多数の子供と大人が刺された現場付近で行われる救助作業=川崎市多摩区で2019年5月28日午前8時40分、本社ヘリから © 毎日新聞 多数の子供と大人が刺された現場付近で行われる救助作業=川崎市多摩区で2019年5月28日午前8時40分、本社ヘリから

 川崎市多摩区でスクールバスを待っていた私立カリタス小学校の児童らが襲われて20人が死傷した事件で、自殺した岩崎隆一容疑者(51)と同居していた伯父らは神奈川県警に対し、容疑者と顔を合わせたのは今年1月が最後と説明している。捜査関係者によると、岩崎容疑者には別の親族の遺産が入り、生活費はあったとみられるが、周囲との交流は避けていた。事件発生から4日で1週間。容疑者の人物像は浮かんでこない。

 岩崎容疑者は幼い頃に両親が離婚し、伯父や伯母らに引き取られた。ただ、最近までの長期間、自宅にこもって外部との接触を避けていた。1月には80代後半になった伯父らが今後を心配し、容疑者の部屋の前に手紙を置き、生活を変えるよう促した。数日後、岩崎容疑者は「食事も洗濯も自分でやっている。引きこもりとは何だ」と口頭で反論したという。その翌月の2月、岩崎容疑者は事件で使う柳刃包丁2本を購入したとみられる。

 事件は計画的だった疑いが強い。事件に使う2本の他に別の包丁2本も所持し、手から滑り落ちるのを避けるためか手袋まで用意していた。事件4日前の5月24日朝には、岩崎容疑者と年齢や背格好が似た人物の姿が、自宅最寄りの小田急読売ランド前駅や3駅先の現場近くの登戸駅、現場周辺の防犯カメラ映像に記録されていた。これが岩崎容疑者なら、下見に来ていたことになる。

 なぜ児童らを狙ったのか。複数の親戚がカリタス小に過去に通っていたという情報もあるが、動機は不明だ。県警は岩崎容疑者の自宅居室の捜索でノートや漫画、雑誌、包丁の箱4個など数十点を押収した。ノートには「正」の字が羅列してある不可解な部分などがあり、事件を示唆する記述などはなかった。海外の殺人事件を特集した雑誌2冊があったものの、10年ほど前の発行で、県警は動機に直結するものではないとみている。

 居室にテレビはあったが、パソコンやスマートフォンはなかった。捜査幹部は「容疑者の人柄が全く見えてこない。本当に存在したのかと思うくらいだ」と話す。県警は難しい捜査に直面している。

 一方、県警多摩署や多摩区役所、地域団体の関係者らが集まり、子どもの安全確保のための緊急会議が開かれた。各団体とも見守り活動を強化しており、連携を推進することを確認した。【国本愛、洪玟香】

こちらもおすすめ

元次官「川崎が頭に浮かび」長男刺殺

東京都練馬区早宮の自宅で長男の胸などを包丁で刺したとして、警視庁練馬署に殺人未遂容疑で現行犯逮捕された元農林水産省事務次官の無職、熊沢英昭容疑者(76)が「川崎市の20人殺傷事件が頭に浮かび、息子が周囲に危害を加えないようにしようと思った」という趣旨の供述をしていることが3日、捜査関係者への取材で分かった。 同署は同日、熊沢容疑者を送検。先月28日に川崎市多摩区で起きた殺傷事件を機に、熊沢容疑者が長男、英一郎さん(44)に対する殺意を強めたとみて、詳しい経緯を調べている。 死亡した長男の英一郎さん(44)の傷が十数カ所に上ることが判明。胸や腹など上半身に集中していたほか、自宅で殺意をほのめかすメモも見つかっており、強い殺意があったことがうかがえる。 捜査関係者によると、英一郎さんは10年以上前から都内の別の場所に住んでいたが、本人の希望で5月下旬から実家に戻っていた。別居中にはごみ出しをめぐり近隣住民ともめることもあったという。 熊沢容疑者は「(英一郎さんは)ひきこもりがちで、家庭内では暴力や暴言があった」と説明。「身の危険を感じた」とも供述し、練馬署は家族間にトラブルがあったとみている。 ...

産経新聞 ロゴ 産経新聞
国内
フィードバック

興味のあるストーリーが見つかりましたか?

Facebook で「いいね」を押すと、似たようなストーリーをご覧いただけます


MSN にご意見ご感想を送信します

ご入力いただき、ありがとうございました!

サイトの全体的な評価をお聞かせください: