穏やかなるかなカルネ村 作:ドロップ&キック
<< 前の話 次の話 >>
モモンガの攻性防壁が炸裂した最中、兄とデート……もとい。任務で国を離れていたクレマンティーヌ。
任務の内容はどうということはなく、ちょこっと兄クアイエッセと一緒にエルフをいじめてた。言い方を変えれば、エイヴァーシャー大森林まで援軍に行っていたのだ。
帰国して任務後の休暇明け、大神官長から呼び出しをくらうと、
”エ・ランテルで悪さしてるらしいズラに潜入してくんね?”
”なんでやねん。単独アンダーカバーとか無茶振りなんすけどー。てか、漆黒聖典全員で凹った方がよくね?”
”情報欲スィー。おk?”
”ぜってー信用されねーし”
”土産ならあんでー”
と大体こんな感じの会話の後に大神官長の懐から出てきたのは、一度お亡くなりになった後にデスナイトとして再デビューを果たし、多くの
何やら巨大な魔法に巻き込まれた臭いが大神官長曰く、
『動作確認はしていないが、見せ金ならこれで十分だろう』
とのこと。
なんとなくそのサークレットはすす焦げてる気がした。
「それとこれを今回の装備として渡しておく。任務の性質上、正規装備持参と言うのは厳しいからな。というより流石に神の遺産の持ち出し許可は出せん」
と渡されたのは、
「なんです? この悪趣味な
その珍妙な装備を思わずマジマジと見て、
「げっ!?」
残念、今度こそクレマンティーヌは声を出してしまった。
でも仕方の無いことだろう。
なんせそれは、自分が普段愛用しているビキニ・アーマーじみた軽甲冑より1ランク以上は落ちる同種装備に、”
「まさか、このプレートって本物の冒険者プレートじゃありませんよね?」
さすがに薄気味悪そうに言うクレマンティーヌに、
「一部、本物も混じってるが……安心しろ。ほとんどがレプリカだ。我が国の各部門に
(本物混じってるーーーっ!!?)
思わず心中で絶叫するクレマンティーヌ。殺すことに忌避感はないが、だからと言って気味の悪さを全く感じないという訳ではないのだ。というかその”揺らぎ無き殺人術”の見事さから誤解されがちだが、彼女は断じて殺戮人形などではなく意外なほど普通の感性の部分も多いのだ。それが彼女にとって幸運なのかは微妙なとこだが。
ただ誤解のないように言っておくが、これ一応はクレマンティーヌを気遣ってる装備だ。
一件乱雑に縫い付けられてるように見える冒険者プレートとそのレプリカだが、素材特性に合わせきちんと計算され配されており、本来の装備に比べれば劣らないとは言わないが、見た目以上の強度があるスケイル・ビキニアーマーとなっているのだ。
いや、彼女的には性能どうこうよりも、
(わ、ワタシってば装着しても呪われないよね……?)
「……どういう意図です?」
「”疾風走破”、君は法国に不満を持つ不穏分子だ」
「はい?」
首をコテンと横に傾けるというちょっと可愛い姿を晒してから、
「大神官長様、お言葉ですが……最初から不満を持つほど法国に期待することなどありませんが?」
つい本音を行ってしまうあたり、クレマンティーヌもまだまだ老獪さとは程遠い。
これには流石の古狸、大神官長もバツが悪そうに、
「……コホン。そういう設定だと理解したまえ」
「は、はあ……」
困惑したままのクレマンティーヌだったが、
「君は元々、祖国に不満を持ちストレスの捌け口に冒険者を殺めてきた」
(いやいや。殺しじゃストレス発散にならないんだけどなー……むしろ何も感じないから、暇つぶしにすらならないし)
クレマンティーヌにとり、殺しはあくまで「必要だから殺る」程度の認識であるのだから当然だろう。
「そして、溜まりに溜まった祖国への不満がついに爆発。土の神殿を半壊させる大規模破壊活動を起こした」
「……半壊したんですか? 土の神殿」
(一体、何があったんだろ?)
どうも表情に出ていたようで、
「……事故だ。それ以上は聞くな。禁則事項だ。”
「りょ、了解!」
(ホントに何があったっ!?)
有無を言わさぬ……というより死んだ目をした大神官長に軽くビビり頷くクレマンティーヌ。
もし、不満が溜まると言うのなら、陳腐すぎる設定に現在進行形で法国への不満が募りそうだった。
それ以前に、
「じゃあワタシめはどうやって土の神殿を半壊させたと?」
「第7位階の炸裂魔法を封じた水晶を発動させたでいいだろう。そして無事に破壊工作を成功させたお前は、目的の一つだった”叡者の額冠”を奪い、法国より逃亡する」
思った以上にロクでもないミッションだった。
「そして”叡者の額冠”を取引材料としてエ・ランテルに潜伏中のズーラーノーン高弟に接触し、身柄の保護を確約させる……ですか?」
「ああ。そこから内偵開始だ」
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
とまあ、以上のようなやり取りがあってクレマンティーヌは王国城壁都市エ・ランテルに無事潜入。
どうにかこうにか儀式を取り仕切ってるらしい十二高弟の一人、カジット・バダンテールと接触することに成功した。
パッと見、老人のように見えるが実は40歳手前というのにも驚いたが、更に驚いたのは実に簡単に自分を受け入れたことと、その理由だ。
本人がアンデッドとなり永遠の生を手に入れる触媒として”死の螺旋”を計画していたこと、そしてその永遠という時間を手に入れる理由が母親を復活させる研究をするため……
(阿呆だろうコイツ……)
5年前から準備を始めた”死の螺旋”だが、その儀式魔法を行うためには、本来ならまだまだ準備時間が必要だったはずだ。
だが、使用可能魔法位階を引き上げる”叡者の額冠”さえ使えれば、カジットが行使できるはずのない第7位階魔法《アンデス・アーミー/死者の軍勢》でアンデッドを人為的に大量発生させ、それらを触媒とすることで”死の螺旋”を遂行することができる……という計画だったのだが、これには巨大な盲点があったのだ。
そう、使用者をマジックアイテムに作り変える”叡者の額冠”は、国民の管理が行き届いたスレイン法国ですらも「100万人に1人しか適合者がいない」とされるシビアなユーザー指定があるのだ。
当然、カジットが投入可能なズーラーノーンの構成員の中には適合者はいない。
このまま、”叡者の額冠”は文字通り宝の持ち腐れ状態で、計画は頓挫……
それが当然の流れだったはずなのだが、
「噂に聞いたことがある。5年前、ワシと入れ違うようにエ・ランテルを出てカルネ村と言う辺境の開拓村に移り住んだ薬師の少年が、あらゆるアイテムを使いこなせる希少な
”叡者の額冠”は確かに呪いのアイテムなのかもしれない。ついでに冒険者プレートも持ち主の怨念がこびりついていたのかもしれない。
そして今回、その呪いを一身に受ける羽目になったのは、言うまでも無く……
「お兄ちゃん……ごめ……ん……」
読んでいただきありがとうございます。
クレマンティーヌだけでなく、存外愉快な思考をしている法国上層部(^^
いや、本人達はいたって真面目なんでしょうけど。
とりあえず、アンダーカバーミッションお疲れさま状態のクレマンさんですが……何やらロクでもないフラグが立った様な?