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第78回 | 大人のための最新自動車事情

BMW S1000R──大人も愉しめるストリートファイター

ストリートファイター、略称「ストファイ」とは、フルカウルのスーパーバイクレーサーからカウルを取り去り、公道を走るための最小限の仕様にしたバイクことだ。このカルチャーは1980年代のヨーロッパで生まれ、その後世界中に広まっていった。各メーカーも近年、ストファイ仕様のニューモデルを発表している。BMWモトラッドが送り出した新型『S1000R』は、車体とエンジンにスーパーバイク『S1000RR』のDNAを受け継ぎながら、初心者からリターンライダーまで愉しむことのできる、大人のためのストファイだ。

短距離に挑むアスリートのクラウチングスタートを想起させるBMW『S1000R』の外装

『S1000R』のコンセプトは「真髄だけを残し、他をそぎ落としたロードスターで最大限のパフォーマンスを」と、明快で簡潔そのもの。しかし、単に『RR』からカウルを外し、スペックダウンさせただけの安易なものではない。そんなことはBMWのプライドが許さない。クローズドサーキットではなく、一般車が走り、路面の状態が刻々と変化する公道で、いかに安全で快適に、もちろん速く走るかを追求したモデルとなっている。

まず外観では、テールの上がったウエッジシェイプや最小限にとどめられた外装が、短距離走に挑むアスリートのクラウチングスタートを想起させる。個性的な左右非対称デザインのヘッドライト、それを収めた独特なカウルには、ネイキッドバイクにはない、計算されたデザインが潜んでいる。

搭載するパワーユニットは、『RR』に由来する直列4気筒1000ccエンジンをさらに最適化。スムーズなトルクがあらゆるエンジンスピードレンジにおいて得られるようチューンされた。スペック的には、10000rpmあたりの出力が165ps/121kW、最大トルク114Nm/9250rpmで、前モデルに比べて5馬力アップしている。この5馬力の余裕がライダーに笑顔をもたらすことだろう。加えて、ライダーの所有感をくすぐる「HPチタンサイレンサー」が標準装備されていることも見逃せない。このチタン製サイレンサーも相まって、車重は『RR』よりも2kg軽量の206Kgとなっている。

『S1000R』の価格は約170万円、初心者もリターンライダーも満足させる機能と装備

走りの面でぜひ紹介しておきたいのが、ボタン一つで『S1000R』の走りを変化させる機能、「ライディングモード」を標準搭載していることだ。

「Rain(レイン)」モードは穏やかなスロットル反応を示し、「Road(ロード)」モードではスロットル反応の最適化により、ABS(アンチロック ブレーキ システム)が乾燥したアスファルトに適応してくれるのだ。さらに限界を目指すライダーには「Dynamic(ダイナミック)」「Dynamic Pro(ダイナミック プロ)」の2つのProモードを用意。これらの設定が、ライダーが目指した最高の走りを可能にしてくれる。

この機能に加えて、『S1000 R』はコーナリング時の安全性を確保するABS ProとDTC(ダイナミック トラクション コントロール)を標準搭載。このコンビがどんな局面でも、優れた加速力と減速力を保証してくれる。このABSは、走行中にスイッチのオン・オフ切り替えが可能なため、止まる必要がなく、継続して好みのライディングが愉しめるのだ。

オプションとして、「HPシフトアシスト」というクラッチを使わずシフトアップが可能となる装備もある。こうした電子デバイスの恩恵は、バイク初心者をベテランライダーに、ベテランをプロ級のライディングに高めてくれるだろう。

『S1000R』がBMWモトラッドの製品群でロードスター・ファミリーに属しているのには、こうした理由があったのだ。初心者もリターンライダーも満足させる機能と装備、そして走りは、バイクの新たな世界を垣間見せてくれる。価格は169万9000円(税込み)。

Text by Katsutoshi Miyamoto

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第130回 | 大人のための最新自動車事情

エモーションEV──バタフライドアの電動スポーツカー

ポルシェ初の量産EVスポーツカーとして話題の『タイカン』は今年生産を開始し、驚異的なスペックを誇るテスラのスーパースポーツカー『ロードスター』も2020年の発売を予定している。EVスポーツカーは、いま旬を迎えつつあるカテゴリだ。そうしたなか、アメリカのフィスカーがCES 2019で初公開した『エモーションEV』が予約受付を開始した。バタフライ4ドアが特徴の高級フルEVスポーツは、いったいどんなクルマなのか。

BMW『Z8』やアストンマーチン『DB9』のデザイナーが手がけた高級スポーツEV

フィスカー『エモーションEV』は、ヘンリック・フィスカー氏の手によるエレガントなデザインの高級EVスポーツカーだ。フィスカー氏はデンマーク出身の著名なカーデザイナー。BMWに在籍していた当時に『Z8』、EVコンセプトモデルの『E1』などを手がけ、アストンマーチンでは『DB9』『DBS』『ヴァンテージ』のデザインを担当した。

その後、独立してメルセデス・ベンツやBMWをベースにしたコンプリートカーやハイブリッドエンジン搭載のオリジナルモデルを製作するが、じつは、テスラで『ロードスター』『モデルS』の2モデルの開発に参加したこともあるようだ。そのせいというわけではないだろうが、『エモーションEV』のデザインはどこかテスラに似た雰囲気もある。

ともあれ、スタイリングは「美しい」のひと言に尽きる。とりわけ特徴的なのは、開くとドア側面が蝶の羽のような形に見える「バタフライ4ドア」だ。同じ上部に向かって開くドアでも、縦方向に開くシザースドアと違い、バタフライドアは外側が斜め前方に、内側が下向きに開く。駐車スペースに苦労する日本ではなかなかお目にかかれないドアだ。

バッテリーはリチウムイオンではなく炭素素材コンデンサ。多くの先端技術を搭載

面白いのは、バッテリーに多くのEVに採用されるリチウムイオンではなく、炭素素材コンデンサのグラフェンスーパーキャパシタを採用したことだ(全個体充電池搭載モデルもラインナップ)。1回の充電あたりの最大走行距離は約640km。急速充電の「UltraCharger」に対応しており、9分間の充電で約205km分の容量までチャージ可能という。

EVパワートレインは最高出力700psを発生し、最高速度は260km/h。このスペックを見ると、テスラ『ロードスター』のようなEVスーパースポーツではなく、あくまでスポーティカーという位置づけなのだろう。全長5085×全幅2015×全高1465mmのボディは軽量のカーボンファイバーとアルミニウムで構成され、駆動方式は四輪駆動だ。

このほか、ADAS(先進運転支援システム)としてクアナジー製LIDARセンサーを5個搭載し、コネクテッドなどのEVスポーツカーらしいさまざまな先端技術を装備する。

『エモーションEV』の価格は1440万円。予約も開始され今年中にデリバリー予定

前述の通り、『エモーションEV』はグラフェンスーパーキャパシタ搭載モデルと全個体充電池搭載モデルの2モデルを設定。価格はグラフェンスーパーキャパシタ搭載モデルが1440万円(税別)、全個体充電池搭載モデルの価格は未定だ。すでに日本でもデロリアン・モーター・カンパニーを正規代理店に予約受付を開始しており、グラフェンスーパーキャパシタは今年中の納車を予定している。ただし、予約金として約24万円が必要だ。

最近では東京都心部などでテスラをよく見かけるようになり、もはやEVは現実的な乗り物になりつつある。たしかに価格は1000万円オーバーと高価。しかし、この美しいルックスなら、他人と違うクルマに乗りたいという欲求を満たすことができるのではないか。

Text by Kenzo Maya
Photo by (C) Fisker, Inc.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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