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第16回 | フェラーリの最新車デザイン・性能情報をお届け

日本上陸50周年を記念した特別なフェラーリ『J50』

フェラーリは近年、重要なグローバルイベントや節目のアニバーサリーセレモニーを開催するときに、原則10台以下の特別限定モデルを発表するのが恒例になりつつある。この少数限定のスペシャルモデルは「フォーリ セリエ」と呼ばれ、これまでに、歴代フェラーリのデザインにかかわった名門カロッツェリア、ピニンファリーナの故セルジオ・ピニンファリーナ名誉会長を偲んだ『セルジオ』(2013年、限定6台)、フェラーリの米国導入60周年を記念した『F60アメリカ』(2015年、10台)などが製作されてきた。2016年12月、東京・六本木の国立新美術館で行われたフェラーリ日本進出50周年記念式典で世界初公開されたのも、このフォーリ セリエに連なる1台だ。それが、日本専用の特別限定モデル『J50』である。

日本市場に向けて開発された初の「フェラーリ フォーリ セリエ」となった『J50』

フェラーリが日本に初めて正規輸入されたのは1966年。当時のフラグシップモデルである『275GTB』が公道車両として形式認定され、ナンバープレートを付与されたのが始まりだったとされている。

それから50年が経った2016年、フェラーリは「Ferrari 50 Year Anniversary in Japan」と題し、フェラーリ・レイシング・デイズをはじめ、北海道ラリー、大阪リバーサイドパーティ、インターナショナル・カヴァルケードなど、日本各地でさまざまな記念イベントを開催。2016年の師走には、このアニバーサリーイヤーを締めくくるファイナルイベントとして、六本木の国立新美術館に300人を超えるVIPゲストが招かれ、フェラーリ日本進出50周年記念式典が盛大に行われた。

そして、このセレモニーのハイライトとしてワールドプレミアされたのが、日本市場に向けて製作された初の「フォーリ セリエ」であり、日本だけで限定10台が販売されるビスポークモデルの『J50』である。この車名はもちろん、ジャパンの「J」と50周年の「50」を組み合わせたものだ。

ひと目でフェラーリとわかるデザインながら、どのフェラーリにも似ていない『J50』

『J50』は、3.9L V8ターボエンジンをミッドシップに搭載する『488スパイダー』をベースにしているものの、ボディは完全な新設計で、まったく独自のスタイリングが与えられている。

デザインの基本アプローチは「極めて低いフォルムのロードスター」。モチーフとなったのは、フェラーリのV8ミッドシップ2シーターの原点というべき『308』シリーズのタルガトップ仕様『308GTS』である。タルガトップとは、Bピラーが固定されたデタッチャブルルーフのことで、『J50』のルーフも脱着可能な2分割式カーボンルーフを備えたタルガトップとなっている。

フロントからサイドにかけて入るブラックのラインや、スリムなフルLEDヘッドライトによって実現したフラットなノーズも、やはり308GTSを想起させるものだ。308GTSがモチーフに採用されたのは、フェラーリの本格的な日本国内輸入が始まった時期の代表的なモデルが308シリーズであり、1970年代から1980年代にかけて日本で人気を集めたフェラーリだからだろう。

このほか、1980年代のF1グランプリで活躍したマシンをはじめ、歴代のフェラーリのレーシングカーに影響を受けた部分もあるという。ひと目でフェラーリとわかるスタイリングでありながら、過去のどのフェラーリとも似ていないという意味で、極めて個性的かつ革新的なスタイリングとなっている。

フェラーリ『J50』の価格は3億円以上、世界初公開された時点で10台すべてが完売

エンジンも特別仕様だ。『J50』に搭載されるのは、2016年のインターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤーで総合優勝に輝いた『488シリーズ』の3.9L V8エンジンをさらにチューンナップし、出力を690cvまで高めた特別バージョン。この心臓部を透明のポリカーボネートエンジンカバーで覆い、エンジンそのものを“魅せて”いるのもフェラーリらしい演出である。

さらに、20インチアルミホイールも『J50』のために製作された専用ホイール。日本上陸50周年を記念したフォーリ セリエにふさわしく、すべてにおいて特別仕様となっている。

ちなみに、『J50』は1台1台をオーナーのリクエストに合わせてテーラーメイドで仕上げるビスポークモデル。記念式典で公開されたモデルは、ボディカラーに3レイヤー・レッドのスペシャル塗装を纏い、インテリアはブラックを基調にレッドを配したファインレザー&アルカンターラ仕上げだ。

テーラーメイドゆえに仕様によって価格が変わってくるが、フォーリ セリエの価格相場は3億円から3億6000万円ともいわれている。しかし、驚くべきことに、『J50』は12月の記念式典で実車が世界初公開されたにもかかわらず、この時点で限定10台すべてが完売していたという。フェラーリに上顧客と認められ、優先的に購入権を与えられた日本の超富裕層が、フェラーリから送られてきた『J50』のスケッチ画像を見ただけで購入を決めたのだ。

日本国内でしか販売されない、わずか10台限定の特別なフェラーリ。世界中のフェラーリファンが羨む超希少な限定モデルを手に入れる幸運を得たのがどのようなセレブレティなのかはわからないが、近い将来、日本のどこかで『J50』が走る姿を目にすることがあるかもしれない。

Text by Tetsuya Abe

Photo by (C)Ferrari S.p.A.

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第29回 | フェラーリの最新車デザイン・性能情報をお届け

フェラーリP80/C──特注のサーキット専用スーパーカー

世界に一台だけのフェラーリを作るのは、コレクターにとって究極の夢だろう。それを叶えてくれるのが「フェラーリ・ワンオフ・プログラム」だ。元映画監督の自動車愛好家、ジェームス・グリッケンハウスが製作を依頼した『P4/5ピニンファリーナ』に始まり、フェラーリクラブ・ジャパン元会長がオーダーした『SP1』など、現在までに十数台のワンオフ・フェラーリが誕生している。そして先日、また一台、フェラリスタ垂涎のワンオフモデルが完成した。車名は『P80/C』。約4年の月日をかけて開発されたサーキット専用車だ。

依頼主はフェラーリ・コレクター。60年代のプロトタイプレーシングカーをオマージュ

『P80/C』をオーダーしたのは、フェラーリのエンスージアストの家に生まれ、自身も跳ね馬に対する深い知識と見識をもつフェラーリ・コレクターだ。オーナーの素性はそれ以外明かされていない。しかし、並外れた財力をもつ人物であることは間違いないだろう。

オーナーからの注文内容は、概ねこういうものだ。1966年の『330P3』、1967年の『330P4』、そして1966年の『ディーノ206 S』。これらのフェラーリから着想を得た現代版のスポーツプロトタイプを創造すること。つまり、伝説のプロトタイプレーシングカーをオマージュした、最先端で究極の性能をもったサーキット専用車を作るということである。

開発を担当したのは、チーフのフラビオ・マンゾーニ率いるフェラーリ・スタイリングセンターと、エンジニアリングとエアロダイナミクス部門からなるチームだ。彼らが互いに協力し、オーナーと価値観を共有することで、世界に一台だけのフェラーリを作り上げた。製作期間は、じつに約4年間。これはワンオフ・フェラーリのなかで最長だという。

ベースモデルはレース車両の『488GT3』。自由な発想で作られたサーキット専用車

『P80/C』はガレージで鑑賞することを目的としたクルマではない。前述したとおり、往年のプロトタイプレーシングカーをモチーフにしたサーキット専用車だ。そのため、ヘッドライドは取り払われ、サーキット走行に必要なテールランプもリアセクションと一体化した独特の形状となっている。フェラーリの市販車は通常、丸型のテールランプをもつ。

ベースとなったのは、レース用車両である『488GT3』。エアロダイナミクスはベースモデルを踏襲しているが、『488GT3』のように「グループGT3」のレギュレーションに準拠する必要がないので、車体の各所に自由な発想が盛り込まれている。たとえば、なんとも大胆なリアの形状は2017年シーズンのF1マシンに採用された「T字ウイング」にヒントを得たもの。フロントリップスポイラーやリアのディフューザーなども『P80/C』のために専用設計された。それらにより、『488GT3』より空力効率がおよそ5%向上している。

エンジンフードのアルミ製ルーバーと凹型のリアウィンドウは、『330P3』『330P4』『ディーノ206 S』といったプロトタイプレーシングカーへのオマージュ。これらはひと目で『P80/C』とわかる特徴的なエクステリアだ。筋肉質なフェンダーが目を引くボディはカーボンファイバーで、フェラーリらしく「Rosso Vero」と呼ばれる赤で塗装された。

まるで戦闘機のコクピット。ロールケージ、6点式シートベルトを備えるインテリア

戦闘機のコクピットを思わせる室内にはロールケージが組み込まれ、インパネやステアリングには『488GT3』の面影を色濃く残している。しかし、ダッシュボードのサイド部分は専用デザインだ。バケットシートは鮮やかなブルー。素材については発表されていないが、アルカンターラと思われる。2座にはそれぞれ6点式シートベルトが装備された。

たったひとりのフェラーリ・コレクターのための作られたモデルなので、エンジンパワーなどのスペックは公表されていない。むろん価格もしかり。実車を目にする機会があるかどうかも定かではないが、どこかのコンクール・デレガンスでお披露目される可能性はある。いずれにせよ、間違いなくフェラーリの歴史に名を残す特別な一台となることだろう。

Text by Kenzo Maya
Photo by (C) Ferrari S.p.A.
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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