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第28回 | ポルシェの最新車デザイン・性能情報をお届け

100万台目のポルシェ911──初代に捧げる記念モデル

ポルシェ『911』シリーズ。言わずと知れたポルシェを代表するモデルであり、公道を走るすべてのスポーツカーのアイコンというべき名車である。初代モデルが発売されたのは1963年。それから半世紀以上の時が過ぎた2017年5月11日、ついに100万台目の911が、ドイツ南西部シュトゥットガルト、ツッフェンハウゼンのポルシェ本社工場にてラインオフした。記念すべき100万台目の911は、初代911と同じ「アイリッシュグリーン」のスペシャルカラーを纏い、歴史へのオマージュが込められた特別な一台となっている。

レースで培った技術による品質でスポーツカーの頂点に立ち続けるポルシェ『911』

911は1963年に初代モデルが発売されて以来、RR(リアエンジン・リアドライブ)のレイアウトを変えることなく、高級スポーツカーの頂点に君臨してきた。初代911の登場から半世紀以上が経っても、その人気はまったく衰えず、2016年だけでも全世界で過去最高の3万2365台が売れたという。

人気の理由のひとつは、ポルシェが培ってきた技術と経験が惜しみなく注ぎ込まれた911の高い品質にある。ポルシェによれば、これまで製造されてきた911の全車両が現在も走行可能だという。アメリカのマーティング調査機関、J.D.パワー社の「初期品質調査」(IQS)による品質ランキングでも、911は常にトップに選ばれているほどである。

そのクオリティの裏付けとなっているのがモータースポーツだ。もともと、911は一般道だけではなく、サーキットを走ることを前提に設計されたスポーツカー。これまでポルシェがレース活動で成し遂げたおよそ3万回の優勝のうち、その半数以上を911で達成している。レースを通じてテクノロジーに磨きをかけ、完成度を高めてきたのが911というスポーツカーなのだ。

今回ラインオフした記念すべき100万台目の911は、この輝かしい伝統と歴史へのオマージュを込めてツッフェンハウゼンのエキスパートたちが作り上げた、まさに特別かつオンリーワンの911だ。

スペシャルカラーの「アイリッシュグリーン」を纏った100万台目のポルシェ『911』

100万台目の911は、MTの『カレラS』をベースに、初代モデルの特徴を受け継ぐいくつかのアイディアが散りばめられている。

まず目を引くのは、クラシカルな「アイリッシュグリーン」のボディカラーだろう。これは初代モデルに採用され、通称「ナロー」と呼ばれる初期の911にもよく見られたスペシャルカラー。リヤフードを飾るゴールドの「PORSCHE 911」のエンブレムも、ポルシェの名を初めて冠したスポーツカー『356』に用いられていた同社の伝統的手法である。ホイールは『718』シリーズに設定されているオプションの20インチ・カレラ・スポーツホイールだ。

インテリアも、クローム仕上げのメーターリング、シートの座面と背面に格子柄のテキスタイルを採用するなど、“レトロモダン”というべき雰囲気を漂わせる。古くからのポルシェファンならば、過去のモデルで見たことがある内装かもしれない。こうしたディテールにもヘリテージへの敬意を感じさせる。

この911は、スペック的には単なる『カレラS』にすぎないが、ポルシェにとってはなにものにも代えがたい特別な意味を持つ。それだけに、ポルシェの上顧客やコレクターがいくらお金を積んでも、このクルマを手にすることはできない。100万台目の911はポルシェ自身が保有し、ポルシェミュージアムのコレクションに加えるまで、スコットランド高地、ニュルブルクリンク周辺、そしてアメリカ、中国など、多くの国を巡るという。もしかすると、日本のポルシェファンが100万台目の911を目にする機会も設けられるかもしれない。

Text by Kenzo Maya

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第51回 | ポルシェの最新車デザイン・性能情報をお届け

甦る伝説のイエローバード──ルーフCTRアニバーサリー

1990年からシリーズ全体で20年以上にわたり連載されてきた楠みちはるの『湾岸ミッドナイト』。大人のカーガイなら、主人公が駆る「悪魔のZ」の永遠のライバルとして登場する漆黒の930型ポルシェ『911ターボ』、通称「ブラックバード」を覚えていることだろう。じつは、この最高出力700psのモンスターマシンと似たスペックをもつカスタムモデルが実在する。ルーフ・オートモビルによる930型ポルシェ『911』をベースにしたコンプリートカー、「イエローバード」こと初代『CTR』だ。3月のジュネーブモーターショーでは、初代の誕生30周年を記念したアニバーサリーモデルが発表された。

ポルシェのようでポルシェではない。340km/hを記録した伝説の「イエローバード」

ポルシェのようだが、じつはポルシェではない。ポルシェのボディシェルを使いつつも、まったくのオリジナルのハイパフォーマンスカーを製造する世界的な自動車ブランド。それがドイツ南部のプファッフェンホーフェンに本拠を置くRUF Automobile(ルーフ・オートモビル)だ。もともとポルシェ車のチューナーだったが、1980年代から独自のコンプリートカーを生産・販売し、ドイツの自動車工業会にも属している。小規模ではあるが、卓越した技術力によってユーザーの信頼を集めるれっきとした自動車メーカーなのだ。

ルーフの名は、1987年に発表された初代『CTR“イエローバード”』によって世界中のスポーツカーファンに認知された。930型『911カレラ』をベースに、排気量を3.4Lへと拡大。チューンナップされたインタークーラー付きのツインターボエンジンは最高出力469ps、最大トルク553Nmのパワーを発生する。アメリカの老舗自動車雑誌『ロード&トラック』がフォルクスワーゲンのテストコースにスーパーカーを集めて行った走行テストでは、ランボルギーニやフェラーリを抑えて当時の市販車最速となる約340km/hを記録した。これにより、ルーフと『CTR』の名を世界に知らしめたのである。ちなみに、「イエローバード」の異名は『ロード&トラック』が誌面で使ったキャッチに由来する。

販売台数はわずか30台。バブル景気だった日本には10台近くが、あるいはそれ以上の台数が上陸したといわれる。この「イエローバード」をルーフの技術力によって現代に甦らせたモデルが、ジュネーブで発表された『CTR Anniversary(アニバーサリー)』だ。

『CTRアニバーサリー』は最高出力710ps、最高速度360km/hのモンスターマシン

『CTRアニバーサリー』は、2017年のジュネーブモーターショーで発表されたプロトタイプ、『CTR 2017』の市販バージョンとなる。前述のとおり、初代『CTR』は930型『911』をベースとしたが、『CTRアニバーサリー』はポルシェのボディシェルを使用していない。モノコックシャシーやボディはルーフが独自に開発したもの。つまり、一見すると古いポルシェのようだが、このクルマはベースが存在しないまったくのオリジナルなのだ。

モノコックとボディにはカーボンファイバーを採用し、それによって総重量1200kgという軽さを実現。ルックスは初代『CTR』のイメージをそのまま踏襲しているが、『CTRアニバーサリー』専用のエクステリアとして、リアに大型のウィングを装着する。

思わず唸らされたのがエンジンルームだ。『911』といえば、古いポルシェファンなら空冷エンジンの印象が強いと思うが、『CTRアニバーサリー』は往時の空冷エンジンを彷彿とさせるクラシカルなデザインをあえて採用した。しかし、そこに搭載されるのは、ツインターボを装着した排気量3.6Lの水平対向6気筒エンジン。最高出力710ps、最大トルク880Nmのパワーを発揮し、最高速度は360km/hに達するモンスターぶりである。

甦った「イエローバード」は全台ソールドアウト。NAエンジンの現行型は販売継続

残念ながら、『CTRアニバーサリー』はすでに生産予定の30台が全台売約済み。プロトタイプの『CTR 2017』が発表された時点でソールドアウトしたとの一部報道もある。

ただし、ルーフには今回の『CTRアニバーサリー』とカーボンシャシーやボディを含めた多くの仕様が共通する『CTR SCR』という現行モデルがある。搭載するのは710psのツインターボではなく自然吸気エンジンだが、現在も販売を継続中だ。ポルシェのようでポルシェではないコンプリートカーをお望みなら、こちらを選択する方法もあるだろう。

Text by Kenzo Maya
Photo by (C) RUF Automobile GmbH
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
メイキング・オブ RUF CTR 2017
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