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第62回 | 大人のための最新自動車事情

電動スクーターという愉しみ――BMW C evolution

すでに生産終了しているが、かつてBMWモトラッドのスクーターに屋根付きでシートベルトを着用して乗る『C1』というモデルがあった。結局、「ヘルメット不要」というメーカー側の主張と日本の道交法がぶつかり、日本での正式発表は見送られたが、そのコンセプトが大きな話題となったので覚えている人もいることだろう。これに代表されるように、BMWモトラッドのスクーターに対する考え方はじつにユニークで、時代の先をいく革新的な技術やデザインが注ぎ込まれている。2017年3月下旬に発表された同社初の電動スクーター『C evolution(エヴォリューション)』も、「エヴォリューション(進化)」という名でわかるとおり、これからの電動スクーターのあり方を指し示すモデルとなっている。

BMW『i3』と同じ大容量リチウムイオンバッテリーを搭載する『Cエヴォリューション』

『Cエヴォリューション』のパワーユニットは、液冷式電気モーター、歯付きベルトおよび遊星ギアを使用したドライブトレインスイングアームによるエレクトリックドライブが最大の特徴だ。

電気自動車『BMW i3』と同じバッテリーモニターエレクトロニクスとリチウムイオンバッテリーモジュールを採用し、ダイキャストアルミニウム製のバッテリーハウジングケースは耐荷重フレームエレメントの役割も果たす。大容量リチウムイオンバッテリー(94Ah)は、惰性走行モードに加え、ブレーキング時のエネルギー回生によって航続距離は最大で160㎞を確保するという。

80%までの充電に要する時間は、EV充電スタンドや普通充電用200Vコンセントにより、3.5時間ほどだ。ただし、日本国内での電圧は100Vのため、これは仕様が変更されることになるかもしれない。

『Cエヴォリューション』の最高速度は129 km/h、低重心により低速のふらつきも解消

このパワーユニットは、0–50 km/hを2.8秒で加速する(メーカー数値)。スペック的には、最大トルク72 Nm/0–4650 rpm、トータル減速比 1:8.28。最高速度は129 km/h(電子制御リミッター)だ。

さらに、これまでのスクーターと比べて重心を低くしたことにより、快適なハンドリング性能を実現したというから、スクーター特有の低速でのふらつきが解消され、カーブのコーナリングも楽しめそうだ。

ちなみに、電動バイクといえば重い車重が宿命だが、『Cエヴォリューション』も空車重量(走行可能状態、燃料満タン時)で275 kgあるという。この車重では、まず押し歩きは不可能。ライダーは、充電切れをしない運転に加え、ヘルメットを脱ぐと同時にプラグを持つようなマメさが必要になるだろう。

価格は148万7500円(税込み)で、2017年5月12日より発売開始される。

Text by Katsutoshi Miyamoto

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第130回 | 大人のための最新自動車事情

エモーションEV──バタフライドアの電動スポーツカー

ポルシェ初の量産EVスポーツカーとして話題の『タイカン』は今年生産を開始し、驚異的なスペックを誇るテスラのスーパースポーツカー『ロードスター』も2020年の発売を予定している。EVスポーツカーは、いま旬を迎えつつあるカテゴリだ。そうしたなか、アメリカのフィスカーがCES 2019で初公開した『エモーションEV』が予約受付を開始した。バタフライ4ドアが特徴の高級フルEVスポーツは、いったいどんなクルマなのか。

BMW『Z8』やアストンマーチン『DB9』のデザイナーが手がけた高級スポーツEV

フィスカー『エモーションEV』は、ヘンリック・フィスカー氏の手によるエレガントなデザインの高級EVスポーツカーだ。フィスカー氏はデンマーク出身の著名なカーデザイナー。BMWに在籍していた当時に『Z8』、EVコンセプトモデルの『E1』などを手がけ、アストンマーチンでは『DB9』『DBS』『ヴァンテージ』のデザインを担当した。

その後、独立してメルセデス・ベンツやBMWをベースにしたコンプリートカーやハイブリッドエンジン搭載のオリジナルモデルを製作するが、じつは、テスラで『ロードスター』『モデルS』の2モデルの開発に参加したこともあるようだ。そのせいというわけではないだろうが、『エモーションEV』のデザインはどこかテスラに似た雰囲気もある。

ともあれ、スタイリングは「美しい」のひと言に尽きる。とりわけ特徴的なのは、開くとドア側面が蝶の羽のような形に見える「バタフライ4ドア」だ。同じ上部に向かって開くドアでも、縦方向に開くシザースドアと違い、バタフライドアは外側が斜め前方に、内側が下向きに開く。駐車スペースに苦労する日本ではなかなかお目にかかれないドアだ。

バッテリーはリチウムイオンではなく炭素素材コンデンサ。多くの先端技術を搭載

面白いのは、バッテリーに多くのEVに採用されるリチウムイオンではなく、炭素素材コンデンサのグラフェンスーパーキャパシタを採用したことだ(全個体充電池搭載モデルもラインナップ)。1回の充電あたりの最大走行距離は約640km。急速充電の「UltraCharger」に対応しており、9分間の充電で約205km分の容量までチャージ可能という。

EVパワートレインは最高出力700psを発生し、最高速度は260km/h。このスペックを見ると、テスラ『ロードスター』のようなEVスーパースポーツではなく、あくまでスポーティカーという位置づけなのだろう。全長5085×全幅2015×全高1465mmのボディは軽量のカーボンファイバーとアルミニウムで構成され、駆動方式は四輪駆動だ。

このほか、ADAS(先進運転支援システム)としてクアナジー製LIDARセンサーを5個搭載し、コネクテッドなどのEVスポーツカーらしいさまざまな先端技術を装備する。

『エモーションEV』の価格は1440万円。予約も開始され今年中にデリバリー予定

前述の通り、『エモーションEV』はグラフェンスーパーキャパシタ搭載モデルと全個体充電池搭載モデルの2モデルを設定。価格はグラフェンスーパーキャパシタ搭載モデルが1440万円(税別)、全個体充電池搭載モデルの価格は未定だ。すでに日本でもデロリアン・モーター・カンパニーを正規代理店に予約受付を開始しており、グラフェンスーパーキャパシタは今年中の納車を予定している。ただし、予約金として約24万円が必要だ。

最近では東京都心部などでテスラをよく見かけるようになり、もはやEVは現実的な乗り物になりつつある。たしかに価格は1000万円オーバーと高価。しかし、この美しいルックスなら、他人と違うクルマに乗りたいという欲求を満たすことができるのではないか。

Text by Kenzo Maya
Photo by (C) Fisker, Inc.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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