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第36回 | メルセデス・ベンツの最新車デザイン・性能情報をお届け

成功者が憧れる逸品「V12メルセデス」の魅力とは?

「V12」とは、V型12気筒エンジンを示す略称だ。もう少し詳しくいえば、シリンダーがV字型に配置され、片バンクに6気筒ずつ、計12のシリンダーを持つエンジンのこと。かつてはF1マシンにも採用されるなど、理想のエンジンレイアウトのひとつとされている。しかし、ダウンサイジングやハイブリッド化が自動車業界のトレンドである現在、もはやV12が「無用の長物」となりつつあるのも事実。そんななかで、排気量や車重が必要以上にかさみ、生産コストもかかるV12にあえてこだわり続けているのがメルセデス・ベンツだ。そして、この「V12メルセデス」は成功者たちの憧れの的ともなっている。メルセデス・ベンツはなぜV12を作り続けるのか、「V12メルセデス」はなぜ、成功者の所有欲をかき立てるのだろうか。

フェラーリやランボルギーニとは異なる意味を持つメルセデス・ベンツのV12エンジン

メルセデス・ベンツでは現在、『S600ロング』『メルセデスAMG S65ロング』『メルセデスAMG S65クーペ』『メルセデスAMG S65 カブリオレ』『メルセデスマイバッハ S600』『メルセデスマイバッハ S650カブリオレ』、さらにスポーツロードスターの『メルセデスAMG SL65』、オフローダーの『メルセデスAMG G65』の8モデルにV12を採用している。

メルセデス・ベンツの量産車で初めてV12を搭載したのは、1991年に登場したW140型の『600SEL』。市販モデル用に新たに開発されたこのエンジンは、排気量6.0L、最高出力395psを発揮し、パワーや吹け上がりの鋭さはもちろん、マルチシリンダーならではのスムーズな走りが大きな特徴だった。

じつは、メルセデスは1939年と1940年にV12を作って以降、モータースポーツから離れ、V12も封印していたのだが、『600SEL』はそのゴージャスなイメージも相まって、世界中のVIPやセレブを虜にして大ヒット。そして、V12はスポーツモデルの『SLクラス』にも搭載され、以降、メルセデス・ベンツの頂点を極めるブランドの象徴となっていく。

「V12メルセデスが持つ世界観は、フェラーリやランボルギーニのそれとは別物です。スーパーカーではなく、ラグジュアリーモデルにV12を採用していることに大きな意味があるのです」。そう語るのは、メルセデス・ベンツの修理・レストアにおいて国内随一の技術を持つ“メルセデスマイスター”で、神奈川県平塚市の「サカモトエンジニアリング」の代表をつとめる坂本賢次氏である。

ロールスロイスと違い、成功した者なら誰でも持つ権利のある「V12メルセデス」

坂本氏は、メルセデス・ベンツがV12を作り続ける理由について「ビジネスだけではなく、自動車メーカーとしての『こだわり』でもあるのでしょう。V12は、メルセデスにとって一種のアイデンティティなんですよ」と話す。

とはいえ、ビジネス面においても、メルセデス・ベンツにとってV12は不可欠だ。ライバルのBMWはすでにV12から撤退し、トヨタのフラッグシップである日本の至宝『センチュリー』にもV12モデルの生産終了が噂されている。それだけに、メルセデス・ベンツの立ち位置を考えれば、乗用車最大格のエンジンを作り続けることは強力なアピールポイントとなるからである。

「ロールスロイスやベントレーも12気筒エンジンを生産していますが、これは一般ユーザーにとってハードルが高いモデルです。特に、ロールスロイスは努力の成果によって買える類いのクルマではありません。その点、メルセデスは高級車ブランドでありながら、一般ユーザーにも門戸が広い。メルセデスというのは、成功をつかんだ人なら誰でも手に入れられる権利のあるクルマ。そこに意義があると思うのです」

メルセデス・ベンツが作るV型12気筒エンジンは、シリンダーヘッドにしても、シリンダーブロックにしても、非常にラグジュアリーで、デザイン性が高いものだという。

「たとえるなら、メルセデスのV12は宝石のようなもの。性能もさることながら、魅せる要素も十分に備えているエンジンです」

V12メルセデスは人生のようなもの、一生付き合い続けることのできる「大人の逸品」

しかし、いくら美しいといっても、V12メルセデスも機械であることに変わりはない。もし所有するなら、それなりの心構えが必要となる。

「日本の環境に合わせて設計されたエンジンではないので、ストップ&ゴーを繰り返せばクランク軸などに負担がかかり、低速で回し続けていればオイルも十分に行き届きません。そのため、日本の環境に合わせた整備が必要となるのです」

V12は部品の点数が多く、オーバーホールを行えばそれだけで最低80〜100万円の整備費用がかかる。安価な国産車なら買えてしまう金額だが、「その整備費用を捻出できない人には、V12メルセデスはおすすめできません。中途半端な整備をしても、かえってコストがかさむだけです」と坂本氏。

坂本氏の顧客には、家族や従業員たちに苦労をかけながら、なんとか成功をつかみ、「自分へのご褒美」としてV12メルセデスを手に入れた経営者がいるという。

「その方は、クルマを毎朝きれいに磨き上げ、ボンネットを開けて、V12エンジンを眺めるそうです。そうすると、これまで自分がたどってきた道のりが脳裏に浮かび上がり、新たな気持ちになれるのだとおっしゃっていました」

V12メルセデスは、一生付き合い続けることのできる、まさに「大人のための逸品」だ。コストはかかっても、その魅力は8万km、10万kmと走り続けることでようやく知ることができる。いわば、人生のように、旅を重ねるほどに味わいが深くなるクルマなのである。

Text by Tetsuya Abe
取材協力
有限会社サカモトエンジニアリング
TEL:0463-53-3001
FAX:0463-53-8417
MAIL:seg@df7.so-net.ne.jp
住所:〒254-0012 神奈川県平塚市大神1729-1
営業時間:9時〜20時(平日)、9時〜18時(休日)
定休日:毎週月曜・年末年始(月曜が祝日の場合は営業、その場合翌日火曜が休)

大手輸入車ディーラーで長年工場長を務めた坂本賢次氏が代表を務めるメルセデス・ベンツ専門店。長年のノウハウと、ドイツ本国にも認められた技術力で、メルセデスをベストコンデョンに維持し、どんなメルセデスの悩みも必ず解決に導く。
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第74回 | メルセデス・ベンツの最新車デザイン・性能情報をお届け

メルセデスAMG A35サルーン──今度の入門機はセダン

メルセデスAMG『A35 4マチック』は、昨年10月にAMGのボトムレンジに加わったホットハッチだ。その上位には、やはりハッチバックの『A45 4マチック』、そしてセダンやクーペの『C43』がある。しかし、メルセデス・ベンツはAMGのエントリーモデルにもっと多くの選択肢を用意すべきと考えたのだろう。3月に発表されたのは、『A35 4マチック サルーン』という名のニューモデル。そう、スポーツセダンの『A35』である。

セダン仕様の『A35』のライバル車はBMW『M240i』やアウディ『S3サルーン』

『Aクラス セダン』は、昨年9月に歴代の『Aクラス』で初となる4ドアセダンとしてデビューした。『A35 4マチック サルーン』は、ひと言でいうと、その高性能バージョンである。ライバルはBMW『M240i』やアウディ『S3サルーン』といったところだろう。

パワーユニットはハッチバックの『A35 4マチック』と同じ2.0L直列4気筒直噴ガソリンターボエンジン。最高出力306ps、最大トルク400Nm、最高速度250km/h(リミッター作動)のスペックはハッチバックと変わらないが、0-100km/hの加速タイムは4.8秒とハッチバックにわずかに遅れをとる。とはいえ、その差は0.1秒なので、ほとんど同等の動力性能といっていい。トランスミッションは7速DCTの「AMGスピードシフトDCT 7G」。駆動方式は車名にあるとおり、AMGパフォーマンス4マチックによる四輪駆動だ。

むろん、サスペンションやブレーキはAMGがチューンした専用のもの。AMGダイナミックセレクトにより、シーンに合わせて「コンフォート」「スポーツ」「スポーツプラス」「インディビジュアル」「スリッパリー」の5つのドライビングモードが選択できる。「スポーツ」「スポーツプラス」では、奏でるエンジンサウンドもより迫力を増すという。

ハッチバックの『A35 4マチック』と同じように見えて微妙に異なるエクステリア

エクステリアは、フロントマスクだけを見るとハッチバックと共通のものと感じる。ひと目でAMGモデルとわかるフロントグリルのツインルーバー、バンパーのフラップ付きエアインテークなどは同じデザインだ。しかし、よく観察すれば、ハッチバックに採用されている特徴的なバンパー横のカナードがセダンでは取り除かれていることがわかる。

なによりも、ハッチバックとの大きな違いは、セダンボディを得たことによってトランクルームを設けたことだ。リアセクションは、トヨタで言うところの「リフトバック」スタイルで、トランク内には幅950mm、奥行462mm、最大容量420Lのラゲッジスペースを確保した。リアディフューザーはハッチバックに比べるとやや落ち着いたデザインとなり、その左右の下からは、AMGモデルらしく2本のエグゾーストパイプが顔を覗かせる。

コクピットも、写真を見るかぎりハッチバックと共通だ。ブラックを基調とし、そこへボディと同色のラインがアクセントカラーとして添えられる。アルティコの人工革張りシート、AMGスポーツステアリングを装備し、当然ながら、AIを用いたデジタル・パーソナル・アシスタントを備える最新のインフォテインメントシステム「MBUX」も搭載する。

サルーン仕様の『A35』はAMG世界への入口。新たな顧客にアピールできるモデル

『A35 4マチック サルーン』の日本導入時期は未定。なにしろ、今年1月からハッチバックのヨーロッパ販売が始まったばかりなのである。そのヨーロッパでは、今年後半からセダンが販売される予定で、日本国内へはその後に上陸することになるのではないか。

「スポーツサルーンは、メルセデスAMGの原点であり、コンパクトセダンのA35はAMGの世界への入口となり、新たな顧客にアピールできる魅力的なモデルとなることでしょう」とは、メルセデスAMGのトビアス・ムアースCEOのコメントだ。先行するライバルのBMW『M240i』やアウディ『S3サルーン』にどこまで迫れるか、要注目である。

Text by Kenzo Maya
Photo by (C) Daimler AG
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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