社会人になったら、大人として冠婚葬祭のおつき合いをこなさなければなりません。いざというときに慌てないための基礎知識と最低限のマナーを学んでおきたいですね。

  • 冠婚葬祭の知識を正しく理解していますか?(写真:マイナビニュース)

    冠婚葬祭の知識を正しく理解していますか?

現代礼法研究所の代表で、マナーデザイナーの岩下宣子さんより、基本的な心構えを紹介いただきました。

冠婚葬祭の心構え

――まず、冠婚葬祭の心構えを教えてください。

岩下さん「そもそも冠婚葬祭の意味はおわかりでしょうか。婚は結婚、葬は葬式。では、冠と祭は? 冠は昔の元服(げんぷく)で成人式、祭は先祖の霊を祭る行事でお盆や法事のこと。会社生活では、婚と葬のおつき合いが重要となってきます。

さらに、葬は人生最後のお別れの式。故人とはもう二度と会えなくなるので、結婚式と葬式がもしも重なったら、結婚式を断って葬式に行くのが正解です」。

  • 現代礼法研究所 マナーデザイナー 岩下宣子さん

    現代礼法研究所 マナーデザイナー 岩下宣子さん

――冠婚葬祭のマナーには決まりが多くて覚えられるか不安です。

岩下さん「決まりごとを丸暗記するのではなく、マナーの意味がわかると、覚えておかなくても応用が利くんですよ。なぜマナーが必要かといえば、思いやりの気持ちを表すため。

『私が相手だったら今どんなお気持ちなんだろう? どんなことをしてあげたら喜ぶんだろう?』と、立場を入れ替えて考えれば、マナーの基本を大きく外れることはないはずです。

その延長で、葬式や結婚式のルールを考えるとよいでしょう。一人ひとりのお顔が違うように、常にこちらの行動やそこに秘めた真心が正しく伝わり、相手に喜んでもらえるとは限らないのです」。

これは、人によって考え方が違うから。そのため、本当のマナーはまず相手の性格をよく見抜くことから始まると岩下さんは言います。

岩下さん「10人いたら10人の思いやりやマナー、100人いたら100人の思いやりやマナーがあるんだと思う。そんな積み重ねを踏まえ、先人達が今に伝えている生活の知恵がマナーだと考えています」。

結婚式のマナー

――そうしたことを踏まえ、結婚式と葬儀のマナーの初歩を教えてください。

岩下さん「最近、結婚式当日にご祝儀を持っていくのが通例となっています。あれは、本当は迷惑なこととされています。ご祝儀は基本的に現金なので、当日のお金の管理が大変。日程はあらかじめ決まっているのだから、職場の方なら前もって渡す機会はあります。

結婚式を催すにはお金がかかるし、事前にお渡ししたほうが親切ではないですか? 葬式は突然だからその日に持っていくものですが、結婚式なら遅くても1週間前までにお渡ししたいですね。『本来ならご自宅におうかがいするべきところ、ここで失礼します。おめでとう』と言うのが、最も理想的な方法です」。

葬儀のマナー

岩下さん「葬式にはお通夜と葬儀がありますが、最近はお通夜だけに行って、葬儀に参加しないことが多いですね。だから、世間の認識では、お通夜イコール葬式になっています。そもそも、お通夜は親しい仲でなければ行く必要のないものでした。

お通夜の意味を考えてみましょう。人が亡くなると、体の細胞が活動を止めていき、最後が心臓の周りの細胞といわれています。体の細胞が完全に活動を停止するのに24時間かかるそうです。遺族としては『生き返るかもしれない』という望みを持って過ごせる24時間なのです。それがお通夜。

もしもお通夜に参加するなら、通夜後の『通夜ぶるまい』は亡くなった方と過ごす最後の食事なので、少しでも箸をつけましょう」。

取材協力:岩下宣子(いわした・のりこ)

『現代礼法研究所』主宰。NPO法人マナー教育サポート協会理事長。全日本作法会の故・内田宗輝氏、小笠原流の故・小笠原清信氏のもとでマナーを学び、企業や商工会議所などでマナー指導・講演などを行う。著書に『図解 マナー以前の社会人常識』(講談社)など。