パガーニ『ウアイラ』を手に入れるために世界中の超富裕層やセレブが列をなしている
イタリアに本拠を置くパガーニは、1992年に創業した若いスーパーカーメーカーだ。創設者のオラチオ・パガーニ氏はランボルギーニ出身の技術者で、特に素材に関して先見の明を持ち、ランボルギーニ時代には『カウンタック エボルツィオーネ』のボディにカーボンファイバーを活用した。素材に対する強いこだわりはパガーニ創業後も受け継がれ、そこで生み出されたのが、1999年に初代モデルが発表された『ゾンダ』シリーズである。
アトリエと呼ばれるパガーニの工場では、一台一台が一貫してハンドメイドで製作され、車体を構成するパーツはすべてオラチオ氏が厳選し、造形にもこだわる。ここで生み出されるアートのようなスーパーカーは、ひとつとして同じものは存在しない。
2011年にデビューした『ウアイラ』は、パガーニによる現在の代表作のひとつだ。どちらかというと、『ゾンダ』のスタイリングはメカニカルな印象が強かったが、『ウアイラ』は曲線の美しさに磨きをかけ、ボディにもエンジンにも内装にも、まさに「世界最高」と呼ぶにふさわしい素材が用いられている。
パガーニには購入審査があるうえ、全台手作りのオーダーメイドのために、注文から納車まで2年以上も待たなければならず、世界中のセレブレティが『ウアイラ』を購入するために長い列をなしているという。
パガーニ『ウアイラ ロードスター』はバリエーションではなく事実上のニューモデル
ジュネーブモーターショーで公開された『ウアイラ ロードスター』は、『ウアイラ』からルーフを取り去っただけの単なる“バリエーション”ではない。大きな改良がいくつも施されており、むしろ“ニューモデル”に近い。
エクステリアでは、ボディ前部はクーペモデルを踏襲しているが、ルーフから後部にかけては独自のスタイリングが施されている。カーボンファイバーが浮き出たボディは、工業製品というより、まるで青く輝く美しい宝石のようだ。
最大の特徴は、カーボンファイバーとガラスで作られた着脱式のルーフだ(下の写真。ファブリック製のソフトトップも用意されている)。
通常のオープンモデルは、ルーフを取り払うと車体を安定させるために新たな設計を加え、その分重くなるが、『ウアイラ ロードスター』は強度のあるカーボンチタニウムモノコックを採用。その結果、車体重量はクーペモデルの1350kgを下回る1280kgに抑えられている。
オープンモデルはインテリアもエクステリアの一部となるが、高価な美術品や工芸品のようなパガーニならではの内装も、より美しさが増している。
世界最速クラスの『ウアイラ ロードスター』、限定100台はすでに正式発表前に完売
この軽量ボディのミッドシップに搭載されるパワートレインは、メルセデス・ベンツの高性能部門、メルセデスAMGが『ウアイラ ロードスター』のために改良を加えた珠玉の6.0L V12ツインターボエンジン。最高出力561kW(764hp)/6200rpmという強大なスペックは、クーペモデルを64hp上回る。トランスミッションはシングルクラッチの7速AMT。これも性能だけではなく軽さを意識した選択だろう。
「軽さ」プラス「大パワー」によって、『ウアイラ ロードスター』の0-60km/hの加速タイムは3秒を切るという。これはクーペモデルの3.0秒よりも若干速く、数多のスーパーカーのなかでも最速クラスのタイムだ。
『ウアイラ ロードスター』は100台限定で、価格は税別で228万ユーロ。日本円に換算すると、じつに約2億7000万円となる。しかし、パガーニが顧客として認めた世界各国の超富裕層やセレブレティにとって、もはや価格は問題ではないようだ。『ウアイラ ロードスター』はジュネーブでのワールドプレミア前に100台すべてが完売してしまったという。
お金があるだけでは手に入れることのできない、貴重かつ希少な、芸術品のようなスーパーカー。いつの日か、このクルマのステアリングを握ってみたい…。そう思わずにはいられない一台である。
Text by Tetsuya Abe