日韓防衛相会談が八カ月ぶりにシンガポールで実現した。懸案になっていたレーダー照射問題で結論は出なかったが、北朝鮮問題などで両国の協力は欠かせない。対話で信頼を積み上げてほしい。
日本国内には、レーダー照射を韓国側が認めないのなら、防衛相会談に応じるべきでないという批判的な意見が多かった。
確かに韓国側は、「自衛隊機が威嚇飛行をした」との主張を繰り返すだけで、進展はなかった。
責任論にこだわるよりも、再発防止策を話し合う方が重要なのは言うまでもない。
その点、会談では艦船などの偶発的衝突を避けるための「行動基準」を順守することで認識を共有しており、意味があった。
日韓関係は歴史問題などを巡り、たびたび悪化してきた。防衛当局間の協力まで影響を受けることはほとんどなかった。
ところが昨年十月、海上自衛隊旗の掲揚問題がもつれ、海上自衛隊は韓国・済州島で行われた観艦式への参加を見送った。
さらに同年十二月、韓国艦艇による日本の海上自衛隊哨戒機への火器管制レーダー照射問題が起き、両国の軍事交流や協力関係が途絶えてしまった。
北朝鮮の非核化をめぐる交渉が停滞し、日韓の協力が必要な場面が増えている。大局的な観点から関係改善を図るべきだ。
防衛当局のトップが直接会談したことで、取りあえず不正常な状態を脱する糸口が見つかった。しかし政府レベルで見ると、対立は依然として続いている。
戦時中の元徴用工を巡り、日本企業に賠償を求める韓国での判決が、最大の原因だ。
日本政府は一九六五年の日韓請求権協定により、この問題に関する仲裁委員会の設置を求めているが、韓国側は応じていない。
日本企業の資産が実際に売却され実害が出た場合、日本政府は報復措置を取るとしており、両国関係に多大な悪影響を与えよう。
韓国側からはなかなか打開策が出ない。「司法の判断を尊重する」との文在寅(ムンジェイン)大統領の考え方が影響しているからだ。ならば今月下旬の二十カ国・地域首脳会議(G20サミット)で、日韓首脳が会談したらどうか。
今年三月、訪韓日本人は三十七万人を超え、月別では国交正常化以降最高となった。韓国からも昨年、年間七百万人以上が日本を訪れた。この貴重な国民的交流を、政治が壊してはならない。
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