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第28回 | 次はどこ行く?プレミアムな大人の旅行

おもてなしの真髄──にっぽん丸の極上ホスピタリティ

国内随一の豪華客船にっぽん丸。その歴史は、商船三井の前身である大阪商船時代の昭和初期にまでさかのぼる。ブラジルやアルゼンチンといった新天地を求めた日本人移民を乗せた貨客船。そこで磨かれたのはラグジュアリーホテルや老舗高級旅館さながらのホスピタリティだ。旅ライター熊山准がお届けする「にっぽん丸ラグジュアリークルーズガイド」。最終回は、にっぽん丸のパーサーが語る「おもてなしの真髄」をお送りする。

あくまで“人対人”が基本…にっぽん丸のホスピタリティにマニュアルは存在しない

伝統的ホテルがそうであるように、にっぽん丸では乗客にも相応のマナーと教養が求められる。その代表的なものがドレスコードだ。日中は比較的ラフな装いも許容されるが、個室以外のパブリックスペースにおいて男性は夕方以降、襟付きシャツが基本。カクテルパーティーが催される夜にはセミフォーマルで臨む必要がある。

そう聞くと堅苦しさを感じるかもしれない。しかし乗客自ら身だしなみから立ち振る舞いまで配慮しながら一流のもてなしを受けることこそ、本物の大人にしか味わうことができないラグジュアリーな旅の境地といえるだろう。

「クルーズ船では24時間、お客様とスタッフが一緒に過ごしているわけですから、私どももプライベートなしでおもてなししています」

そう話すのはにっぽん丸で長年サービス全般を統括する主席旅客係、すなわちパーサーを務めるゼネラルマネージャーの星野啓太氏だ。では具体的に、にっぽん丸のホスピタリティとはどのようなものだろうか。

「恥ずかしながら具体的なマニュアルは特にないんですよ(笑)。『優しく親切に』というのは徹底していますが、あくまで属人主義です。今、スタッフの大半はフィリピン人なんですが、彼らのサービスは控え目で、少し昔の日本人のような心地良さがある。また、乗客約400名に対してスタッフが約200名ですから目も行き届きます。それが結果としてきめ細やかなサービスにつながっているのかもしれません」

にっぽん丸のきめ細やかなおもてなしのルーツは新天地を目指したかつての移民船

マニュアルは存在しないとしながらも、星野氏の言葉にはスタッフへの信頼とホスピタリティの質に対する自負が感じられた。それは氏が聞かせてくれたサービスに関するこんなエピソードからもうかがえる。

「あるお客様がダイニングにお越しにならなかったので、違和感を抱いたスタッフがお部屋を訪ねたところ、体調を崩されていたのです。それで部屋までお粥をお持ちしたということがありました。毎日顔を合わせているからこそ、お客様の体調にも敏感になれる。お客様との関係でたとえると、にっぽん丸はホテルというより旅館に近い距離感だと思います」

こうしたきめ細やかなサービスのルーツにあるのが、新天地を目指す日本人移民を乗せたかつての移民船だ。

「サンフランシスコからブラジルやアルゼンチンに向かう長期航路なので、乗客とスタッフが3カ月間も一緒に暮らすわけです。しかもほとんどのお客様は見ず知らずの異国の地へと向かう片道切符。せめて船上では、日本にいるような安心感とくつろぎを味わってもらえるよう、家族同然にもてなしたい…。それがどこかほっとする、にっぽん丸のサービスに繋がっているのかもしれません」

豪華客船ビギナーがにっぽん丸を愉しむための秘訣は「過度に期待しすぎないこと」

エディトゥールの読者には、まだ豪華客船の旅を体験したことがない人もいるに違いない。そうしたビギナーがにっぽん丸を愉しむための秘訣はあるのだろうか。

「あまり過度な期待をお持ちにならないことでしょうか。けっして安くはない料金ですので、『超一流のサービスを受けて当然』『料理がおいしくて当たり前』という気持ちになるのも無理はありません。しかし、やはりそこは船で、地上のホテルとは異なる部分も多くあります。船という暮らしのなかでの贅沢を味わいながら、それぞれの港や島の違いを感じ取り、旅そのものと向き合う。それが愉しむ秘訣かもしれません」

事実、こわばった表情で乗り込んでくる乗客も少なくはないという。

「でも7、8割のお客様は笑顔でお帰りになるんですよ。それはきっと、スタッフの誰かがどこかで、何か良いサービスをしたんだろうなって思います。実際にリピーターの方も多くて、約7割ほどいらっしゃいますね」

とはいえ常連客の多い船内ではビギナーが肩身の狭い思いをしがちなのも確かだろう。そんなときにもにっぽん丸ならではのホスピタリティが発揮される。

「あえて常連のお客様を特別扱いしないようにしています。実際、ベテランのお客様は遊び慣れているというか、大人の社交ができる方々ばかりなので、むしろスタッフを育てていただいたりもします。そういう方は寄港地でも、港をあてもなく歩いて地元の方とおしゃべりしてこられたり、お客様同士と交流されたりと、余裕をもって旅を愉しまれていますね」

働き盛りで多忙な40代男性にうってつけの「注目ショートクルーズ」はこれだ!

にっぽん丸は時間的に余裕のある60代以上の乗客が比較的多いが、ショートクルーズには30代、40代の乗客も少なくないという。

筆者が今回体験した5日間(前半)の「飛んでクルーズ九州〜九州一周〜」だけではなく、同様のショートクルーズは随時運行されている。今後の注目ショートクルーズは──

2018年6月 広島発着喜界島クルーズ(3日間)
2018年6月 富山発着隠岐クルーズ(3日間)
2018年8月・9月 飛んでクルーズ北海道(4日間)

などがある。もちろん東京や横浜といった都市部発着のプランも様々だ。仕事に明け暮れている40代の読者諸兄も2018年はひと休みして、一段上質な大人の船旅を愉しんでみてはいかがだろうか。

Text&Photography by Jun Kumayama

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第32回 | 次はどこ行く?プレミアムな大人の旅行

SUPヨガからニシタチまで──夏の宮崎を味わい尽くす

夏の宮崎は、LCCを賢く利用すれば贅沢なリゾート地となりうる穴場だ。訪れたいスポットや食の愉しみも多岐にわたる。たとえば、宮崎県南部のパワースポット、さまざまなマリンアクティビティが用意されたビーチパーク、宮崎の美しい海と滋味あふれるグルメ、そして日本最大級のスナック数を誇る歓楽街・ニシタチ。深淵なる宴遊の世を旅ライターの熊山准がお届けする。

「奇岩怪礁、紺碧の海、波状岩に砕ける白波」と謳われる日南市の鵜戸神宮

ある人が言っていた。「旅の始まりはその土地土地の神様にご挨拶をしてから」と。なるほど、朝一番に旅先の氏神に参るのは、その土地に「お邪魔します」と断りを入れ、同時に旅の安全を祈願するのにもってこいだ。そもそも神社を訪れるなら午前がよい。

県南の日南市にある鵜戸神宮は、ローカルからは「鵜戸さん」と呼ばれ親しまれる。「奇岩怪礁、紺碧の海、波状岩に砕ける白波」と謳われる通り、日向灘すれすれのエクストリームなロケーションに建つ古社である。

宮崎ならでは空と海の深い青色に、門や社の鮮やかな朱色のコントラストが美しい境内で、ひときわ目を引くのが洞窟内に鎮座する御本殿。その神秘的なたたずまいから、県内有数のパワースポットとしても知られている。

また、岩のくぼみに向かって玉を投げ入れる「運玉」もなかなか楽しい。旅の運勢を占ってみるのも一興だろう(筆者は外したが)。

青島でハンモックに揺られ、話題のSUPヨガやマリンアクティビティを愉しむ

鵜戸神宮からクルマで日南海岸を北上すると、波状に続く「鬼の洗濯板」が現れる。迷スポット好きなら、その途中にある、世界で唯一、イースター島公に特別許可を得て完全復刻したモアイ像が建ち並ぶ「サンメッセ日南」も訪れておきたい。

宮崎市郊外まで戻ってきたら、県内有数のサーフスポットにある青島ビーチパークでランチにしよう。ビーチパークは春から秋までの期間営業(2018年9月30日まで)で、エスニックフード、カリフォルニアロール、ハンバーガーといった真夏のビーチにぴったりの飲食店が点在し、海を見ながら食することができる。

食後はハンモックに揺られてのんびり波の音に耳を傾けるもよし、陸続きになった青島の青島神社を散策するもよし。また、近くの青島アクティビティセンターでSUPヨガなどのマリンアクティビティを愉しむもよしだ。

宮崎随一のグルメスポットでもあるニシタチで味わう宮崎牛の絶品ステーキ

青島で存分に海を堪能したら、宮崎市街でクルマを返却し、人口10万人あたり日本一のスナック数をほこる歓楽街・ニシタチへ。とはいえ、同エリアはスナックだけでなく宮崎随一のグルメスポットでもあり、数多の名店がひしめき合う。

宮崎牛を味わうのならステーキの名店「アパス」がおすすめだ。宮崎牛特選ロース100gのコース(5000円)は、口のなかでほろほろとトロける甘みたっぷりのサシが身上。デザートのチョコがけトーストもオーダーしておきたい。

また、宮崎といえば鶏肉も外せない。プロ野球・読売巨人軍の宮崎キャンプシーズンになると行列ができる「丸万焼鳥本店」は、豪快にあぶる炭火焼が絶品。あえて地鶏にこだわらず、生後1年以上の成鳥の旨味を追求した「もも焼き」(1200円)は、弾けるような食感と熟成された香りが癖になる。

肉のはしごの後はうどんで締めたい。宮崎うどんは最近流行りの柔らか系で、濃厚ないりこ出汁につける釜揚げうどんスタイルが定番。市民に愛される「釜揚げうどん 織田薪(おだまき)」は、これからスナック街へと繰り出す客から、スナック帰りの酔客まで、夜遅くまで賑わう。事実どんなに満腹であってもするすると胃に入ってしまうのだ。

女性が一緒なら、宮崎特産のマンゴーをふんだんに使ったシメパフェもおすすめである。ニシタチの中心部にある「フルーツ大野」では県産マンゴーをあしらったパフェをはじめ、数々のフルーツパフェがラインナップ。男性も思わず笑みがこぼれてしまうことだろう。

もちろんスナック巡りが楽しいのは言わずもがな。とりわけニシタチは良心的で、3000円もあれば飲み放題というのが通例となっている。1万円あれば数軒をハシゴできてしまうとか。これだけ安ければ、スナックを愉しむだけのために宮崎まで飛んでしまいたくなる。

LCCのジェットスターを賢く利用すれば、成田〜宮崎間が片道5990円の安さ

そんな贅沢な旅も、賢くLCCを利用してこそ。今回利用したジェットスターなら成田〜宮崎間が片道5990円(公式サイト及びモバイルアプリからの購入がもっとも安い)と、フルサービスキャリアに比べると高コストパフォーマンス。もっとも、運賃は空席連動型で、予約は早ければ早いほど、また平日ほど安くなる可能性が高くなるので、早めの予約をおすすめしたい。

あわせて現在、宮崎市では県外からの観光客を対象に先着1000名で宿泊費が1人1滞在2000円/泊オフになるキャンペーンを実施中だ。7月初旬現在、まだまだ余裕があるとのことなので、LCCとあわせて上手に利用し、宮崎の夜を愉しんでいただきたい。

Text&Photography by Jun Kumayama
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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