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第50回 | 大人のための最新自動車事情

2.7億円の芸術品――パガーニ ウアイラロードスター

フェラーリやランボルギーニは、たしかに高価なスーパーカーだが、支払い能力さえあれば誰でも手に入れることが可能でもある。しかし、世界にはひと握りの「選ばれし者」しかステアリングを握ることのできない、芸術品に近い貴重なクルマが存在する。そのひとつが、イタリアのスーパーカーメーカー、パガーニの『ウアイラ』シリーズだ。2017年3月、パガーニの最新作である『ウアイラ ロードスター』がジュネーブモーターショーで公開された。そのプライスタグは、2億7000万円である。

パガーニ『ウアイラ』を手に入れるために世界中の超富裕層やセレブが列をなしている

イタリアに本拠を置くパガーニは、1992年に創業した若いスーパーカーメーカーだ。創設者のオラチオ・パガーニ氏はランボルギーニ出身の技術者で、特に素材に関して先見の明を持ち、ランボルギーニ時代には『カウンタック エボルツィオーネ』のボディにカーボンファイバーを活用した。素材に対する強いこだわりはパガーニ創業後も受け継がれ、そこで生み出されたのが、1999年に初代モデルが発表された『ゾンダ』シリーズである。

アトリエと呼ばれるパガーニの工場では、一台一台が一貫してハンドメイドで製作され、車体を構成するパーツはすべてオラチオ氏が厳選し、造形にもこだわる。ここで生み出されるアートのようなスーパーカーは、ひとつとして同じものは存在しない。

2011年にデビューした『ウアイラ』は、パガーニによる現在の代表作のひとつだ。どちらかというと、『ゾンダ』のスタイリングはメカニカルな印象が強かったが、『ウアイラ』は曲線の美しさに磨きをかけ、ボディにもエンジンにも内装にも、まさに「世界最高」と呼ぶにふさわしい素材が用いられている。

パガーニには購入審査があるうえ、全台手作りのオーダーメイドのために、注文から納車まで2年以上も待たなければならず、世界中のセレブレティが『ウアイラ』を購入するために長い列をなしているという。

パガーニ『ウアイラ ロードスター』はバリエーションではなく事実上のニューモデル

ジュネーブモーターショーで公開された『ウアイラ ロードスター』は、『ウアイラ』からルーフを取り去っただけの単なる“バリエーション”ではない。大きな改良がいくつも施されており、むしろ“ニューモデル”に近い。

エクステリアでは、ボディ前部はクーペモデルを踏襲しているが、ルーフから後部にかけては独自のスタイリングが施されている。カーボンファイバーが浮き出たボディは、工業製品というより、まるで青く輝く美しい宝石のようだ。

最大の特徴は、カーボンファイバーとガラスで作られた着脱式のルーフだ(下の写真。ファブリック製のソフトトップも用意されている)。

通常のオープンモデルは、ルーフを取り払うと車体を安定させるために新たな設計を加え、その分重くなるが、『ウアイラ ロードスター』は強度のあるカーボンチタニウムモノコックを採用。その結果、車体重量はクーペモデルの1350kgを下回る1280kgに抑えられている。

オープンモデルはインテリアもエクステリアの一部となるが、高価な美術品や工芸品のようなパガーニならではの内装も、より美しさが増している。

世界最速クラスの『ウアイラ ロードスター』、限定100台はすでに正式発表前に完売

この軽量ボディのミッドシップに搭載されるパワートレインは、メルセデス・ベンツの高性能部門、メルセデスAMGが『ウアイラ ロードスター』のために改良を加えた珠玉の6.0L V12ツインターボエンジン。最高出力561kW(764hp)/6200rpmという強大なスペックは、クーペモデルを64hp上回る。トランスミッションはシングルクラッチの7速AMT。これも性能だけではなく軽さを意識した選択だろう。

「軽さ」プラス「大パワー」によって、『ウアイラ ロードスター』の0-60km/hの加速タイムは3秒を切るという。これはクーペモデルの3.0秒よりも若干速く、数多のスーパーカーのなかでも最速クラスのタイムだ。

『ウアイラ ロードスター』は100台限定で、価格は税別で228万ユーロ。日本円に換算すると、じつに約2億7000万円となる。しかし、パガーニが顧客として認めた世界各国の超富裕層やセレブレティにとって、もはや価格は問題ではないようだ。『ウアイラ ロードスター』はジュネーブでのワールドプレミア前に100台すべてが完売してしまったという。

お金があるだけでは手に入れることのできない、貴重かつ希少な、芸術品のようなスーパーカー。いつの日か、このクルマのステアリングを握ってみたい…。そう思わずにはいられない一台である。

Text by Tetsuya Abe

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第130回 | 大人のための最新自動車事情

エモーションEV──バタフライドアの電動スポーツカー

ポルシェ初の量産EVスポーツカーとして話題の『タイカン』は今年生産を開始し、驚異的なスペックを誇るテスラのスーパースポーツカー『ロードスター』も2020年の発売を予定している。EVスポーツカーは、いま旬を迎えつつあるカテゴリだ。そうしたなか、アメリカのフィスカーがCES 2019で初公開した『エモーションEV』が予約受付を開始した。バタフライ4ドアが特徴の高級フルEVスポーツは、いったいどんなクルマなのか。

BMW『Z8』やアストンマーチン『DB9』のデザイナーが手がけた高級スポーツEV

フィスカー『エモーションEV』は、ヘンリック・フィスカー氏の手によるエレガントなデザインの高級EVスポーツカーだ。フィスカー氏はデンマーク出身の著名なカーデザイナー。BMWに在籍していた当時に『Z8』、EVコンセプトモデルの『E1』などを手がけ、アストンマーチンでは『DB9』『DBS』『ヴァンテージ』のデザインを担当した。

その後、独立してメルセデス・ベンツやBMWをベースにしたコンプリートカーやハイブリッドエンジン搭載のオリジナルモデルを製作するが、じつは、テスラで『ロードスター』『モデルS』の2モデルの開発に参加したこともあるようだ。そのせいというわけではないだろうが、『エモーションEV』のデザインはどこかテスラに似た雰囲気もある。

ともあれ、スタイリングは「美しい」のひと言に尽きる。とりわけ特徴的なのは、開くとドア側面が蝶の羽のような形に見える「バタフライ4ドア」だ。同じ上部に向かって開くドアでも、縦方向に開くシザースドアと違い、バタフライドアは外側が斜め前方に、内側が下向きに開く。駐車スペースに苦労する日本ではなかなかお目にかかれないドアだ。

バッテリーはリチウムイオンではなく炭素素材コンデンサ。多くの先端技術を搭載

面白いのは、バッテリーに多くのEVに採用されるリチウムイオンではなく、炭素素材コンデンサのグラフェンスーパーキャパシタを採用したことだ(全個体充電池搭載モデルもラインナップ)。1回の充電あたりの最大走行距離は約640km。急速充電の「UltraCharger」に対応しており、9分間の充電で約205km分の容量までチャージ可能という。

EVパワートレインは最高出力700psを発生し、最高速度は260km/h。このスペックを見ると、テスラ『ロードスター』のようなEVスーパースポーツではなく、あくまでスポーティカーという位置づけなのだろう。全長5085×全幅2015×全高1465mmのボディは軽量のカーボンファイバーとアルミニウムで構成され、駆動方式は四輪駆動だ。

このほか、ADAS(先進運転支援システム)としてクアナジー製LIDARセンサーを5個搭載し、コネクテッドなどのEVスポーツカーらしいさまざまな先端技術を装備する。

『エモーションEV』の価格は1440万円。予約も開始され今年中にデリバリー予定

前述の通り、『エモーションEV』はグラフェンスーパーキャパシタ搭載モデルと全個体充電池搭載モデルの2モデルを設定。価格はグラフェンスーパーキャパシタ搭載モデルが1440万円(税別)、全個体充電池搭載モデルの価格は未定だ。すでに日本でもデロリアン・モーター・カンパニーを正規代理店に予約受付を開始しており、グラフェンスーパーキャパシタは今年中の納車を予定している。ただし、予約金として約24万円が必要だ。

最近では東京都心部などでテスラをよく見かけるようになり、もはやEVは現実的な乗り物になりつつある。たしかに価格は1000万円オーバーと高価。しかし、この美しいルックスなら、他人と違うクルマに乗りたいという欲求を満たすことができるのではないか。

Text by Kenzo Maya
Photo by (C) Fisker, Inc.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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