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【東京】兜太俳句 語り継ぐ 市民グループが三鷹で講演会
昨年2月に亡くなった現代俳句の第一人者で、本紙連載「平和の俳句」(2015~17年)の選者を務めた金子兜太(とうた)さんの魅力に迫る講演会「国民文芸 俳句の力~金子兜太の世界」が2日、三鷹市公会堂であった。武蔵野市を中心に読書推進活動を続けている市民グループ「出版NPO『本をたのしもう会』」が催した。 (花井勝規) 都内外の俳句愛好家ら約六百人が参加。金子さんの晩年の姿を追ったドキュメンタリー映画「天地悠々 兜太・俳句の一本道」(河邑厚徳監督)が上映された後、金子さんからの信頼が厚かった俳人で、俳誌「藍生(あおい)」主宰の黒田杏子さんと、金子さんの弟子でフランス出身の俳人マブソン青眼(せいがん)さんが対談形式で魅力や思い出を語り合った。 マブソンさんは金子さんが亡くなった直後に長野県上田市で建立された「俳句弾圧不忘の碑」を紹介。戦時中の一九四一年、反戦の句を詠んだ俳人らが治安維持法違反の疑いで摘発された昭和俳句弾圧事件を忘れないための碑で、碑文は金子さんが揮毫(きごう)した。 「海外では、金子先生にノーベル文学賞をという声があった。今の日本は金子兜太なしにやっていけるのかとの声も多い」とマブソンさんは危機感を訴えた。 黒田さんは金子さんが書いた「アベ政治を許さない」の文字を掲げ「反戦を貫いた人だった」と振り返った。埼玉県秩父地方で育った金子さんが亡くなる前に作った九句の中にある「河より掛け声さすらいの終(おわ)るその日」も紹介。松尾芭蕉の「旅に病んで夢は枯れ野をかけめぐる」と比較しながら「河は産土(うぶすな)である荒川で、掛け声とは秩父音頭。さすらいはご自分の人生を詠んでいる」と解説。「私たちはどう生きるかという問いをのこして天上に逝った」と締めくくった。
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