笑顔を創りたいWeb屋の日常

某事業会社勤務のWebディレクター。つまり「なかのひと」やってます。Web業界からひょんなことで専門学校の先生に。そしてまたWeb現場に戻ったWebディレクターのブログ。情報デザインやWebの勉強をしています。

カネカ社は本当に育休ページを削除したのか。

いや、「削除したのか」の問いに対しては「削除した」ですね。間違いなく。

ただそれは「炎上騒動を受けて削除したのか」については、僕には「No」に見える

そのことについて「ファクトを大事にする」という観点で書きたいんだけど、その前にちゃんと前提を伝えておきたい。

僕は、(今回の件が事実だと間違いないなら)お子さんが産まれたばかりの父親となった従業員を転勤させるということについては、どんな理由があっても受け入れられません

同時に、企業側にも何らか事情があったり誤解があった可能性だって否めないので「どちらが悪だ」とも言いたくありません。ただただ「どんな事情があったか知らないけど、産まれたばかりのお子さんがいる人を転勤なんてさせないで欲しい」「(何の配慮も無くその辞令を出したしたなら)そんな会社は好きじゃない」だけです。

この前提なんよ。この前提だけは忘れないでね!

 

その上で、「該当ページをこの炎上騒動を受けて削除した」とほぼ確定的に語られていることに強い違和感を感じています

 

そんなわけで、うぇぶぎょうかいのむめいでぃれくたーのお時間です。

 


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はじめに感じた違和感

第一報的なものをはてブで見て、そのあとブコメだったかTwitterだか忘れたけど、「カネカが育休ページを削除している」という内容を見た。そのときは休日でダラダラしながら「あらー、そらあかんのではー」ぐらいに思ってたんよ。

で、いざ自分がはてブやTwitterにコメント残そうと思って改めて確認したら、明らかにサイトのデザインが違う

 

これが現在のカネカ社のWebサイト(デザイン)。

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当然のようにカネカWebサイト( http://www.kaneka.co.jp/csr/ )より


こっちが削除されたと騒がれたページ(デザイン)

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Googleキャッシュより(Googleに怒られそうな気がする)

厳密には違うページなんだけど、同じサイトとしてはデザインが違い過ぎるがな( ゚Д゚)と。

これをパッと見る限りは「リニューアルしたけど残骸がサーバに残ってただけじゃないの?」と思いました。っていうかたぶん今回の件を抜きにしてWeb制作関係者が見たら100人が100人そういうと思う。もしくは「TOPページだけリニューアルして、下層ページは後まわしにした」か。

そして僕はこうツイートしました。

このとき、まだカネカ公式が各メディアに回答をする前(正しくは「回答が掲載される前」)だった。

 

2019年2月にリニューアルしたらしい

カネカ企業サイトの育休関連ページ「故意に消したのではない」「旧サイトが見えていて誤解を招いた」担当者説明 | キャリコネニュース

によると、今年の2月にリニューアルをしていたとのこと。

でも、このニュースを見る前に僕は「ああ、2月にリニューアルしたのかな」と思っていました。べつに預言者でもなければカネカファンだったわけでもなく(余談ですけど知花くららさんはきれいだなぁと思うとります。余談すぎる・・・)、超簡単な話なんよ。Wayback Machineみたらそうなってたから

ご存知、インターネットのタイムマシン(ただし行けるのは過去だけ)Wayback Machineパイセンね。

2019年3月1日の時点では、こう。

http://web.archive.org/web/20190301153724/http://www.kaneka.co.jp/

 

f:id:toksato:20190603223653p:plain

Waybackより。これっていいんだっけ?

2019年1月末はこれ。

http://web.archive.org/web/20190129174345/http://www.kaneka.co.jp/

f:id:toksato:20190603224000p:plain

同じくWaybackより

 

いや同じじゃねぇか( ゚Д゚)ウソツクナヨ 

 

 

ごめんなさい冗談です。
いや、どうやらトップページに関しては(Waybackが正しいならば)ずっと前から今のデザインだった模様。

遡っていくと、2018年3月20日までこの(古い)デザインで

http://web.archive.org/web/20180320173621/http://www.kaneka.co.jp/

f:id:toksato:20190603224548p:plain

ミタビ、Waybackより

このあと、2018年3月31日に新しいデザイン(現行サイトのデザイン)に変わった模様。

http://web.archive.org/web/20180331135940/http://www.kaneka.co.jp/
※あまりに同じ画像なのでもう貼らない・・・。

じゃあなんで「ほう、2019年2月にリニューアルが完了したんやな?」と僕が思ったかというと、下層ページが2019年3月でやっとすべて切り替わってるから

例を挙げると

など。
でも、これらをWaybackで遡ると

を最後にそれぞれ翌月あたりから新デザインに切り替わってる。
合わせて、炎上しているCSR(ESG)のカテゴリTOPページは2019年2月が旧デザインの最後で、そのあと途切れて2019年6月(つまり今現在)の新しいデザインが登録されている。(これ

これらを総合すると(Wayback Machineを信じるなら)、

2018年3月にTOPページをリニューアル

 ↓

徐々に様々なカテゴリをリニューアル

 ↓

そして2019年2月にすべてが完了

なのだろうと。これらはすべて仮説に過ぎないけど、インターネット上(ってほとんどWayback Machineだけど)の履歴を見る限り「2019年2月にリニューアルが完了したのかな」という仮説はじゅうぶんに成り立つと思うんよ。

 

その仮説が絶対正しいと言いたいわけじゃなくてね

「UIデザインが明らかに違う」というのを見たとき、「え?なんで?」と思う。
ほんで、

「直近で削除したとして、なんでキャッシュにこんな古いデザインが残ってるのん?」

という疑問が浮かんでくるはずで。

だって、同じWebサイトなのにこんなにデザインが違うのはおかしい。もう、グローバルナビゲーション(画面上部のメニュー)が違うからユーザー迷いまくり。まくりんぐや!(謎)

そうやってユーザーに不便な体験をさせてでもそのUIを残す理由としては

  1. 重要なコンテンツだからいまもそのページが現役として残っている(つまりキャッシュだけじゃない)
  2. 直近まで(古いデザインながら)公式サイトとして存在していたけど事情によりこの数日で消した→だからキャッシュに残っていた
  3. シンプルに過去のコンテンツがキャッシュとして残っていた

ということになる(他になんかあるかな?)。
1.はないですね。現存してないんだから。
2.が、ネット上で騒がれているパターン。
で、デザインがまるで違うので僕は3を疑いました。でも、現時点でそれが絶対に正しいとは言わない。しかし、こうやって仮説のパターンを立てることで検証はできる。

もし、ネット上で騒がれているとおり2ならば、ページとして機能していたことになるので前後のリンクがあるはずなんよ。そりゃ、リンクが繋がってないと誰もたどり着けないから。

でも、5/31の時点ですでにCSR(ESG)のカテゴリTOPページは新デザインになってたんよ。

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Googleキャッシュより(Googleに怒られそうな気がするその2)

ここに、言及されている当該ページがある /csr/employees/ へのリンクは一つもない。(ないよな?!あったりして・・・)
この時点で「当該ページは直近まで(古いデザインながら)公式サイトとして存在していた」は成り立たないと思うんよね。だってリンクがまったく繋がってないんだもん。UIデザインからして「あ、そのページだけリンク切れしてました」なんて方があり得ないし。

  • リニューアルの残骸が残ったままだった
  • 公式サイトとして機能していたページだけど、炎上を受けて削除した

どっちが信憑性があるのか?という話になれば、僕は前者の方を推すんよ(って僕の意見なんだから当たり前だけど)。

 

そもそも、誰か「炎上騒動後にも該当ページが存在していた」ということを確認したのだろうか?

わからない。
存在していたのかもしれなくて、僕にはいくら探しても見つけられなかった。

でも、

「カネカは今回の炎上騒動を受けて育休ページを削除した」

このツッコミをするに一番重要なのは「炎上騒動前~直後にはまだ(シェアされた)育休ページが存在していた」という事実が必要で。本来、それなしには叩けないはず。だって、それより前に削除されてたら今回の件は関係ないわけですから。

それに関しては、真実はわからない

僕には見つけられなくて、もしかしたら(その証拠が)存在していて僕がバカなだけなのかもしれない。だから、もし見つけている人はコメントなりはてブなりで共有してくれるとありがたいです。もし共有していただけたらひゃくま・・・じゃなくてちゃんと謝ります。自分の仮説が間違いだったと。

でも、見る限りは騒動の直後から「ページ削除してますね」というコメントばかりで、そしてそれに乗っかって?「土日に削除するとかwww」みたいなツイートやコメントをたくさんみた。それは果たして本当にそうなのだろうか?と

土日に削除してないのに「土日に削除したとかwww」なんてコメントはしてはいけない。だって間違いなのだから。

そんなのいちいち確認してられないって?だったらつぶやかなければいい。

100%確実なことだけ言う、ということは現実的には無理。でも、「完璧に間違わない発言なんて無理なんだから何を言っても良い」とはならないし、「企業や芸能人相手なんだから気軽に批判して良い」とも思わないんよ。相手だって人間(の集合体)なんだから。

UIデザインがあからさまに違うということをスタートにいろいろ調べると、僕には「あー、リニューアルの残骸かな」という仮説の方がしっくり来て、直近の騒動を受けて削除したとは思えないんよね。

いや、だから僕が正しいというわけではなく、大人は仮説と事実をきちんとわけて考えるべきだと思うんよ。仮説は、どこまでいったって仮説の域をでない(なんだその日本語)。
間違う可能性がたくさんあって、間違うと相手を無駄に傷つける。もしかしたら違うかもしれないのに、その可能性を考えずに「お前はクズだ!」というのはとても恐ろしい、歯止めの利かない刃になる。

事実として確定できてないことを、「きっとそうだろう」のはずのものを確定的に語ることを「妄想」というんよ。少なくとも「炎上騒動後に削除した」というものが出てこない限りは、「炎上したから消したんだ!」というべきではないと思う。

 

ちなみに、炎上後に削除していたとしてもおかしいとは思わない

仮にそうだったとしてもね。

だって、リンクが繋がっていない、それもミスでそうなんじゃなく、そもそもカテゴリTOPページからまるでリンクが繋がっておらず、デザインも全く違うとなれば、企業としては公式見解として使うつもりのないページってことなんよ。

だとするなら、間違いは「ページの内容」ではなく「(リニューアルして)削除しなければいけないものが残っていたこと」であり、その時点でもう内容は関係ない(その当時はそう思っていた、とは取れるけど)。

そうなるとどんな経緯があろうと、そのページは基本的には「会社の意志ではない」と受け取るのが自然なんよね。とすると、残っていようがいまいが実は関係がない。だって、過去の履歴が誤って公開されていたに過ぎないんだもの。高校生の頃「私は彼が好き!」という風に思っていたとして、それを最新情報として残していないつもりなのに、インターネット上に残っていたとしたら、間違いは「内容」ではなく「過去の情報が残っていたこと」であって。

どんなタイミングだろうと「公開されていてはいけないもの」が見つかったのだから「あかん!削除せな!」と思うのは当然のことでしょう?それだけをもって「ほら!都合が悪いから削除したんだ!」というのは論理として成り立たない。

 

前提をもう一度

僕はカネカ社を擁護しようとは1ミクロも思わないんよ。

なんでや!せっかく育休も使って幸せな家庭になろうとしてるのに、なんでそんなひどい仕打ちするん?!アホか!愛社精神にあふれる社員をそんな扱いしてどうなるんよ!カネカってのはあれか?「かねてより承っておりました、香川真司のおかしなコピー、織田信成です」なのか?(なんだそれは)。

ぶっちゃけ、腹立つ。

ぼくは理不尽な上司が死ぬほど嫌いで、世の中の不幸の7割くらいは理不尽でバカな上司のせいだと思っている。思っていーる。ほんとに。その裏にあるのが純日本的な企業体質だというのも、前から思っている。だから、今回のカネカ社の対応は好きじゃない。

けれども、いやだからこそ、事実と仮説、そして感情は分けて考えるべきと思うんよ。

もしかしたら、今回の騒動でページを削除したのかもしれない。
でも、その証拠がちゃんと見つからない段階で、まるで本当にそれがあったかのような前提で企業や人を叩くのは違うと思う。

もしかしたら自分が誰かを追い込んでしまうかもしれない。
極端な話、もしかしたら誰かを自殺に追い込んでしまうかもしれない。そう思ってネット上にも発言するようにしたい。そして間違ったなら謝りたい。

事実と、仮説と、感情と。
それぞれを分けて、適切な分配で言葉を紡ぎたいんよ。
いや、それは僕の勝手な自分への願望だけどさ、いま一度、「人に対して批判的なコメントを出す」ということについて、考えたいんよ。

みんながハッピーになるために大事なのは、過ちを犯した(かもしれない)企業や人にも配慮することだと思っていて。

 

感情任せに誰かを叩くのは、それが殺人鬼でも、僕はイヤなんよねぇ。

たぶん、理想論だけど。