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第48回 | 大人のための最新自動車事情

レンジローバーヴェラール――驚くべき第四のモデル

レンジローバーには従来、フラッグシップの『レンジローバー』を筆頭に、『レンジローバー スポーツ』『レンジローバー イヴォーク』の3モデルがラインナップされてきた。それぞれ魅力のあるクルマだが、世界的に盛り上がる高級SUV市場において、これだけでは選択の幅が狭かったのも事実だろう。そこで、ランドローバーは2017年後半、新たに「4台目のレンジローバー」を市場に投入する。それが3月にロンドンのデザイン・ミュージアムでお披露目された『レンジローバー ヴェラール』だ。驚くほど洗練されたスタイリングを持つ、SUVファン注目のレンジローバー最新モデルである。

まるで削り出した卵のような『レンジローバー ヴェラール』の大胆なスタイリング

『ヴェラール』は、『スポーツ』と『イヴォーク』の中間に位置するモデルとして、まったくの白紙の状態から開発された。「ヴェラール」とは「隠す」という意味のラテン語。同時に、1969年に誕生した初代『レンジローバー』のプロトタイプのコードネームでもある。『ヴェラール』には、レンジローバーが築き上げたヘリテージに敬意を捧げ、「原点に立ち返る」との思いが込められているのだ。

大きな特徴のひとつは、どこかコンセプトカーのような雰囲気を漂わせる大胆なスタイリングだろう。これまでのレンジローバーは角を基調としたデザインだったが、『ヴェラール』にはそれとは対照的なデザインが採用されている。

フロントマスクは、グリルやフルマトリックスレーザーLEDヘッドライトがひとつの面にきれいに収められた。ブラックアウトされた低いフローティングルーフのラインは流れるようなラインを強調し、「デプロイアブルドアハンドル」の採用によってドアハンドルも内部に格納される。この徹底したフラッシュサーフェス化により、ボディの突起は極力抑えられ、なめらかな面と曲線を描くスタイリングは、まるで削り出した卵のようでもある。

エクステリアと同様にフラットで流麗な『レンジローバー ヴェラール』のインテリア

インテリアもシンプルで美しい仕上がりとなっている。シートカバーの素材には、高級織物メーカーのクヴァドラ社と共同開発したスエードクロス生地を採用。高級レザーと同等の耐久性を持たせつつ、新素材によってこれまでにない室内空間を演出している。もちろん、グレードによっては従来の高級レザーを用いたモデルも用意されている。

高級オーディオアンプのようなダッシュボードには、表面処理を施した黒檀(エボニー材)を使用。そこに配置されているスイッチ類は、大小3つのダイヤルのみというシンプルさだ。代わりに「TOUCH PRO DUO」という10インチのタッチスクリーンを2つ備え、車両のセッティングやインフォメーションシステム、空調コントロールなどの操作をすべてこのタッチスクリーンで行う。それにより、室内全体がフラットで流麗な造形となっているのも『ヴェラール』の特徴だ。

走りの面でも、先進技術がふんだんに盛り込まれている。「トルクベクタリング」「アダプティブダイナミクス」「テレインレスポンス」といった本格的SUVならではの機能に加え、安全機能も最新モデルにふさわしい充実ぶりだ。

自動緊急ブレーキ、車線逸脱警報、リアパーキングエイドなどのドライバーアシストシステムを標準装備するほか、オプションで居眠り注意機能の「ドライブバック」、これにアダプティブクルーズコントロール機能などを追加した「ドライブプロパック」がチョイス可能。狭い場所での駐車をアシストするパーキングパックも用意されており、都心部での取り回しをサポートしてくれる。

『ヴェラール』の価格は699万円から1500万円、欧州では2017年後半から発売予定

『ヴェラール』は、欧州では2017年後半から予約販売が開始され、実際の発売はまだ先になるものの、すでに日本市場向けモデルも発表されている。

日本導入で先行販売されるのは、フル装備の限定モデルで、約1500万円の「FIRST EDITION(ファーストエディション)」。これは『ヴェラール』シリーズでもハイエンドクラスの機種だが、699万円から始まるベーシックなグレードも順次導入されるようだ。エンジンは、280Kw(380ps)を発生する3.0 V6スーパーチャージャー、そして132Kw(180ps)の2.0Lディーゼルターボの2種類になる見込みだという。

レンジローバーが高級SUV市場に投入する「4番目のレンジローバー」。しかし、「『イヴォーク』以上、『スポーツ』未満」といっても、『ヴェラール』はけっして単なる中間的なモデルではない。ランドローバーのチーフデザインオフィサーであるジェリー・マクガバンは、「ブランドにModernity(近代的)という新しい要素をもたらすモデル」と表している。

この驚くべきスタイリングの最新モデルは、これからの高級SUV市場のランドマークを示す一台となることだろう。いまから日本上陸が愉しみである。

Text by Taichi Akasaka

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第130回 | 大人のための最新自動車事情

エモーションEV──バタフライドアの電動スポーツカー

ポルシェ初の量産EVスポーツカーとして話題の『タイカン』は今年生産を開始し、驚異的なスペックを誇るテスラのスーパースポーツカー『ロードスター』も2020年の発売を予定している。EVスポーツカーは、いま旬を迎えつつあるカテゴリだ。そうしたなか、アメリカのフィスカーがCES 2019で初公開した『エモーションEV』が予約受付を開始した。バタフライ4ドアが特徴の高級フルEVスポーツは、いったいどんなクルマなのか。

BMW『Z8』やアストンマーチン『DB9』のデザイナーが手がけた高級スポーツEV

フィスカー『エモーションEV』は、ヘンリック・フィスカー氏の手によるエレガントなデザインの高級EVスポーツカーだ。フィスカー氏はデンマーク出身の著名なカーデザイナー。BMWに在籍していた当時に『Z8』、EVコンセプトモデルの『E1』などを手がけ、アストンマーチンでは『DB9』『DBS』『ヴァンテージ』のデザインを担当した。

その後、独立してメルセデス・ベンツやBMWをベースにしたコンプリートカーやハイブリッドエンジン搭載のオリジナルモデルを製作するが、じつは、テスラで『ロードスター』『モデルS』の2モデルの開発に参加したこともあるようだ。そのせいというわけではないだろうが、『エモーションEV』のデザインはどこかテスラに似た雰囲気もある。

ともあれ、スタイリングは「美しい」のひと言に尽きる。とりわけ特徴的なのは、開くとドア側面が蝶の羽のような形に見える「バタフライ4ドア」だ。同じ上部に向かって開くドアでも、縦方向に開くシザースドアと違い、バタフライドアは外側が斜め前方に、内側が下向きに開く。駐車スペースに苦労する日本ではなかなかお目にかかれないドアだ。

バッテリーはリチウムイオンではなく炭素素材コンデンサ。多くの先端技術を搭載

面白いのは、バッテリーに多くのEVに採用されるリチウムイオンではなく、炭素素材コンデンサのグラフェンスーパーキャパシタを採用したことだ(全個体充電池搭載モデルもラインナップ)。1回の充電あたりの最大走行距離は約640km。急速充電の「UltraCharger」に対応しており、9分間の充電で約205km分の容量までチャージ可能という。

EVパワートレインは最高出力700psを発生し、最高速度は260km/h。このスペックを見ると、テスラ『ロードスター』のようなEVスーパースポーツではなく、あくまでスポーティカーという位置づけなのだろう。全長5085×全幅2015×全高1465mmのボディは軽量のカーボンファイバーとアルミニウムで構成され、駆動方式は四輪駆動だ。

このほか、ADAS(先進運転支援システム)としてクアナジー製LIDARセンサーを5個搭載し、コネクテッドなどのEVスポーツカーらしいさまざまな先端技術を装備する。

『エモーションEV』の価格は1440万円。予約も開始され今年中にデリバリー予定

前述の通り、『エモーションEV』はグラフェンスーパーキャパシタ搭載モデルと全個体充電池搭載モデルの2モデルを設定。価格はグラフェンスーパーキャパシタ搭載モデルが1440万円(税別)、全個体充電池搭載モデルの価格は未定だ。すでに日本でもデロリアン・モーター・カンパニーを正規代理店に予約受付を開始しており、グラフェンスーパーキャパシタは今年中の納車を予定している。ただし、予約金として約24万円が必要だ。

最近では東京都心部などでテスラをよく見かけるようになり、もはやEVは現実的な乗り物になりつつある。たしかに価格は1000万円オーバーと高価。しかし、この美しいルックスなら、他人と違うクルマに乗りたいという欲求を満たすことができるのではないか。

Text by Kenzo Maya
Photo by (C) Fisker, Inc.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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