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第83回 | 大人のための最新自動車事情

トレイルホーク──マスキュリンなグランドチェロキー

プレミアムSUVを謳うクルマは、いまや世界中で販売されている。しかし、Sport Utility Vehicle(スポーツ ユーティリティ ビークル)という名でもわかるように、SUVとは本来、一般道も走れる「高いオフロード性能」を持ったクルマを指す。ジープのフラッグシップモデル『グランドチェロキー』に新たに設定された「トレイルホーク」は、そのオフロード性能を高める数々の装備を施した100台だけの特別仕様車だ。ジープブランドを展開するFCAいわく、「グランドチェロキーでもっともオフロード性能に卓越した限定車」。同時に、「トレイルホーク」はアメリカンな雰囲気たっぷりの専用のエクステリアとインテリアを持つ、大人の男性に似合うファッショナブルなモデルでもある。

モノトーンにレッドの差し色が映える「トレイルホーク」のアメ車らしいエクステリア

2017年にマイナーチェンジを受け、さらにアメリカンSUVとしての魅力を高めた『グランドチェロキー』は、ヨーロッパのライバルたちとはひと味異なるテイストにより多くのファンを獲得しているモデルだ。この『グランドチェロキー』のオフロード性能を高めた100台限定のバリエーションモデルが「トレイルホーク」である。

エクステリアでは、フォグランプベゼル、フロントグリル、ドアミラーカバー、ルーフレールにアクセントカラーとしてナチュラルグレーを採用。ボンネットにはマットブラックのデカールが施され、ウインドウ周りのベルトモールがピアノブラックとなるなど、全体的に男っぽい雰囲気にまとめられている。

ここに加味されるのがジープでおなじみとなっている赤の差し色だ。フロントの牽引フック、「Jeep」「GRAND CHEROKEE」「Trail Rated」の各バッジをレッド仕上げにすることにより、いかにもワイルドでアメ車的なテイストが横溢。FCAは、このスタイリングを「マスキュリン(=男性的)」と表現する。

プレミアムSUVでありながら高いオフロード性能を追求した「トレイルホーク」の装備

専用デザインの18インチアルミホイールに組み合われる「265/60R18オールテレインタイヤ」も、ワイルドな雰囲気を醸成するのにひと役買っている。とはいえ、オールテレインタイヤ(全地形)を装備する本来の目的は、もちろんオフロードにおける走破性の向上だ。

オフロード性能に関しては、ほかにも、オフロード走行時にシャシーの下回りを損傷しないように、フューエルタンク、トランスファーケース、フロントサスペンション、アンダーボディの4カ所にスキッドプレートを装着。機能面では、“オフロードのクルーズコントロール”と称される「セレクスピードコントロール(ヒルディセントコントロール、ヒルアセントコントロール)」を搭載し、さらに先進の4×4システム「クォドラドライブⅡ」を採用することで、卓越したオフロード走破性を発揮する。

プレミアムSUVでありながら、こうした装備によって本格的なオフロード性能を追求する姿勢は、いかにもジープらしい。

価格は約600万円、どこか『コルベット』を思わせる「トレイルホーク」のインテリア

インテリアは、基本的に「ラレード」「リミテッド」などのグレードと変わらない。ただし、室内は黒で統一され、ブラックレザーにはレッドステッチのアクセントが施された。さらに、ステアリング下部の専用レザーシートには「TRAIL HAWK」のロゴとスウェードのインサートが入り、特別感を演出する。

それらによって、室内にどこかシボレー『コルベット』のような、レーシーな雰囲気も漂わせているから不思議だ。これぞ“アメ車”というべきインテリアである。

ボディカラーは「ビレットシルバーメタリック」(60台)「ダイヤモンドブラッククリスタル」(40台)の2色が用意された。

限定モデルながらオフロード性能を高めた「トレイルホーク」が登場したことにより、これで『グランドチェロキー』は、エントリーモデルの「ラレード」「リミテッド」、プレミアムモデルの「サミット」、ハイパフォーマンスモデルの「SRT8」と、すべての分野をカバーする稀有なラージSUVとなった。なお、「トレイルホーク」の価格は「リミテッド」と同じ599.4万円(税込み)。オフロードとアメ車が好きな人にとっては、じつに魅力的な一台となりそうだ。

Text by Muneyoshi Kitani

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第130回 | 大人のための最新自動車事情

エモーションEV──バタフライドアの電動スポーツカー

ポルシェ初の量産EVスポーツカーとして話題の『タイカン』は今年生産を開始し、驚異的なスペックを誇るテスラのスーパースポーツカー『ロードスター』も2020年の発売を予定している。EVスポーツカーは、いま旬を迎えつつあるカテゴリだ。そうしたなか、アメリカのフィスカーがCES 2019で初公開した『エモーションEV』が予約受付を開始した。バタフライ4ドアが特徴の高級フルEVスポーツは、いったいどんなクルマなのか。

BMW『Z8』やアストンマーチン『DB9』のデザイナーが手がけた高級スポーツEV

フィスカー『エモーションEV』は、ヘンリック・フィスカー氏の手によるエレガントなデザインの高級EVスポーツカーだ。フィスカー氏はデンマーク出身の著名なカーデザイナー。BMWに在籍していた当時に『Z8』、EVコンセプトモデルの『E1』などを手がけ、アストンマーチンでは『DB9』『DBS』『ヴァンテージ』のデザインを担当した。

その後、独立してメルセデス・ベンツやBMWをベースにしたコンプリートカーやハイブリッドエンジン搭載のオリジナルモデルを製作するが、じつは、テスラで『ロードスター』『モデルS』の2モデルの開発に参加したこともあるようだ。そのせいというわけではないだろうが、『エモーションEV』のデザインはどこかテスラに似た雰囲気もある。

ともあれ、スタイリングは「美しい」のひと言に尽きる。とりわけ特徴的なのは、開くとドア側面が蝶の羽のような形に見える「バタフライ4ドア」だ。同じ上部に向かって開くドアでも、縦方向に開くシザースドアと違い、バタフライドアは外側が斜め前方に、内側が下向きに開く。駐車スペースに苦労する日本ではなかなかお目にかかれないドアだ。

バッテリーはリチウムイオンではなく炭素素材コンデンサ。多くの先端技術を搭載

面白いのは、バッテリーに多くのEVに採用されるリチウムイオンではなく、炭素素材コンデンサのグラフェンスーパーキャパシタを採用したことだ(全個体充電池搭載モデルもラインナップ)。1回の充電あたりの最大走行距離は約640km。急速充電の「UltraCharger」に対応しており、9分間の充電で約205km分の容量までチャージ可能という。

EVパワートレインは最高出力700psを発生し、最高速度は260km/h。このスペックを見ると、テスラ『ロードスター』のようなEVスーパースポーツではなく、あくまでスポーティカーという位置づけなのだろう。全長5085×全幅2015×全高1465mmのボディは軽量のカーボンファイバーとアルミニウムで構成され、駆動方式は四輪駆動だ。

このほか、ADAS(先進運転支援システム)としてクアナジー製LIDARセンサーを5個搭載し、コネクテッドなどのEVスポーツカーらしいさまざまな先端技術を装備する。

『エモーションEV』の価格は1440万円。予約も開始され今年中にデリバリー予定

前述の通り、『エモーションEV』はグラフェンスーパーキャパシタ搭載モデルと全個体充電池搭載モデルの2モデルを設定。価格はグラフェンスーパーキャパシタ搭載モデルが1440万円(税別)、全個体充電池搭載モデルの価格は未定だ。すでに日本でもデロリアン・モーター・カンパニーを正規代理店に予約受付を開始しており、グラフェンスーパーキャパシタは今年中の納車を予定している。ただし、予約金として約24万円が必要だ。

最近では東京都心部などでテスラをよく見かけるようになり、もはやEVは現実的な乗り物になりつつある。たしかに価格は1000万円オーバーと高価。しかし、この美しいルックスなら、他人と違うクルマに乗りたいという欲求を満たすことができるのではないか。

Text by Kenzo Maya
Photo by (C) Fisker, Inc.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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