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【社説】

日米地位協定 不平等を放置するな

 日米地位協定の不条理がより鮮明になった。沖縄県が二年かけて調査した欧州各国との比較では、米軍の活動に国内法を原則適用しないのは日本だけである。政府は抜本改定に本気で取り組むべきだ。

 沖縄県は昨年と今年、米軍駐留を受け入れているドイツ、イタリア、ベルギー、英国に職員を派遣し、地位協定の内容や運用実態を調べた。四月に発表した報告書の核心は、米軍に国内法が原則として適用されない日本と、自国の法律や規則を厳格に適用している各国との差だ。

 北大西洋条約機構(NATO)本部があるベルギーは、憲法で外国軍の活動を基本的に制限。外国軍機の飛行には自国軍より厳しい規制を設けている。英国は国内法の駐留軍法を米軍に適用。英側が米軍基地の占有権を持ち、英軍司令官を置くことを定めている。

 ドイツ、イタリアも含め各国が米軍基地の管理権を確保し、訓練や演習に主体的に関与している状況が明らかになった。

 翻って日本の立場は正反対だ。外務省はホームページの解説で、外国軍の活動について「一般に…派遣国と受け入れ国の間で個別の取り決めがない限り、受け入れ国の法令は適用されない」と言い切る。根拠として以前は「一般国際法上」と説明していたが、具体的な「国際法」を示せず削除した。

 沖縄県の調査について、河野太郎外相は国会答弁や記者会見で「相互防衛義務を負うNATOの国と日本で地位協定が異なることはあり得る」「一部を取り出しての比較は意味がない」などと述べている。「違いがあって当然」との開き直りに聞こえる。

 沖縄では一九七二年の本土復帰以降平均して年一件以上の米軍機墜落事故、月一件以上の米軍絡みの凶悪事件が起きている。訓練の規制や事件事故の捜査が日本の手で十分に行えず、再発防止につながらない。本土でも米軍が管制する広大な横田空域の返還が進まないといった問題が山積しており、全国知事会は昨夏、抜本見直しを提言した。地方議会でも同趣旨の意見書可決が相次ぐ。

 ドイツ、イタリアは、日本と同じ敗戦国ながら、米軍機事故への世論の反発を背に改定を実現した。日本政府も、国際常識から乖離(かいり)した不平等協定を締結から五十九年も放置していいはずがない。

 沖縄県は報告書で、協定見直しは「日本の主権についてどう考えるかという極めて国民的な問題」と訴えた。真摯(しんし)に受け止めたい。

 

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