冠婚葬祭のお付き合いは、社会人の常識です。特に、お悔やみごとは、いつ直面するかわかりません。そこで、いざというときに備えて、「これだけ押さえれば大丈夫!」な知識やマナーを、現代礼法研究所の代表でマナーデザイナーの岩下宣子さんに教わりました。

  • 会社葬儀の作法を正しく理解していますか?(写真:マイナビニュース)

    会社葬儀の作法を正しく理解していますか?

今回は会社葬儀における作法を解説いただきます。

3つのお悔やみごと

――会社関係のお悔やみごとにはどんなものがありますか?

岩下さん「まず、故人の遺族が行う『お通夜』『葬儀』、喪主は遺族ですが会社として執り行う『社葬』があります。お通夜や葬儀は、自分が会社を代表して、取引先企業の葬儀に参加します。社葬は自社の会長や社長、大きな功績を残した人などが亡くなったときに行われます。

同僚や直属の上司など、故人と親しい関係なら『亡くなりました』という知らせを受けたら、その足でお通夜に駆けつけましょう。香典袋を買い、お金を入れます。『御霊前』と書いてあるものが無難です。お悔やみごとは突然のことなので、なるべく綺麗なお金を包みましょう。服装もそのままで大丈夫です。

金額は、職場の先輩や総務・経理担当者に尋ねるとよいでしょう。親しい仲なら最後のお別れなので、お通夜にも翌日の葬式も参列します。ただし、最近はお通夜だけのお付き合いとするのが慣例になっているようです」。

――社葬とはどのようなものですか?

岩下さん「社葬は、お別れの会、偲ぶ会などと呼ぶこともあります。僧侶などを呼んで行う宗教儀式でありながらも、会社としての行事でもあります」。

服装や香典・焼香の作法

岩下さん「宗教儀式としてとらえると、服装のマナー、香典と焼香の作法は押さえておきたいですね。服装は『平服でお越しください』と伝えられることがありますが、普段着という意味ではありません。礼装を省略化した『略礼装』です。

男性ならダークカラーのスーツ、女性は黒や濃いめのグレーのワンピース、ツーピースがよいでしょう。お世話になった会社の方にお別れを告げる儀式です。相手を尊重する気持ちがあれば、きちっとした服装で行くべき、ということはわかるはずです。

通常、香典を包みますが、直属の上司や先輩が金額や包み方などを教えてくれるはずです。焼香にはさまざまな宗派がありますが、社葬の場合は参列者が多いので、抹香をひとつまみ額あたりに押しいただき、それから香炉に静かに落とします」。

――取引先企業の葬儀に参加する場合のマナーを教えてください。

岩下さん「新入社員や若い方はおそらくまだ経験することはないでしょうが、『会社を代表して行く』ことになるので、それなりの覚悟がいります。あなたの振る舞いが会社そのものとして判断されてしまうわけです。だから、きちっとしないと会社に恥をかかせることになります。

服装は、正式な喪服を着ましょう。香典は、そのままではなくふくさに包んで持参します。ふくさは社会人必須アイテムと思って、安いものでいいのでこの機会に買いましょう。ふろしき型のものは、使い慣れないと受付で緊張してしまうので、若い方は香典袋を挟むだけの『挟みふくさ』で十分です。紫色のものは弔辞と慶事に使えるので便利です」。

ふくさの使い方

お悔やみごとの場合は、リバーシブルの台付きなら地味な暗色系の色が弔事用の面です(逆に赤系は慶事用)。

  • 赤は慶事用

    赤は慶事用

  • 名前は薄い墨で記載するのがマナー

    名前は薄い墨で記載するのがマナー

  • ふくさのたたみ方1

    ふくさのたたみ方1

  • ふくさのたたみ方2

    ふくさのたたみ方2

  • ふくさのたたみ方3

    ふくさのたたみ方3

ふくさには向きがあり、弔辞は左開きにして使います。具体的には、

(1)ふくさを右手で持ち、左手でふくさを開き香典袋を取り出す
(2)ふくさをたたみ、香典袋を乗せる
(3)相手から見て文字が正向きになるよう、反時計回りにして差し出す
(4)香典袋を取っていただく(ふくさは渡さない)

  • 香典袋を相手に取ってもらう

    香典袋を相手に取ってもらう

となります。

ふくさは持っていなくても、総務部などにある可能性もあります。また、上司や会社としての付き合いが多い総務部の社員など、作法に詳しい人が教えてくれることもあるそうです。

取材協力:岩下宣子(いわした・のりこ)

『現代礼法研究所』主宰。NPO法人マナー教育サポート協会理事長。全日本作法会の故・内田宗輝氏、小笠原流の故・小笠原清信氏のもとでマナーを学び、企業や商工会議所などでマナー指導・講演などを行う。著書に『図解 マナー以前の社会人常識』(講談社)など。