穏やかなるかなカルネ村 作:ドロップ&キック
<< 前の話 次の話 >>
というかある意味、SAN値下がりそうな気が(笑
「うそん……」
表向きは
ちょっとした人類ぽかーん計画である。
「え~と……カルネ
村から少し離れた草むらの中に身を潜ませ、遠眼鏡で村の様子を見ていたクレマンティーヌが頭を抱えるのも無理は無い。
なにせ、その情景は……
(どう見ても、建造中の城砦……よね?)
しかも何やら明らかにヤバそうだ。
何がどうヤバいかと言えば……
「”カルネ村ゴーレム展示会”とか”カルネ村アンデッド祭”とかでもやってる……とかないよね?」
まず最初に目に付いたのは、重機よろしく……というよりまさに”機動警察パトレイバ○”に出てくる人型作業機レイバーの如く作業しまくる石や金属の
どうやらそのゴーレムたちは川へ続く巨大な水路、そしてそれに繋がる堀を掘ってるようだ。
他にも丸太を運搬し、地面に突き刺す役割を担ってるようだった。
だが、ゴーレムはその大きさとパワーゆえに細々とした作業は苦手だが、それを補うべくちょこまかと小気味よく動いているのがスケルトン達だった。
そして、そのスケルトンたちはスコップやツルハシ、もっこや
もうその時点でクレマンティーヌ的には「お腹いっぱいです。勘弁してください」状態だろうが……だが、無慈悲な精神攻撃は止まらない。
これらの非生物に加え、トロールやオーガ、ゴブリンと言った知能が低いとされる亜人や人間たちが一緒になって作業しているのである。
共通項は、
なんというか……由緒正しい土建屋スタイルとでも言おうか? これでニッカポッカでも履いてれば完璧だろう。
いや、中に本当にあのダボダボズボンを履いてるのがいた。それも複数。
由来は間違いなく「土木作業といったら、やっぱりこのスタイルか?」と言い出したお骨様だろうが、それにクレマンティーヌが気づくはずも無い。
というかゴーレムとアンデッドと亜人と人間が一緒くたに働き、凄まじい勢いで砦を建築してる奇妙な光景にクレマンティーヌはどう判断したものやらと頭を悩ませてしまうのだった。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
さて、そもそもクレマンティーヌがカルネ村なんて特に法国人にとっての”
究極的に言えば、彼女の
大神官長直々に呼び出されてみれば、
「ズーラーノーンへの潜入工作ですか?」
「うむ」
大神官長は鷹揚に頷いた。
秘密結社”ズーラーノーン”。要するに邪教集団である。
ただ、洒落にならないのはその規模の大きさとやってきた数々の所業だ。
特にズーラーノーンを印象付けることになった事件は、今から約20年前に起きた”死の螺旋”事件だ。
ある日、ズーラーノーンは”死の螺旋”といわれる大規模儀式魔法をとある小都市で敢行、住民を全滅させアンデッドの楽園にしてしまったのだ。
「此度、
(んげっ……)
クレマンティーヌとしては声を出さなかった自分を褒めてやりたいとこだ。
ちなみにエ・ランテルはその時に犠牲になった街と比べて遥かに大きく人口も多い、という訳で軽く被害は数倍だろう。
もちろん、クレマンティーヌは国家全体で見れば上層部に入るし、法国が王国に謀略を仕掛け帝国に取り込ませたがってることは知っていた。
だが、王国の守りの要であり対帝国戦の防波堤、帝国から見れば取れば対王国戦の橋頭堡になるエ・ランテルが”死都”になってしまえば、どの国にとっても大幅に計画が狂う。
”死の螺旋”は最終的には強力なアンデッドを生み出す術式だと言われ、例えば王国にとっても帝国にとっても要所でありうるエ・ランテルがアンデッドが溢れ変えり、それこそ簡単に討伐できない強力なアンデッドがたむろする街になってしまえば、間違いなく帝国は戦争計画は見直すだろうし、王国は最終的にエ・ランテル奪還なぞ考えずに新たな緩衝地帯として利用する方針とするだろう。
そうなってしまえば法国としてはこれまでの努力が水の泡だ。
ならばどうするか?
そりゃ事前に止めるしかない。
「だが、ズーラーノーンの誰がどのような方法で”死の螺旋”を行おうとしているのか未だにつかめん。十二高弟の一人なのは間違いないのだがな」
「つまり私はエ・ランテルに潜入し、潜伏してるズーラーノーンの高弟と接触。協力するフリをして情報を抜き出せ……ということですか?」
「なんだったら殲滅してしまってかまわん。”死の螺旋”が最終的に阻止できるなら手段は問わん」
「なら、最初から漆黒聖典全員で殴りかかったほうが……」
情報によれば、ズーラーノーンの高弟の中には、自分より強い可能性がある難度100越えが三人はいるらしい。
正直、単独でのアンダーカバー・ミッションなど冗談ではなかったが、
「だが、ズーラーノーンの情報は欲しい」
大神官長はどこまでも無慈悲だった。
「それにしても、そんなに簡単に信用してもらえるものでしょうか?」
「なに、奥の手はある。きゃつらが喉から手が出るほど欲しがる物をちらつかせてやれば良い」
そう言って大神官長が取り出したのは……
「これって……”叡者の額冠”じゃないですかっ!?」
”叡者の額冠”
それはスレイン法国最秘宝の一つであり、装着者の自我を奪い去る変わりに本来なら決して使えないはずの高い位階の魔法を使うための触媒となすことができる。
つまり、人間をある種のマジックアイテムに作り変えるための宝物であった。
「ちょ……大神官長様、なんでこんなものが……それに、どうして……?」
「ふむ。数日前にちょっとした事故が”土の神殿”であってな。その時に巫女姫が死亡し、サークレットだけが回収されたのだ」
そう、第37話によればモモンガの「《トリプレットマジック/魔法三重化》、《マキシマイズマジック/魔法最強化》、《ワイデンマジック/魔法効果範囲拡大化》、《ペネトレートマジック/魔法抵抗難度強化》、《エクステンドマジック/魔法持続時間延長化》をかけた《チェイン・ドラゴン・ライトニング/連鎖する龍雷》が消える時間ギリギリまで暴れ回り、その時感電死した者を触媒に、《ディレイマジック/魔法遅延化》で時間差をつけた最大6体のデスナイトが顕現する」程度のちょっとした攻性防壁によるちょっとした事故だ。
その頃、クレマンティーヌは任務で法国を離れていて、雷魔法で神殿が半壊した様子も顕現したデスナイト×6とスクワイア・ゾンビとゾンビの阿鼻叫喚な大行進も目撃しておらず、
「事故? どうりで街中がどこか騒然としていると思いました」
事態を重く見た法国上層部は緘口令を敷いたのだった。
おかげでクレマンティーヌもペアミッションのために一緒に国を出ていた兄クアイエッセもその出来事も顛末も知らなかった。
そう、ゲス隊長がカルネ村に攻撃を仕掛けたことも、その煽りで陽光聖典が壊滅したことも、そして不思議と神都に帰って来てもエンカウントしなかった他の漆黒聖典の隊長と隊員が、ツアーに呼び出され今まさにトブの大森林に陽光聖典の遺体を引き取りに向かっていたことも、何も知らされなかったのだ。
それが吉と出るか凶と出るか……吉と出る展開が全く予想できないのが不思議である。
読んでいただきありがとうございます。
クレマンティーヌさん、再登場っす。
というか、彼女って確実に
しかも今回はヅラへの単独の潜入工作(情報収集)、そして潜り込むためのアイテムが原作でも有数の呪いのアイテム扱いされてる”叡者の額冠”……
うん。とてもハッピーエンドが想像できない状況ですな~と。