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第76回 | 大人のための最新自動車事情

最も小さなフォルクスワーゲン──新しくなったUP!

「小さいけれど、しっかりフォルクスワーゲン」。2012年、こんなキャッチコピーとともに日本市場にデビューしたのが、フォルクスワーゲンブランドで最もコンパクトな『UP!』だ。しかし、扱いやすいサイズ、輸入車としては手頃な価格などを武器に国産車のコンパクトカーに挑んだが、販売台数は思うように伸びず、苦戦する。そこで導入以来、初めて改良が施され、4月下旬に販売が開始されたのが新型『UP!』だ。マイナーチェンジによって、スタイリングがシャープかつスポーティになり、レインセンサーなど上級車種顔負けのエクイップメントを装備。スマートフォンとのコネクティビティも強化されるなど、見た目も使い勝手も全方位的にアップデートされている。

内外装のデザイン変更と充実装備により『UP!』の魅力を引き上げるマイナーチェンジ

Aセグメントに属する『UP!』は、Bセグメントの『ポロ』より全長が450mmも短い、3545mmのコンパクトなボディを持って登場した「最も小さいフォルクスワーゲン」。シンプル&クリーンをコンセプトとしたデザインには無駄がなく、機能的で、スマートフォンからインスピレーションを得たという大判のガラスを用いたリヤスタイルがアクセントとなっている。

搭載されるのは1.0L 3気筒自然吸気エンジンで、最高出力75ps、最大トルク95Nm。しかし、走りはスペック以上に力強く、高速域ではAセグメントのコンパクトカーとは思えない高いスタビリティを持つなど、評価は高かった。標準モデルで149万円(当時)、上級グレードでも200万円以下という戦略的な価格設定もあり、発売当初は多くのユーザーの注目を集めた。

その一方、シンプルすぎるゆえに、『UP!』には装備面などで不満の声が聞かれたのも事実。5年目にして行われた初のマイナーチェンジでは、内外装のデザイン変更と装備の充実により、コンパクトカーとしての『UP!』の魅力がさらに高められている。

スマホとの連携を強化、上位グレードでも200万円を切るお手頃価格の新型『UP!』

エクステリアは、ボンネットとバンパーのデザインが変更されたことで、以前よりもシャープでスポーティになった印象だ。立体的になった前後バンパーによって、全長も65mm伸びている。ホイールやリヤコンビランプのデザインが刷新されたことも、印象が変わった要因のひとつだろう。

ボディカラーは、「ハニーイエローメタリック」「ティールブルー」「タングステンシルバーメタリック」という3つの新色を含めた全7色だ。

インテリアでは、ステアリングホイールが『ゴルフ』などの上位モデルと同じデザインとなった。ダッシュパッドはグレードやボディカラーによってさまざまな色やデザインが用意され、特徴的な室内空間を演出する。このダッシュバッドには、新たに「IML(イン モールド ラベリング)」と呼ばれる特殊プリントが施されたタイプが登場し、上級グレードの『high UP!』に採用された。

シャープなデザインにリファインされたセンターパネルには、新しいインフォテインメントシステム「Composition(コンポジション)」を全モデルに標準装備。さらにオプションで、スマートフォンと連携した「Composition Phone(コンポジション フォン)」が設定された。これは、手持ちのスマートフォンと車体をBluetoothで接続し、専用アプリを使ってスマートフォンにナビゲーションや走行データを表示するというもの。高価なナビをインストールしなくても高機能のシステムが使える、というアイデア装備である。

ほかにも、レインセンサー、オートライトが標準化され、『high UP!』はステアリングやウィンカー操作に連動する「スタティック・コーナリング・ライト」という、上位モデルに迫る装備も備えている。また、細かい部分では、従来のエアコンはマニュアルのみだったが、『high UP!』でオートエアコンもオプションで選べるようになった点も新しい。

グレード構成に変更はない。2ドアと4ドアがあるベーシックグレードの『move UP!』、上級グレードとなる『high UP!』(4ドア)の3タイプで、価格はそれぞれ158万7000円、178万7000円、193万8000円だ(すべて税込み)。

2つの限定車、2トーンカラーの「roof up!」とサウンドにこだわる「up! with beats」

新型『UP!』の導入と同時に、2つの限定モデルも発売された。「roof up!」は、『high UP!』のルーフとドアミラーをブラックまたはホワイトにすることにより、2トーンカラーのコントラストが鮮やかなモデル。「トルネードレッド×ブラック」「ティールブルー×キャンディホワイト」「ハニーイエローメタリック×ブラック」の3タイプが用意され、価格はそれぞれ204万9000円(税込み)。計130台が販売される。

「up! with beats」は、プレミアムサウンドシステム“beats sound system”を搭載し、オーディオブランド「Beats」の世界観をイメージした内外装を持つ。300W、8チャンネルのパワーアンプに、デジタルプロセッサー、サブウーファー付き7スピーカーのオーディオシステムを搭載するなど、音楽を愛し、サウンドにこだわる人に向けたモデルだ。専用デザインのエクステリアやシート、「Composition Phone」が装備され、価格は2ドアが172万3000円、4ドアは192万3000円(いずれも税込み)。こちらは計600台の限定だ。

初となるマイナーチェンジを受け、国産コンパクトカー、そしてフィアット『500』やルノー『トゥインゴ』に勝負を挑む新型『UP!』。これらのクルマに比べて圧倒的にお得だったり個性的だったりするわけではないが、『UP!』の真骨頂というべきスタビリティ抜群の走りは、ライバルたちに勝るところ。一度ドライブしてみれば、「小さいけれど、しっかりフォルクスワーゲン」の意味がわかるはずだ。

Text by Muneyoshi Kitani

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第130回 | 大人のための最新自動車事情

エモーションEV──バタフライドアの電動スポーツカー

ポルシェ初の量産EVスポーツカーとして話題の『タイカン』は今年生産を開始し、驚異的なスペックを誇るテスラのスーパースポーツカー『ロードスター』も2020年の発売を予定している。EVスポーツカーは、いま旬を迎えつつあるカテゴリだ。そうしたなか、アメリカのフィスカーがCES 2019で初公開した『エモーションEV』が予約受付を開始した。バタフライ4ドアが特徴の高級フルEVスポーツは、いったいどんなクルマなのか。

BMW『Z8』やアストンマーチン『DB9』のデザイナーが手がけた高級スポーツEV

フィスカー『エモーションEV』は、ヘンリック・フィスカー氏の手によるエレガントなデザインの高級EVスポーツカーだ。フィスカー氏はデンマーク出身の著名なカーデザイナー。BMWに在籍していた当時に『Z8』、EVコンセプトモデルの『E1』などを手がけ、アストンマーチンでは『DB9』『DBS』『ヴァンテージ』のデザインを担当した。

その後、独立してメルセデス・ベンツやBMWをベースにしたコンプリートカーやハイブリッドエンジン搭載のオリジナルモデルを製作するが、じつは、テスラで『ロードスター』『モデルS』の2モデルの開発に参加したこともあるようだ。そのせいというわけではないだろうが、『エモーションEV』のデザインはどこかテスラに似た雰囲気もある。

ともあれ、スタイリングは「美しい」のひと言に尽きる。とりわけ特徴的なのは、開くとドア側面が蝶の羽のような形に見える「バタフライ4ドア」だ。同じ上部に向かって開くドアでも、縦方向に開くシザースドアと違い、バタフライドアは外側が斜め前方に、内側が下向きに開く。駐車スペースに苦労する日本ではなかなかお目にかかれないドアだ。

バッテリーはリチウムイオンではなく炭素素材コンデンサ。多くの先端技術を搭載

面白いのは、バッテリーに多くのEVに採用されるリチウムイオンではなく、炭素素材コンデンサのグラフェンスーパーキャパシタを採用したことだ(全個体充電池搭載モデルもラインナップ)。1回の充電あたりの最大走行距離は約640km。急速充電の「UltraCharger」に対応しており、9分間の充電で約205km分の容量までチャージ可能という。

EVパワートレインは最高出力700psを発生し、最高速度は260km/h。このスペックを見ると、テスラ『ロードスター』のようなEVスーパースポーツではなく、あくまでスポーティカーという位置づけなのだろう。全長5085×全幅2015×全高1465mmのボディは軽量のカーボンファイバーとアルミニウムで構成され、駆動方式は四輪駆動だ。

このほか、ADAS(先進運転支援システム)としてクアナジー製LIDARセンサーを5個搭載し、コネクテッドなどのEVスポーツカーらしいさまざまな先端技術を装備する。

『エモーションEV』の価格は1440万円。予約も開始され今年中にデリバリー予定

前述の通り、『エモーションEV』はグラフェンスーパーキャパシタ搭載モデルと全個体充電池搭載モデルの2モデルを設定。価格はグラフェンスーパーキャパシタ搭載モデルが1440万円(税別)、全個体充電池搭載モデルの価格は未定だ。すでに日本でもデロリアン・モーター・カンパニーを正規代理店に予約受付を開始しており、グラフェンスーパーキャパシタは今年中の納車を予定している。ただし、予約金として約24万円が必要だ。

最近では東京都心部などでテスラをよく見かけるようになり、もはやEVは現実的な乗り物になりつつある。たしかに価格は1000万円オーバーと高価。しかし、この美しいルックスなら、他人と違うクルマに乗りたいという欲求を満たすことができるのではないか。

Text by Kenzo Maya
Photo by (C) Fisker, Inc.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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