editeur

検索
サービス終了のお知らせ
第7回 | ロールスロイスの最新車デザイン・性能情報をお届け

テーマは航海、ロールスロイス“最後のファントム”

世界でもっとも高級なクルマを作るロールスロイスにおいて、長らくその頂点に君臨してきた『ファントム』。新車価格は1台5000万円以上、世界中のVIPやセレブに愛用されるなど、まさにトップ・オブ・トップというべき超高級サルーンである。しかし、第7世代が登場してから13年が過ぎた2016年、ロールスロイスは「年内にファントムの生産を終了する」と発表。そして2017年1月、ついに“最後の1台”となるファントムがラインオフした。それが「航海」をテーマにしたこの特別仕様のファントムである。

6000万円のEWBをベースに芸術品のような内外装に仕上げた特別仕様のファントム

最後の1台のベースとなったのは、通常モデルでも車両本体価格に約6000万円のプライスタグがつき、標準モデルより250mmほど長い全長約6mのボディを持つEWB(エクステンデッド・ロングホイールベース)のファントムだ。

ボディカラーは、「ベルベットブルー」と呼ばれる限りなく黒に近い濃紺。ロールスロイスの象徴である「スピリット・オブ・エクスタシー」はシルバー製で、ホワイトのピンストライプとクラシカルな印象を与えるホワイトリボンタイヤが組み合わされる。ロングボディの側面を走り、しかし、ゆがみもムラもなく描かれた見事なピンストライプは、英国グッドウッドに本社を構えるロールスロイスのビスポーク部門の職人による“手描き”だという。

海を思い起こさせるトーン・オン・トーン配色の刺繍をあしらい、「パウダーブルー」のレザーが鮮やかなインテリアの床には、毛足の長いカーペット。これは、生後約半年のメリノ種の子羊から刈り取った高級なラムズウールを手作業で起毛させたものだ。

とりわけインテリアで目を奪われるのは、英国車の伝統でもあるウッドパネル。ダッシュボードにある1930年代の「オーシャンライナー(スケジュールに従い大洋を渡る船)」は、ペイントなどではなく、熟練の木工職人による本物のデコレーションだ。額装して豪華な客間に飾られていても不思議ではないその仕上がりは、もはや自動車のインテリアというよりアート作品に近い。インパネ中央に装備された24時間表示のアナログ時計も、オーシャンライナーに飾られていた時計を意識している。

2018年にも登場する!? 開発が進められている次期モデル「第8世代のファントム」

「航海」をテーマにした、この特別かつ最後の1台となったファントムは、とあるロールスロイスコレクターのスペシャルオーダーによって作られたものだという。

ただし、ロールスロイスがいつ注文を受け、どれくらいの期間をかけて作ったのか、なにも明らかにされていない。どこの国に納車されるのかも不明だ。そうしたことを踏まえると、この最後のファントムの実車に目にする可能性はゼロに等しいだろう。

しかし、その代わり、早ければ2018年中にも次世代のファントムを目にすることができるかもしれない。13年にわたって第7世代モデルを作り続けた生産ラインは今後、次に導入される「第8世代のファントム」の舞台となる。開発が進められている次世代ファントムは、風格のあるスタイリングやV型12気筒エンジンはそのままに、まったく新しいアルミニウムアーキテクチャーを採用して2018年に発表されるともいわれている。

世界最高のラグジュアリーカーとして一時代を築いたファントムの新たな「航海」は、すでに始まっているのである。

Text by Muneyoshi Kitani
ピックアップ
第13回 | ロールスロイスの最新車デザイン・性能情報をお届け

跳ね馬色のロールス・ロイス──オーナーはGoogle副社長

家とクルマは成功を象徴するものだ。特にIT企業のトップには、数千万円から億単位の高級車を収集する自動車コレクターもめずらしくない。ZOZOTOWNの前澤友作氏はそのひとり。ブガッティ『ヴェイロン』、フェラーリ『エンツォ・フェラーリ』などを所有し、パガーニ『ゾンダ』にも乗っていたこともある。シリコンバレーでいえば、もっとも有名なのはグーグルのベンジャミン・スロス副社長だろう。8月の終わりにも、鮮やかなフェラーリ色のロールス・ロイス『ドーン ブラックバッジ』が納車されて話題となった。

グーグルのスロス副社長はフェラーリ『FXX K』を所有する有名な自動車コレクター

グーグルのベンジャミン・スロス副社長は、世界の自動車メディア関係者の間で広く知られた人物である。高価で希少なクルマを購入してニュースを提供してくれるからだ。

スーパーカーや高級車を何台も所有し、2012年5月に発生したイタリア北部地震では、被災者を支援するためにフェラーリが開催したチャリティオークションでサーキット専用車の『599XX EVO』を落札。ハンマープライスはおよそ1億4000万円だった。

とりわけ驚かされたのは3年前だ。なんと妻の誕生日にフェラーリ『FXX K』をプレゼントしたのである。『FXX K』もハイブリッドスーパーカーの『ラ・フェラーリ』をベースに開発されたサーキット専用車で、ひと握りの上顧客に向けて生産される。しかし、いくら希少なクルマとはいえ、妻の誕生日にレーシングカーを贈る人物はめったにいない。

それだけに、スロス副社長は4シーターのオープンカーに乗るときもありきたりなモデルでは満足できなかったようだ。彼がオーダーしたのは特別にカスタマイズしたロールス・ロイス『ドーン ブラックバッジ』。ボディは鮮やかイエローで塗装されている。

副社長いわく「北イタリアのモデナの旗の色をしたロールス・ロイスが見たかった」

ロールス・ロイス『ドーン ブラックバッジ』は、4シーターのオープンモデル『ドーン』の内外装にブラックのドレスアップを施したエッジーなスペシャルモデル。6.6LのV12ツインターボエンジンは専用チューニングによってパワーアップされている。

スロス副社長に納車されたのは、この『ドーン ブラックバッジ』にさらに特別なカスタマイズを施したビスポークモデルだ。最大の特徴は、「スーパーフレア」と名付けられた鮮やかなイエローのボディカラー。ボンネットやフロントグリルは、それとは対称的な濃いネイビーブルーで仕上げられた。こちらの名称は「パイクスピークブルー」だ。

じつは、スロス副社長が所有する『599XX EVO』や妻にプレゼントした『FXX K』も同じカラーコンビネーションをまとっている。つまり、これはフェラーリカラーの『ドーン ブラックバッジ』なのである。スロス副社長いわく、「所有するレーシングカーは北イタリアのモデナの旗の色。同じカラーのロールス・ロイスを見たかった」という。

もちろん内装も同じカラーだ。シートやトリムはネイビブルーのレザーで、ステアリングホイールやシートのステッチなどにイエローが差し色として添えられている。

フェラーリ色の『ドーン ブラックバッジ』は、スロス副社長の妻の日常の足だった

ちなみに、この『ドーン ブラックバッジ』はもともとスロス副社長の妻が2014年から「日常の足」として使っていたクルマで、すでに13000マイルを走っているそうだ。

しかし残念ながら、スロス副社長自身がどんなクルマを普段遣いしているのかについては情報がない。もしかすると、マクラーレン『P1』などのスーパーカーに乗ってシリコンバレーのマウンテンビューにあるグーグル本社に通勤しているのだろうか?

それにしても、自動運転技術で大手自動車メーカーを圧倒するグーグルの副社長がスーパーカーや高級車のコレクターというのも、なんとも面白い組み合わせである。

Text by Kenzo Maya
Photo by (C) Rolls-Royce Motor Cars
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

ピックアップ

editeur

検索