内外装のデザイン変更と充実装備により『UP!』の魅力を引き上げるマイナーチェンジ
Aセグメントに属する『UP!』は、Bセグメントの『ポロ』より全長が450mmも短い、3545mmのコンパクトなボディを持って登場した「最も小さいフォルクスワーゲン」。シンプル&クリーンをコンセプトとしたデザインには無駄がなく、機能的で、スマートフォンからインスピレーションを得たという大判のガラスを用いたリヤスタイルがアクセントとなっている。
搭載されるのは1.0L 3気筒自然吸気エンジンで、最高出力75ps、最大トルク95Nm。しかし、走りはスペック以上に力強く、高速域ではAセグメントのコンパクトカーとは思えない高いスタビリティを持つなど、評価は高かった。標準モデルで149万円(当時)、上級グレードでも200万円以下という戦略的な価格設定もあり、発売当初は多くのユーザーの注目を集めた。
その一方、シンプルすぎるゆえに、『UP!』には装備面などで不満の声が聞かれたのも事実。5年目にして行われた初のマイナーチェンジでは、内外装のデザイン変更と装備の充実により、コンパクトカーとしての『UP!』の魅力がさらに高められている。
スマホとの連携を強化、上位グレードでも200万円を切るお手頃価格の新型『UP!』
エクステリアは、ボンネットとバンパーのデザインが変更されたことで、以前よりもシャープでスポーティになった印象だ。立体的になった前後バンパーによって、全長も65mm伸びている。ホイールやリヤコンビランプのデザインが刷新されたことも、印象が変わった要因のひとつだろう。
ボディカラーは、「ハニーイエローメタリック」「ティールブルー」「タングステンシルバーメタリック」という3つの新色を含めた全7色だ。
インテリアでは、ステアリングホイールが『ゴルフ』などの上位モデルと同じデザインとなった。ダッシュパッドはグレードやボディカラーによってさまざまな色やデザインが用意され、特徴的な室内空間を演出する。このダッシュバッドには、新たに「IML(イン モールド ラベリング)」と呼ばれる特殊プリントが施されたタイプが登場し、上級グレードの『high UP!』に採用された。
シャープなデザインにリファインされたセンターパネルには、新しいインフォテインメントシステム「Composition(コンポジション)」を全モデルに標準装備。さらにオプションで、スマートフォンと連携した「Composition Phone(コンポジション フォン)」が設定された。これは、手持ちのスマートフォンと車体をBluetoothで接続し、専用アプリを使ってスマートフォンにナビゲーションや走行データを表示するというもの。高価なナビをインストールしなくても高機能のシステムが使える、というアイデア装備である。
ほかにも、レインセンサー、オートライトが標準化され、『high UP!』はステアリングやウィンカー操作に連動する「スタティック・コーナリング・ライト」という、上位モデルに迫る装備も備えている。また、細かい部分では、従来のエアコンはマニュアルのみだったが、『high UP!』でオートエアコンもオプションで選べるようになった点も新しい。
グレード構成に変更はない。2ドアと4ドアがあるベーシックグレードの『move UP!』、上級グレードとなる『high UP!』(4ドア)の3タイプで、価格はそれぞれ158万7000円、178万7000円、193万8000円だ(すべて税込み)。
2つの限定車、2トーンカラーの「roof up!」とサウンドにこだわる「up! with beats」
新型『UP!』の導入と同時に、2つの限定モデルも発売された。「roof up!」は、『high UP!』のルーフとドアミラーをブラックまたはホワイトにすることにより、2トーンカラーのコントラストが鮮やかなモデル。「トルネードレッド×ブラック」「ティールブルー×キャンディホワイト」「ハニーイエローメタリック×ブラック」の3タイプが用意され、価格はそれぞれ204万9000円(税込み)。計130台が販売される。
「up! with beats」は、プレミアムサウンドシステム“beats sound system”を搭載し、オーディオブランド「Beats」の世界観をイメージした内外装を持つ。300W、8チャンネルのパワーアンプに、デジタルプロセッサー、サブウーファー付き7スピーカーのオーディオシステムを搭載するなど、音楽を愛し、サウンドにこだわる人に向けたモデルだ。専用デザインのエクステリアやシート、「Composition Phone」が装備され、価格は2ドアが172万3000円、4ドアは192万3000円(いずれも税込み)。こちらは計600台の限定だ。
初となるマイナーチェンジを受け、国産コンパクトカー、そしてフィアット『500』やルノー『トゥインゴ』に勝負を挑む新型『UP!』。これらのクルマに比べて圧倒的にお得だったり個性的だったりするわけではないが、『UP!』の真骨頂というべきスタビリティ抜群の走りは、ライバルたちに勝るところ。一度ドライブしてみれば、「小さいけれど、しっかりフォルクスワーゲン」の意味がわかるはずだ。
Text by Muneyoshi Kitani