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第8回 | ベントレーの最新車デザイン・性能情報をお届け

鷹狩りを嗜む王族へ──ベンテイガ ファルコンリー

ロールスロイスやベントレーなどの超高級車ブランドは、上顧客のなかの、さらに限られたオーナーの贅沢な需要に応えるために、特殊な装備を施した特別なモデルを仕立てることがある。たとえば、ベントレーがラグジュアリーSUV『ベンテイガ』をベースに製作した「Bentayga Fly Fishing by Mulliner(ベンテイガ フライフィッシング バイ ミュリナー)」は、釣り愛好家のためのアクセサリーを装備した特別仕様車だ。そして、2017年5月、再びベントレーは超富裕層の上顧客に向けた特別仕様車を発表。それが鷹狩り用のアクセサリーを備えた『ベンテイガ』、「Bentayga Falconry by Mulliner(ベンテイガ ファルコンリー バイ ミュリナー)」である。

アラブの王族に向けて、鷹狩りを愉しむための装備一式を備えた特別な『ベンテイガ』

「ベンテイガ ファルコンリー バイ ミュリナー」のファルコンリーとは、「鷹狩り」を意味し、ミュリナーはベントレーのオーダーメイド部門のことを指す。このネーミングが示すとおり、これは鷹狩りを愉しむための装備一式を超高級SUVの『ベンテイガ』のラゲッジルームに据え付けた特別仕立ての一台だ。

現代の日本ではあまり目にする機会はないが、ベントレーの生まれ故郷である英国では、古くから鷹狩りが貴族の娯楽やスポーツとして親しまれてきた。なかでも、アラブ諸国の人々にとって鷹は特別な存在で、鷹を持つことが一種のステータスとなっている。高価な鷹になれば、一羽数百万円から1000万円以上で売買されることもめずらしくないという。UAE(アラブ首長国連邦)では、国旗に鷹の絵柄が描かれ、国鳥に指定されているほどだ。

つまり、「ベンテイガ ファルコンリー バイ ミュリナー」は、ベントレーの上顧客である中東の超富裕層、アラブの王族に向けて作られた特別仕様車なのである。ベントレー・ミュリナー部門のディレクターも次のようにコメントしている。

「鷹狩りは、中東では王族のスポーツとして位置付けられているため、中東の大切なお客様、そして世界中のお客様にもご満足いただけるよう、実用性と耐久性だけでなく、豪華さも演出できるキットを目指しました」

ダッシュボードには430ピースの木片を組み合わせたセーカーハヤブサの美しい木象嵌

鷹狩りのための装備は、ラゲッジルームに据え付けられた「マスター・フライト・ステーション」と「リフレッシュメント・ケース」のふたつのチェストで構成。いずれも『ベンテイガ』のハッチに合わせて特別に製作された天然コルク生地で表面が覆われている。

「マスター・フライト・ステーション」にはピアノブラックの特別なウッドパネルを用いた引き出しがあり、鷹狩りに必要な用具がすべて収納可能。引き出しの下には、猛禽類用のGPS追跡ユニット、双眼鏡、鷹狩り用のセーカーハヤブサに被せる職人が手作業で作った革製頭巾、鷹匠が使う革手袋といった別売りのオプションアイテムを収納できるように仕切りが設けてある

「リフレッシュメント・ケース」には、金属製の水筒3つと頑丈そうなカップが3つ、さらにブランケット、フェイスタオルなどが用意されている。中東の王族が使用することを想定しているだけに、実用性、耐久性、豪華さなど、それぞれが際立った特別なアクセサリーだ。

キャビンにはホットスパーのレザーを採用。センターアームレストには取り外しのできる止まり木用のコルクと係留用具が備えられ、運転席と助手席の間にセーカーハヤブサが止まれるようになっている。ダッシュボードで目を引くのは、広大な砂漠を背景に天高く舞い上がるセーカーハヤブサを描いた美しい木象嵌。これは、クリ材をはじめ、ユーカリプタス・ポムレ、ヒイラギ、レースウッド、メープル、オリーブ・アッシュ、リップル・シカモアなど、世界各地から採取した木材を430ピースも使い、9日以上を費やして手作業で仕上げられたものだという。

当然ながら、ベントレーは「ベンテイガ ファルコンリー バイ ミュリナー」の価格を公表していない。ベントレーの上顧客、ましてや鷹狩りを嗜むような超富裕層にとって、価格は大した問題ではないからである。ちなみに、ベーシックモデルの『ベンテイガ』の車両本体価格は2739万円、乗り出し価格は4000万円以上となることもめずらしくない。

Text by Kenzo Maya

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第16回 | ベントレーの最新車デザイン・性能情報をお届け

ウルス超えの最速SUV──Bentleyベンテイガ スピード

ベントレーの創業者であるウォルター・オーウェン・ベントレーは、1888年生まれだ。「ベントレー・モーターズ」を設立したのは31歳のとき。1919年のことである。今年は、それから100周年のメモリアルイヤー。その記念すべき年に、世界最速、最強の一台が発売される。『ベンテイガ スピード』。「スピード」は、ベントレーのなかでも高性能モデルが冠する名称で、『ベンテイガ スピード』はその名の通り、SUVである『ベンテイガ』の高性能モデルだ。ベントレーいわく「世界最速のSUV」である。

最高速度306km/h。ランボルギーニ『ウルス』を上回る世界屈指のパフォーマンス

燃費や利便性が話題になりがちな、昨今の新車発表。しかし、カーガイにとっての興味は、そこだけに留まらない。世界最速をうたう雲上の一台は、手に入らずとも憧れの的だ。そういった意味で、ベントレーが「ラグジュアリーを極めた世界最速SUV」と自称する『ベンテイガ スピード』は非常に気になるクルマだろう。

『ベンテイガ』は、“超”高級SUVという新しいセグメントを切り拓いた一台。ラグジュアリー性だけでなく、スピードやパワーにも究極的にこだわった。すでに頂きにあるモデルのさらなる高性能モデルとは、どういったポテンシャルを秘めているのか。

その実力を客観的に示すために、パワートレインの数字を述べよう。定評ある6.0L W12ターボエンジンのハイパワーバージョンを搭載し、最高出力635ps、最大トルク900Nm、最高速度306km/h、0–100 km/h加速3.9秒。これらは、標準の『ベンテイガ』よりも最高出力で27ps、最高速度で5km/hのパワーアップ、0-100kmの加速で0.2秒短縮している。いわずもがな、SUVとしては世界屈指のパフォーマンスだ。最高速度にいたっては、世界最速のSUVである、あのランボルギーニ『ウルス』を上回っている。

世界最高速のスピードで走る約2.4トンの車体。そのエネルギーを受け止めるのが、ベントレーのなかで最大・最強、6000 Nmの制動力を発揮するカーボン・セラミック・ブレーキだ。足回りに関しては、『ベンテイガ』と同じく全輪駆動で、エレクトロニック・デファレンシャルロック(左右のタイヤの回転差を固定する機構)を採用している。

オンロードとオフロードを合わせて計8種類のドライブモードを搭載する充実ぶり

走りの性能については、状況に応じて4種類から選択できるオンロード用走行モードも重要な役割をはたす。乗り心地を最優先させた「コンフォート」、走りを重視した「ベントレー」と「スポーツ」、そしてドライバーが好みに応じて設定できる「カスタム」だ。

特に「スポーツ」モードは専用にチューニングされており、W12エンジンと8速ATのレスポンスに加え、サスペンションと電動アクティブスタビライザー「ベントレーダイナミックライド」の応答性も向上。これまで以上にダイナミックで一体感のある走りを実現した。コーナリング時のロールを即座に抑え込み、タイヤの接地性を最大限に高め、クラストップのキャビン安定性と快適な乗り心地、優れた操縦性を実感することができるだろう。

SUVであるだけに、オフロード用の走行モードも準備されており、その場合は「雪道・草道」「土道・砂砂利」「泥道・小道」「砂道」の4種類が選択可能。合わせて計8種類の走行モードは『ベンテイガ』と同じで、ほかのラグジュアリーSUVを圧倒する充実ぶりだ。

専用スティッチングや「Speed」があしらわれたスポーティでラグジュアリーな室内

エクステリアは『ベンテイガ』を踏襲しつつ、専用装備が与えられた。フロントマスクでは、深い色調のダークティントヘッドライトが質の高さを物語る。また、サイドスカートや前後バンパーのスプリッター、テールゲートスポイラーなどをボディと同色でまとめることで統一感を演出。また、新設計の22インチ10本スポークホイール、ダークティントで統一されたラジエターグリルとバンパーグリル、3種類の仕上げに対応する22インチ専用ホイール、ボディにあしらわれた専用バッジもスポーティなデザインを引き立ててくれる。

キャビンは職人の技が光るハンドクラフト。英国モダンデザインが濃縮された空間に仕上がっている。注目のひとつが、『ベンテイガ』シリーズ初となるアルカンターラの採用だ。後席が2人乗りの4シートモデルでは、クッションボルスターやバックレスト上部、ドアパッド、バックボードのダイヤモンドキルトにもコントラストステッチを施すことができる。

専用の意匠では、「Speed」のロゴをブラインド/コントラストステッチのいずれかで入れることが可能だ。コクピットには、イルミネーション付き「Speed」トレッドプレートが、助手席側フェイシアにはメタル製「Speed」バッジが輝きを添える。

発売は2019年後半。価格や日本導入時期は発表されていない。ちなみに、『ミュルザンヌ スピード』は、『ミュルザンヌ』と比較すると約10%高い。『ベンテイガ』は2786万円なので、3000万円程度になるのだろうか。世界最強のSUVにふさわしい価値である。

Text by Tsukasa Sasabayashi
Photo by (C) Bentley Motors
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
Bentley Bentayga Speed オフィシャル動画
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