editeur

検索
サービス終了のお知らせ
第73回 | 大人のための最新自動車事情

125S──跳ね馬のエンブレムを掲げた初のフェラーリ

フェラーリは、最も有名なスーパーカーブランドであり、熱狂的ファンを持つモータースポーツコンストラクターでもある。クルマに興味がない人でも、一度はフェラーリの名を聞いたことがあるはずだ。しかし、フェラーリといえども銀の匙をくわえて誕生したわけではない。戦後の焼け野原からイタリアが復興していくなかで、小さな工場から出発し、「特別なレーシングカーを作りたい」という創業者の強い思いによって世界的ブランドに成長していったのだ。そのフェラーリの歴史において、重要な意味を持つのが1947年に作られた『125 S』というスポーツカー。跳ね馬のエンブレムを掲げた最初のモデルである。

エンツォ・フェラーリが『125S』のエンジンに火を入れて始まったフェラーリの歴史

1947年3月12日、フェラーリの創業者エンツォ・フェラーリは、自身の名を冠した初めてのモデル『フェラーリ125 S』のエンジンに火を入れた。このとき、ミラノから南東へ169kmの距離にあるモデナ県中部の町、マラネッロの道路で行った『125 S』のテストドライブから、フェラーリの歴史は始まった。

それから70年が過ぎた2017年、創業70年の節目を迎えたフェラーリは、3月12日のオーストラレーシア(オーストラリア、ニュージーランド、ニューギニア、南太平洋近隣諸島)を皮切りに、世界60カ国以上で開催するアニバーサリーイベントをスタートさせた。各国のイベント会場には、70周年のシンボルとして最新のスペチアーレである『ラ・フェラーリ アペルタ』が展示される。

さらに、フェラーリはこの祝賀行事に合わせ、特設ウェブサイトで『125 S』をフューチャーしたスペシャル動画をリリース。『125 S』がマラネッロのアベトーネ・インフェリオーレ通りに面したフェラーリ本社のゲートをくぐり抜け、その精神が『ラ・フェラーリ アペルタ』へと受け継がれる映像は、世界的に有名なスーパーカーブランドとなっても変わらない「フェラーリの伝統」を表現している。

70年間のフェラーリの輝かしい歴史のなかでも『125 S』は最も意義深いスポーツカー

スペシャル動画には、エンツォ・フェラーリ(もちろん本物ではない)がカヴァリーノ・ランパンテ(跳ね馬)のエンブレムをそっと布で拭くシーンが出てくる。これでわかるように、『125 S』はフェラーリのエンブレムを付けた最初のモデルでもあった。『125 S』に搭載されたパワーユニットは当然ながら、12気筒エンジン。設計したのはエンツォの依頼を受けてアルファロメオからフェラーリに移籍してきたジョアッキーノ・コロンボで、やはりアルファロメオのエンジニアだったジュゼッペ・ブッソなども開発チームに加わった。

テストドライブから2カ月後の1947年5月11日、『125 S』はピアチェンツァ・サーキットでレースデビューを果たす。このレースでは一時トップを走りながら燃料ポンプのトラブルでリタイヤしたが、9日後のローマ・グランプリでは40周(137km)のレースを平均速度88.5km/hで走り切って初優勝を飾った。最終的に、タツィオ・ヌヴォラーリのドライブによるパルマ・グランプリの優勝を含め、『125 S』は出場した13のレースで6勝を挙げている。

レースに勝って名声を高め、そこで得た経験と技術をロードカーにフィードバックして心を揺さぶるスーパーカーを作る──このフェラーリのビジネススタイルを考えると、『125 S』は同社の歴史上、最も意義深いモデルといえるだろう。

下の写真は、フェラーリの70周年祝賀イベントのひとつとして米ロサンゼルスのピーターソン自動車博物館で開催された「Seeing Red: 70 Years of Ferrari」(赤を見る フェラーリの70年)に展示される『125 S』。フェラーリ初期のモデルの多くは、分解されたり、別のモデルにパーツが流用されたりしたが、このシャシーナンバー「0101」の『125 S』はまぎれもない最初期の一台とされる。

創業70周年を祝うフェラーリのアニバーサリーイベントは、9月9〜10日にマラネッロで行われるスペシャルイベントでクライマックスを迎えたのち、10月12日に日本でも開催される。可能性は極めて低いが、もしかすると『ラ・フェラーリ アペルタ』とともに『125S』がやってくるかもしれない。

Text by Kenzo Maya

Photo by (C)Ferrari S.p.A.

ピックアップ
第130回 | 大人のための最新自動車事情

エモーションEV──バタフライドアの電動スポーツカー

ポルシェ初の量産EVスポーツカーとして話題の『タイカン』は今年生産を開始し、驚異的なスペックを誇るテスラのスーパースポーツカー『ロードスター』も2020年の発売を予定している。EVスポーツカーは、いま旬を迎えつつあるカテゴリだ。そうしたなか、アメリカのフィスカーがCES 2019で初公開した『エモーションEV』が予約受付を開始した。バタフライ4ドアが特徴の高級フルEVスポーツは、いったいどんなクルマなのか。

BMW『Z8』やアストンマーチン『DB9』のデザイナーが手がけた高級スポーツEV

フィスカー『エモーションEV』は、ヘンリック・フィスカー氏の手によるエレガントなデザインの高級EVスポーツカーだ。フィスカー氏はデンマーク出身の著名なカーデザイナー。BMWに在籍していた当時に『Z8』、EVコンセプトモデルの『E1』などを手がけ、アストンマーチンでは『DB9』『DBS』『ヴァンテージ』のデザインを担当した。

その後、独立してメルセデス・ベンツやBMWをベースにしたコンプリートカーやハイブリッドエンジン搭載のオリジナルモデルを製作するが、じつは、テスラで『ロードスター』『モデルS』の2モデルの開発に参加したこともあるようだ。そのせいというわけではないだろうが、『エモーションEV』のデザインはどこかテスラに似た雰囲気もある。

ともあれ、スタイリングは「美しい」のひと言に尽きる。とりわけ特徴的なのは、開くとドア側面が蝶の羽のような形に見える「バタフライ4ドア」だ。同じ上部に向かって開くドアでも、縦方向に開くシザースドアと違い、バタフライドアは外側が斜め前方に、内側が下向きに開く。駐車スペースに苦労する日本ではなかなかお目にかかれないドアだ。

バッテリーはリチウムイオンではなく炭素素材コンデンサ。多くの先端技術を搭載

面白いのは、バッテリーに多くのEVに採用されるリチウムイオンではなく、炭素素材コンデンサのグラフェンスーパーキャパシタを採用したことだ(全個体充電池搭載モデルもラインナップ)。1回の充電あたりの最大走行距離は約640km。急速充電の「UltraCharger」に対応しており、9分間の充電で約205km分の容量までチャージ可能という。

EVパワートレインは最高出力700psを発生し、最高速度は260km/h。このスペックを見ると、テスラ『ロードスター』のようなEVスーパースポーツではなく、あくまでスポーティカーという位置づけなのだろう。全長5085×全幅2015×全高1465mmのボディは軽量のカーボンファイバーとアルミニウムで構成され、駆動方式は四輪駆動だ。

このほか、ADAS(先進運転支援システム)としてクアナジー製LIDARセンサーを5個搭載し、コネクテッドなどのEVスポーツカーらしいさまざまな先端技術を装備する。

『エモーションEV』の価格は1440万円。予約も開始され今年中にデリバリー予定

前述の通り、『エモーションEV』はグラフェンスーパーキャパシタ搭載モデルと全個体充電池搭載モデルの2モデルを設定。価格はグラフェンスーパーキャパシタ搭載モデルが1440万円(税別)、全個体充電池搭載モデルの価格は未定だ。すでに日本でもデロリアン・モーター・カンパニーを正規代理店に予約受付を開始しており、グラフェンスーパーキャパシタは今年中の納車を予定している。ただし、予約金として約24万円が必要だ。

最近では東京都心部などでテスラをよく見かけるようになり、もはやEVは現実的な乗り物になりつつある。たしかに価格は1000万円オーバーと高価。しかし、この美しいルックスなら、他人と違うクルマに乗りたいという欲求を満たすことができるのではないか。

Text by Kenzo Maya
Photo by (C) Fisker, Inc.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

ピックアップ

editeur

検索