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【社会】8050問題 中高年ひきこもり 親高齢化で孤立
「川崎市の事件」を恐れたとする熊沢容疑者の供述は、社会から孤立する中高年と高齢化する家族をめぐる問題の深刻さを浮き彫りにした。 内閣府が今年三月に初めて公表した推計では、四十~六十四歳のひきこもりの人が全国で六十一万三千人。七年以上ひきこもる人も五割に及んだ。 長期化するひきこもりは当事者と家族の孤立や困窮を深刻化させている。就職の困難さや心身の不調など課題は増え、それぞれの年齢から「8050問題」や「7040問題」と呼ばれることもある。国は、専門の相談窓口として二〇〇九年度から都道府県や政令市に「ひきこもり地域支援センター」を設置。訪問相談にも取り組むが、支援が追い付いていないのが現状だ。 中高年を含むひきこもり支援を二十年以上続けているNPO法人「パノラマ」(横浜市)の石井正宏代表理事(50)は「ひきこもりと犯罪を結び付けることは控えるべきだが、ひきこもりの人や家族たちが孤独の中で絶望していることも事実。事件のトリガー(引き金)になりかねない。孤独から目を背けていては事件は減らない」と話し、居場所づくりの重要性を訴える。立正大社会福祉学部の関水徹平准教授(社会学)も「地域の中やオンライン上に『生きていていい』と思える場所や関係性を増やすことが、さまざまな生きづらさを抱える人たちの助けになる。そのような活動に、行政は場所や活動費を提供するべきだ」と提案する。 (原尚子、松尾博史)
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