモーティブは昨年7月に開催されたグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードにおいて、2025年までのビジネスプラン「Track25」を発表した。12億ポンド(約17600億円)の巨費を投じ、2025年までに18車種のニューモデルを導入する野心的な計画だ。昨年10月に発表されたマクラーレン初のハイパーGT『スピードテイル』はその第一弾で、サーキット走行をメインとするアルティメットシリーズの最新モデルとなる。これに続く第二弾が、今年2月に東京で披露された『720Sスパイダー』だ。スーパーシリーズの新たなフラッグシップとして登場した極上のオープンモデルである。

乾燥重量はたったの1332kg。クーペの『720S』からわずか49kg増の超軽量ボディ

『720Sスパイダー』の最大の特徴は、なんといってもドライウェイト1332kgという驚くべき軽さにある。一般的に、オープンモデルはボディの補強やルーフの開閉機構の搭載などが必要となるため、クーペよりも大幅に車両重量が増してしまうものだ。しかし、『720Sスパイダー』はベースであるクーペの『720S』からわずか49kg増の軽量ボディを実現。1332kgの乾燥重量は同カテゴリのライバル車より88kg軽く、クラス最軽量となる。

その秘密は、新たに採用されたカーボンファイバー製モノコック「モノケージⅡ-S」だ。クーペに採用された「モノケージⅡ」は、スーパーカーの理想である軽量の基本構造、優れた強度、高い剛性を併せもつが、「モノケージⅡ-S」はこのメリットをすべて継承しつつ、さらに改良が重ねられた。当然、ボディの強度も高められており、そのためリトラクタブルハードトップ(RHT)を搭載する際に大幅な変更を追加する必要がなかったという。

つまり、強度を補強するといった重量が大幅に増加するような変更が不要だったのだ。それは、クーペの『720S』と同様のスリムなAピラーが採用された点にも見てとれる。

わずか11秒で開閉するリトラクタブルハードトップ。最高速度は驚異の341Km/h

49kgの重量増は、おもにリトラクタブルハードトップの搭載によるものだ。といっても軽量のカーボンファイバー製で、開閉機構は油圧式ではなく電動式を採用。それによりルーフの開閉時間はスーパーカークラスでは最速となる11秒を実現した。また、走行中の開閉は、『650Sスパイダー』では30km/h以下だったが、50km/h以下で可能となった。

キャビン上部のルーフはガラス製を採用。オプションでエレクトロクロマティック機能を選択すると、ボタンを押すだけで透明度を高めたり着色したりすることができる。ルーフを閉じた状態でも光が差し込み、ちょっとしたオープンエア気分が味わえる仕掛けだ。

軽量化は、当然ながら動力性能の向上にも寄与する。パワーユニットはクーペと同じ排気量4.0LのV8ツインターボエンジンで、最高出力720ps、最大トルク770Nmを発生し、組み合わせるのは7速度SSG(シームレス・シフト・ギアボックス)。これをミッドにマウントすることで驚異的な加速力と旋回性能を実現した。とりわけ凄まじいのは加速力だ。0-100km/h加速はクーペと同じ2.9秒、0-200km/h加速はクーペからプラス0.1秒の7.9秒を誇る。最高速度もクーペと同等の341Km/hだ。さすがにルーフを開けた状態の最高速度は325km/hとなるが、それでも驚異的なスピードであることに変わりはない。

足回りもクーペを踏襲した。サスペンション、電動油圧式パワー・ステアリングが一体となって機能する新世代の「プロアクティブ・シャシー・コントロールⅡ」を採用。また、「コンフォート」「スポーツ」「トラック」の3種類から走行モードを選ぶことができる。

『720Sスパイダー』の価格は約3788万円から。3月から日本国内での納車も開始

エクステリアに大きな変更はない。ほかのどのスーパーカーとも違う唯一無二のスタイリングをまとう。むろんドアは「ディヘドラル・ドア」。いわゆるガルウイングだ。インテリアも、ドライバーインターフェースに折りたたみ式のディスプレーを採用するなどクーペを引き継いだが、オープンモデルは室内が露出するためより上質感が高められている。

価格は3788万8000円から。すでに3月から納車が開始されている。おいそれと手が出せるクルマではないが、値段に見合う価値をもっているのは間違いない。事実、日本におけるマクラーレンの販売台数は昨年ついに200台の大台を超え、今年前半には累計販売台数が1000台を突破する見通しだ。街なかで目にする機会も増えるのではないか。

Text by Kenzo Maya
Photo by (C) McLaren Automotive
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
McLaren 720s Spider オフィシャル動画
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