穏やかなるかなカルネ村 作:ドロップ&キック
<< 前の話 次の話 >>
お骨様のこの100年の行動、その一部がわかる仕様です(^^
「『権力は腐敗する。絶対的な権力は絶対に腐敗する』……これも”先生”の言葉です。そして先生の言葉通り、王国において貴族と言う権力はどうしようもないほど、どうにもならないほど腐敗しました」
実はこの言葉、原典は初代アクトン男爵である”ジョン・エメリク・エドワード・ダルバーグ=アクトン”が遺した格言だった。
それにしても……疑問は残る。
「先生の言うことはいつも正しいですわ。もしかしたら先生は人類という劣等種には、過ぎたる叡智の持ち主かもしれないですわね♪」
おそらく先生とは某ダークウォリアーとは別パターンの受肉モードなだけで、中身は多分あのお骨様のはず。むしろ別の骨だか得体の知れない何だかが入っていたら驚きだ。
確かに異世界から流れてきた骨ではあるが……だが、「あばたもえくぼ」的な贔屓目があるとはいえ真性の天才であるラナーに、ここまで評される存在ではないはずだ。
何しろ、最終学歴は小学校だ(義務教育が崩壊した世界では、それでもまだマシな方なのだが……)
その答えは唯一つ。原作の彼には無かった物……それは時間だ。
そう、先生の中の人ならぬ中の骨は、鍛錬以外の空いてる時間を読書に費やした。
ゲーム時代の彼の行動パターンは見る限り、彼は知識欲も好奇心も旺盛で、向学心が高く研究/探求熱心、オマケに偏執的な凝り性だ。
だから最初、評議国での下積み時代にこの世界の文字を覚えることもかねて、この世界の本を読み漁り世界を理解することに努め、やがて旅に出る前の修行あるいは訓練中に強制エンカウントイベントが発生したキーノを連れ立って旅出た後もそれは続いていた。
そして数十年に及ぶ長い旅路の折り返し地点を過ぎた頃には、ビブリオフィリアとは言わないまでもかなりの
そして、とっくにこの世界の書物には飽き足らなくなっていて、”
さて中でもお骨……先生お気に入りなのはエロに定評のあるペロロンチーノが、エロに厳しい運営の目を掻い潜り、ダミーデータで巧妙に偽装(エロマンガに参考書のカバーを被せるようなもの)し収蔵した”
実は一番読んでいたのは、ギルド最年長者で本業が大学教授の”死獣天朱雀”が趣味と実益を兼ねて遺した専門の文化人類学や歴史、技術発展史の蔵書と、自然回復を目的とした研究所の平研究員だった”ブルー・プラネット”が遺した自然科学や農業関連の蔵書だった。
そう、先生がこの世界を知る上で必要な比較対象として選んだのが、自業自得で滅びの瀬戸際に立つ人類がかつて歴史を彩った政治/経済/軍事の出来事に加え、第一次・二次・三次産業である農業、工業、商業の詳細に至るまで記してあるこれらの蔵書だったのだ。
そう、これらの本はまだ中世~近世の途上にあるようなこの世界においては、教科書でありマニュアルであり同時に予言書ですらあった。
もし彼がこれらの本を片っ端から読破しなければ、きっと今頃は”
彼はこれら知識を血肉の無い骨の身の情報学的血肉とし、時には実践と実験と検証を行い、一歩一歩確実に自分のものへとしていった。
100年前の彼でなく、今の彼をもし死獣天朱雀が見れば、きっと自分の大学で一度試しに特別講義で教鞭をとるように薦めたに違いない。
正体が最強の骨(何か骨太っぽい表現だが)である先生は、死獣天朱雀とブルー・プラネットの収蔵タグがついた本の中には全く意味のわからないものもあったが、ならばと簡単そうなものから読み始め、少しずつでも理解を深めた。
無論、他にギルメンが遺した本も役に立ちそうな物や興味そそられるものは片っ端から目を通した。
時折、本に熱中しすぎて「かーまーえー!」と言わんばかりに一緒に旅をしているかまってちゃんの愛妻が、ペロペロしたりレロレロしたりハムハムしてきたりの妨害工作(?)をしてきたが、それでもめげることはなかった。
嘘だ。時々、いやかなりの頻度でめげた。具体的には甘えるしぐさが妙に猫っぽいのだから、構う以外の選択肢がなかった。
”可愛いは正義”とはよく言ったものである。
ちなみに意外でもなんでもないが、ペロロンチーノの蔵書を一番好んで愛読していたのはペロペロ/レロレロ/ハムハムしてきたその吸血姫な愛妻である。
懐かしき友人を楽しげに語る姿に軽い嫉妬を感じなくは無かったが、『
読書の時間が極端に削られることを恐れた骨は、よく考えもせずにそれを受諾し、謎空間から表紙と中身の落差が激しい書物を諦めたような顔で取り出した。
『ほほう……モモンガはこういうシチュエーションやプレイが好みなのか……』
とりあえず確実に言えるのは、色々バリエーションが増えたようだ。
関係は不明だが、妻が妙にプライベートのコスチュームやら下着やらに凝るようになったのもこの頃らしい。
☆☆☆
「わたくしは先生から生きること全てを学びました。もし先生に出会わなければ、わたくしはきっと全てに退屈し、退屈に押し潰され、この世の何にも興味を持てなかったかもしれませんわね……」
ありえたかもしれない自分の姿をイメージし、歪みきった笑顔の想像の自分に少しだけゾッとするラナーだった。
ある意味、イメージしたのは最強の自分かもしれないが、冗談ではなかった。
あんな顔をしていたら先生の前に小さな胸をはって立てないではないか。そんな人生、送りたいとは思わない。
「そう言えば権力と腐敗の話でしたわね? 今更、身の丈に見合わぬ権力を手に入れた人間がどうなるかなんて、説明する必要もないでしょう。貴族って分不相応のレッテルを貼り付けて、王宮あたりにはゴロゴロいますもの。ガゼフ隊長もよく目にしてるでしょ?」
「ま、まあ、そうですね」
その強烈な物言いに、思わず返答を淀ませてしまう生真面目なガゼフに、
「ガゼフ隊長……忌憚のない意見を聞きたいのですが、貴族たちを見ていて王国の未来は明るいと思いますか?」
「……それを私に聞きますか?」
「ええ。
ラナーの言う通りである。
目の前の男は、”ただ平民の出である”という理由で無能な貴族たちに反対され、一代限りの名誉である騎士にすらなれなかったのだ。「騎士は貴族の名誉」というくだらない理由で。
「……明るい訳がない。国の礎となるのは民だ。その民を大事にせぬ国は、」
その先は口が過ぎるとガゼフは言葉を飲み込んだ。
「でしょうね。常識的な言葉でなによりです」
よくできましたとばかりにクスクスと笑うラナーに苦虫を噛み潰したような顔をするガゼフ。
だが、ふとその笑い声をラナーは止め、
「ところでガゼフ隊長」
「なんです?」
「わたくしの見立てですと、現状のままでは例え延命に成功しても、あと5年以内に王国は滅びますが、その後の身の振り方はいかがなさいます?」
特大の爆弾を落とすのだった。
読んでいただきありがとうございます。
そして最後に爆弾を落とすラナー様(笑
モモンガ様、クレバーな骨になた理由は、仲間たちが遺した本だったというオチです。
しかもかなり真面目な内容の物が多い。
最初は文字を覚えることを兼ねたこの世界の簡単な本から始まり、旅の後半からこの世界の本だけじゃ飽き足らずって感じでしょうか?
そして、いつの間にか