イタリアの高級スポーツカーが奏でるエンジン音は「女性の性的興奮」を呼び起こす!?
10年ほど前の話になるが、イギリスの高級自動車保険「Hiscox(ヒスコック)」が委託した研究に興味深い結果がでた。それは「高級車のエンジン音は、女性の性的興奮を呼び起こす」というもの。
もう少し具体的に示せば、イタリアの高級スポーツメーカー3社、マセラティ、フェラーリ、ランボルギーニのエンジン音を40人の男女に聞かせたところ、全員の唾液中のテストステロン値が上昇。特に女性はその傾向が強かったという。テストステロンは男性ホルモンの一種で、男女を問わず分泌される。男女ともに性衝動を高める働きがあるといわれており、また「テストステロンの値が高い男は女性にモテる」といった研究結果もある。ちなみに、同じ実験でフォルクスワーゲン『ポロ』のエンジンを聞かせると、男女ともに全員のテストステロンの値が下がったという。
では、車種によるテストステロン値の上がり方に男女で違いはあったのか? 結論からいえば、あった。女性のテストステロン値が上がったのは、マセラティだった。「車に興味がない」と答えた女性も、マセラティのエンジン音を聞くとテストステロン値が上がったという。ある意味、マセラティは女性を興奮させる音を奏でる名車なのだ。
マセラティサウンドとヴァイオリンの名機「ストラディヴァリウス」の深い関係とは?
マセラティのエンジン音に女性が反応する──その結果を聞いたとき、さもありなんという感想を持った。なぜなら、マセラティサウンドには、ある特徴があるからだ。キーワードは「ストラディヴァリウス」だ。
ストラディヴァリウスは、いわずとしれたヴァイオリンの名器。じつは、マセラティジャパンがサウンドデザインラボ合同会社と中央大学の音響システム研究室に依頼した調査では、マセラティの加速音とストラディヴァリウスの演奏音には、「迫力があり、創造力をかき立てる(主観評価)」「脳を活性化させる効果がある(客観評価)」「音響特性として、明瞭な整数次倍音がある(物理評価)」の3つの共通点があったという。これがテストステロンの増加につながったどうかは定かでないが、ストラディヴァリウスが奏でる音色のような心地よいエンジン音に、酔いしれないわけがない。
ちなみに、先ほどの自動車保険会社の研究で男性のテストステロン値が最も上がったのはランボルギーニのエンジン音。女性はテストステロン値が高い男に惹かれるという説もあるが、ランボルギーニを運転してテストステロン値が上がれば、女性にモテやすくなるかもしれない。
官能的な音だけではなく、静粛性を高めて会話を愉しむことのできる車も女性にモテる
マセラティ、ランボルギーニ、フェラーリに限らず、自動車メーカーがエキゾーストノートにこだわるのは、今や当たり前になっている。
たとえば、日産『スカイライン』やBMW『i8』は、マイクが車内の不快なエンジンノイズ音を集め、スピーカーから逆位相の音を出すことでノイズを軽減。電子的に合成した望ましいエンジン音を発してくれシステムを採用している。トヨタ『86』やスバル『BRZ』、マツダ『ロードスター』、レクサス『IS』などのスポーツカーは、エンジンの吸気音を意識的に室内に引き込み、加速時のエンジンサウンドを強調して響かせる仕組みなどを採用している。また、500台限定で発売されたレクサスのフラッグシップスポーツカー『LFA』は、「音をブランドにすること」を目標としてエキゾーストノートが作り込まれた。
そして、ハイブリッド車やEVが普及し始めた今、車が奏でる音には、少し変化が現れ始めている。官能的な音を紡ぐのではなく、静粛性を高める努力がなされているのだ。ガソリン車ならエンジン音や排気音によってかき消されていた風切り音やロードノイズが耳に触るようになったことが理由のひとつである。静粛性を高めるためには、空気抵抗を減らして風切り音を低減させたり、タイヤからの騒音を低減するために発泡材などを採用して外部からの音の侵入を減らしたり、吸音材を厚くして室内の音を吸収したりする工夫が取られている。車内が静かになれば、会話もスムーズになり、音楽をより愉しむこともできる。これも、ある意味、女性にモテる車の音のひとつかもしれない。
モテる車というと、とかくデザインやステータスの話になりがちだが、エンジン音やエキゾーストノートも大事な要素のひとつ。スペックやデザイン、価格に左右されがちな車選びに、「女性をアゲる音」といった要素を入れる大人の余裕があれば、他の男たちとはひと味違った差別化ができるかもしれない。
Text by Tsukasa Sasabayashi
Photo by (C) Maserati S.p.A.