まるで削り出した卵のような『レンジローバー ヴェラール』の大胆なスタイリング
『ヴェラール』は、『スポーツ』と『イヴォーク』の中間に位置するモデルとして、まったくの白紙の状態から開発された。「ヴェラール」とは「隠す」という意味のラテン語。同時に、1969年に誕生した初代『レンジローバー』のプロトタイプのコードネームでもある。『ヴェラール』には、レンジローバーが築き上げたヘリテージに敬意を捧げ、「原点に立ち返る」との思いが込められているのだ。
大きな特徴のひとつは、どこかコンセプトカーのような雰囲気を漂わせる大胆なスタイリングだろう。これまでのレンジローバーは角を基調としたデザインだったが、『ヴェラール』にはそれとは対照的なデザインが採用されている。
フロントマスクは、グリルやフルマトリックスレーザーLEDヘッドライトがひとつの面にきれいに収められた。ブラックアウトされた低いフローティングルーフのラインは流れるようなラインを強調し、「デプロイアブルドアハンドル」の採用によってドアハンドルも内部に格納される。この徹底したフラッシュサーフェス化により、ボディの突起は極力抑えられ、なめらかな面と曲線を描くスタイリングは、まるで削り出した卵のようでもある。
エクステリアと同様にフラットで流麗な『レンジローバー ヴェラール』のインテリア
インテリアもシンプルで美しい仕上がりとなっている。シートカバーの素材には、高級織物メーカーのクヴァドラ社と共同開発したスエードクロス生地を採用。高級レザーと同等の耐久性を持たせつつ、新素材によってこれまでにない室内空間を演出している。もちろん、グレードによっては従来の高級レザーを用いたモデルも用意されている。
高級オーディオアンプのようなダッシュボードには、表面処理を施した黒檀(エボニー材)を使用。そこに配置されているスイッチ類は、大小3つのダイヤルのみというシンプルさだ。代わりに「TOUCH PRO DUO」という10インチのタッチスクリーンを2つ備え、車両のセッティングやインフォメーションシステム、空調コントロールなどの操作をすべてこのタッチスクリーンで行う。それにより、室内全体がフラットで流麗な造形となっているのも『ヴェラール』の特徴だ。
走りの面でも、先進技術がふんだんに盛り込まれている。「トルクベクタリング」「アダプティブダイナミクス」「テレインレスポンス」といった本格的SUVならではの機能に加え、安全機能も最新モデルにふさわしい充実ぶりだ。
自動緊急ブレーキ、車線逸脱警報、リアパーキングエイドなどのドライバーアシストシステムを標準装備するほか、オプションで居眠り注意機能の「ドライブバック」、これにアダプティブクルーズコントロール機能などを追加した「ドライブプロパック」がチョイス可能。狭い場所での駐車をアシストするパーキングパックも用意されており、都心部での取り回しをサポートしてくれる。
『ヴェラール』の価格は699万円から1500万円、欧州では2017年後半から発売予定
『ヴェラール』は、欧州では2017年後半から予約販売が開始され、実際の発売はまだ先になるものの、すでに日本市場向けモデルも発表されている。
日本導入で先行販売されるのは、フル装備の限定モデルで、約1500万円の「FIRST EDITION(ファーストエディション)」。これは『ヴェラール』シリーズでもハイエンドクラスの機種だが、699万円から始まるベーシックなグレードも順次導入されるようだ。エンジンは、280Kw(380ps)を発生する3.0 V6スーパーチャージャー、そして132Kw(180ps)の2.0Lディーゼルターボの2種類になる見込みだという。
レンジローバーが高級SUV市場に投入する「4番目のレンジローバー」。しかし、「『イヴォーク』以上、『スポーツ』未満」といっても、『ヴェラール』はけっして単なる中間的なモデルではない。ランドローバーのチーフデザインオフィサーであるジェリー・マクガバンは、「ブランドにModernity(近代的)という新しい要素をもたらすモデル」と表している。
この驚くべきスタイリングの最新モデルは、これからの高級SUV市場のランドマークを示す一台となることだろう。いまから日本上陸が愉しみである。
Text by Taichi Akasaka