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第68回 | 大人のための最新自動車事情

カスタムMINI──自分だけの一台に仕上げる愉しみ

輸入車の勢力地図に2016年、変化が起きた。正規ディーラーによって構成される日本輸入車組合が1988年にモデル別販売台数の調査を開始して以降、ずっと首位を走ってきたフォルクスワーゲン『ゴルフ』が、初めてその座から陥落したのだ。『ゴルフ』に代わって首位に立ったのは、BMW傘下の『MINI(ミニ)』。人気の秘密は、ファッショナブルな外観に加え、ライフスタイルに合った選び方のできる豊富なボディバリエーションにあるという。しかし、忘れてはいけないのが、MINIならではのカスタムカルチャーである。MINIは“吊るし”で乗るのではなく、カスタマイズによって自分好みの一台に仕上げていくことに一番の魅力があるのだ。

MINIは、他人とは違う「オーナーの個性を表現する土台」として非常に優れたクルマ

現在のMINIは、2001年にBMW傘下となって生まれ変わった「新生MINI」の3世代目にあたる。

当初は『MINI 3ドア』のみだったが、その後、SUVの『MINIクロスオーバー』、オープンモデルの『MINIコンバーチブル』、さらに5ドアの『MINI 5ドア』、ひと回り大きいステーションワゴン風の『MINIクラブマン』と、ラインナップを拡充。BMWジャパンは、この多彩なボディバリエーションこそが日本市場においてMINIブランドが高い成長を遂げられた最大の理由としている。

しかし、MINIの高い人気は、けっしてラインナップの豊富さだけが理由ではないように思う。たしかに、ファッショナブルな内外装やBMW譲りの走行性能に加え、ライフスタイルに合ったモデルを選ぶこともできるのは魅力的だが、なによりMINIらしい愉しみ方といえるのが「カスタム」である。

「MINIは、『オーナーの個性を表現する土台』としても非常に優れたクルマです」と話すのは、正規ディーラー「MINI 大田」でアフターセールスマネージャーを務め、MINIのカスタムエキスパートとして知られる橋本直樹さんだ。

「ノーマルでもデザインが素晴らしく、そのままでも十分ですが、MINIのオーナーには『他の人とは違うデザインにしたい』『走りを高めた仕様にしたい』という方がたくさんいらっしゃいます。カスタムすることで、さらに魅力的かつ個性的なクルマに仕上げ、オーナー自身を引き立てることができるのです」

人気が高いのはボディやルーフにデカールやストライプを施すエクステリアのカスタム

MINIのカタログを見ると、ボディカラー、ルーフカラー、デカール、ストライプ、ホイール、シート素材、インテリアカラー、インテリアパネル…と、じつにさまざまな選択肢が用意されている。

しかし、MINIの場合、「人とは違うクルマに乗りたい」というニーズが高く、MINI大田ではこれらの純正パーツに加えて、多数の社外パーツや海外仕様のアクセサリー、オリジナルパーツを提供。なかでも「わかりやすい差別化」として人気を集めるのが、ボディにデカールやストライプを施すエクステリアのカスタムだ。

「純正アクセサリーにもデカールやストライプはありますが、当店ではオーダーメイドであらゆるデザインやカラーに対応しています。最近では、マットブラックのデカールやストライプが人気で、ルーフに貼る『ユニオンジャックルーフデカール』もマットブラックが注目されていますね」

近年、メルセデス・ベンツやポルシェでは外装をブラックモノトーンに仕上げるカスタマイズが流行しているが、MINIのオーナーの間でも、グリルやウィンドウ下端のクロームのモールをブラックに塗装するカスタムが人気となりつつあるという。

「フェンダーマーカーがつくUS仕様のフェンダーアーチ、さらにドイツと英国でしか設定のない特別なパーツなど、海外仕様の純正パーツも人気の高いアイテムです。また、限定車だけに採用されたパーツを注文して装着する方もいらっしゃいます」

ちなみに、橋本さんのおすすめは「ハーマンカードン」のツイーターキットだそうだ。これは、メーカーオプションであるオーディオの高音用スピーカー部分だけを後付けするもので、Aピラーに装着されるツイーターは、音質が向上するのはもちろん、インテリアのアクセントにもなり、非常に満足感が高いという。

「ホイール」「サスペンション」「マフラー」をカスタマイズしてMINIの走りを高める

走りの面でカスタムの中心となるのは、主にホイール、サスペンション、マフラーだ。もともとMINIは走りのレベルも高いクルマだが、さらに上を求めるオーナーが多いのだという。

「サスペンションは『ビルシュタイン』や『アイバッハ』、マフラーなら『レムス』が人気です。車高やテールパイプの変更によるドレスアップ効果を目的に装着される方もいらっしゃいます」

ただし、いくらMINIがカスタムして愉しむクルマといっても、オーナーには騒音規制や環境規制など、法令遵守が求められる。また、MINIのカスタムショップのなかには、BMWやMINIで「DMEチューニング」と呼ばれるコンピュータの書き換えを行うところもあるが、これはMINI大田では行っていない。

「当店は正規ディーラーですので、違法改造や保証対象外になるようなカスタマイズはいっさい提供していません。取り扱うパーツはすべて車検対応となっています。正規ディーラーならではの高い作業クオリティを心がけおり、スタッフたちも自分のMINIにさまざまなパーツを装着し、実際に試しています」

MINIのオーナーは40歳前後が中心だが、上は引退して悠々自適の生活を送る70代までと、幅広いファン層を持つ。それらの人たちが、数万円のデカールに始まり、ホイール、サスペンション、マフラーをすべて交換して100万円近くの改造費をかけるなど、さまざまなカスタマイズを愉しんでいるのだ。

これほど多彩なパーツが提供され、自分好みにカスタマイズすることのできるクルマは滅多にない。オンリーワンが価値を持つ時代だけに、2017年、MINIの人気はさらに高まりそうだ。

Text by Muneyoshi Kitani

取材協力
MINI大田
TEL:03-6894-3255
住所:東京都大田区東雪谷2-4-3
営業時間:火~金曜日9:30-19:00
土日祝日:10:00-18:00
定休日:月曜日(月曜祝日の場合は火曜日)

MINI正規ディーラーでありながら、さまざまなカスタマイズを提案する。ディーラークオリティでのカスタマイズは安心感が高く、関東圏だけでなく遠方からカスタマイズの相談にくるオーダーも多い。
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第130回 | 大人のための最新自動車事情

エモーションEV──バタフライドアの電動スポーツカー

ポルシェ初の量産EVスポーツカーとして話題の『タイカン』は今年生産を開始し、驚異的なスペックを誇るテスラのスーパースポーツカー『ロードスター』も2020年の発売を予定している。EVスポーツカーは、いま旬を迎えつつあるカテゴリだ。そうしたなか、アメリカのフィスカーがCES 2019で初公開した『エモーションEV』が予約受付を開始した。バタフライ4ドアが特徴の高級フルEVスポーツは、いったいどんなクルマなのか。

BMW『Z8』やアストンマーチン『DB9』のデザイナーが手がけた高級スポーツEV

フィスカー『エモーションEV』は、ヘンリック・フィスカー氏の手によるエレガントなデザインの高級EVスポーツカーだ。フィスカー氏はデンマーク出身の著名なカーデザイナー。BMWに在籍していた当時に『Z8』、EVコンセプトモデルの『E1』などを手がけ、アストンマーチンでは『DB9』『DBS』『ヴァンテージ』のデザインを担当した。

その後、独立してメルセデス・ベンツやBMWをベースにしたコンプリートカーやハイブリッドエンジン搭載のオリジナルモデルを製作するが、じつは、テスラで『ロードスター』『モデルS』の2モデルの開発に参加したこともあるようだ。そのせいというわけではないだろうが、『エモーションEV』のデザインはどこかテスラに似た雰囲気もある。

ともあれ、スタイリングは「美しい」のひと言に尽きる。とりわけ特徴的なのは、開くとドア側面が蝶の羽のような形に見える「バタフライ4ドア」だ。同じ上部に向かって開くドアでも、縦方向に開くシザースドアと違い、バタフライドアは外側が斜め前方に、内側が下向きに開く。駐車スペースに苦労する日本ではなかなかお目にかかれないドアだ。

バッテリーはリチウムイオンではなく炭素素材コンデンサ。多くの先端技術を搭載

面白いのは、バッテリーに多くのEVに採用されるリチウムイオンではなく、炭素素材コンデンサのグラフェンスーパーキャパシタを採用したことだ(全個体充電池搭載モデルもラインナップ)。1回の充電あたりの最大走行距離は約640km。急速充電の「UltraCharger」に対応しており、9分間の充電で約205km分の容量までチャージ可能という。

EVパワートレインは最高出力700psを発生し、最高速度は260km/h。このスペックを見ると、テスラ『ロードスター』のようなEVスーパースポーツではなく、あくまでスポーティカーという位置づけなのだろう。全長5085×全幅2015×全高1465mmのボディは軽量のカーボンファイバーとアルミニウムで構成され、駆動方式は四輪駆動だ。

このほか、ADAS(先進運転支援システム)としてクアナジー製LIDARセンサーを5個搭載し、コネクテッドなどのEVスポーツカーらしいさまざまな先端技術を装備する。

『エモーションEV』の価格は1440万円。予約も開始され今年中にデリバリー予定

前述の通り、『エモーションEV』はグラフェンスーパーキャパシタ搭載モデルと全個体充電池搭載モデルの2モデルを設定。価格はグラフェンスーパーキャパシタ搭載モデルが1440万円(税別)、全個体充電池搭載モデルの価格は未定だ。すでに日本でもデロリアン・モーター・カンパニーを正規代理店に予約受付を開始しており、グラフェンスーパーキャパシタは今年中の納車を予定している。ただし、予約金として約24万円が必要だ。

最近では東京都心部などでテスラをよく見かけるようになり、もはやEVは現実的な乗り物になりつつある。たしかに価格は1000万円オーバーと高価。しかし、この美しいルックスなら、他人と違うクルマに乗りたいという欲求を満たすことができるのではないか。

Text by Kenzo Maya
Photo by (C) Fisker, Inc.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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