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BD BOX

Last-modified: 2016-10-26 (水) 22:44:20

アントニオ「いいか。いつも通りにな。なるべく、いつも通りに接するんだぞ。いいな」
キース「私は別に、いつもどおりだよ?」
ネイサン「アンタだけよ。勝手にソワソワしてさ」
イワン「そうですよ。バイソンさんのせいで、こっちまで変に緊張してきちゃいます」
アントニオ「そ……そうか?」
宝鈴「それにしても……まだかなぁ」
ネイサン「入り時間過ぎてるし、そろそろ来る頃だとは思うけど」
アントニオ「やっぱ、緊張してくるな……」
宝鈴「けど、楽屋ってお菓子いっぱいあるからいいよね」
スタッフ「バーナビー・ブルックスJr.さん、入られまーす!」
アントニオ「いいか。わかったな。なるべく自然に、あの一件には、あまりふれないように。デリケートだからな」
(ドアの開く音)
バーナビー「すみません、遅くなりまして。来る途中に眼鏡を落としてしまって、探していたら、こんな時間に」
アントニオ「お、おお……そうか」
ネイサン「へ、へえ……」
バーナビー「あ……あれ。どうかしました……?」
キース「ふっ……元気そうだね。バーナビー君」
宝鈴「うん! よかった」
バーナビー「え?」
キース「いや、実は……君が元気でいるかどうかを、みんなで話していてね。少し、心配していたところなんだ」
バーナビー「……そうだったんですか。それで」
ネイサン「そうなのよ。久し振りだからって、ロックバイソンが変な気回してさァ」
バーナビー「ご心配をお掛けしてしまって、すみません。僕はこのとおり元気ですよ。大丈夫です。有難うございます」
アントニオ「そっか。てことはおまえ、もうマーベリックの件にも、気持ちのケリは付いたってことだな」
イワン「あ! バイソンさん、そこふれます!?」
ネイサン「アンタ散々自分でそこふれるなって!」
アントニオ「ん? いや本人が大丈夫って言うんだから、別にいいだろ」
バーナビー「ええ。お気遣いなく。ロックバイソンさんの言うとおり、あの件はもう過去の話です」
ネイサン「そ、そう……」
キース「そうか」
アントニオ「ま、ヒーローに復帰したってことは、そういうことだとは思ったんだけどな。一応よ」
ネイサン「なに。珍しくまともじゃないの、アンタ」
宝鈴「(咀嚼音)ところでバーナビー。タイガーは一緒じゃなかったの?」
バーナビー「え? 虎徹さん?」
スタッフ「リハーサル、入りまーす!」


(パトカーの音)
虎徹「ったく。逃げ足だけ無駄に早い奴だ。結局ブロックス地区まで来ちまった。……お? スティールハンマー像じゃねえか! トニーの奴、元気してっかなあ。……ってそんなこと言ってる場合じゃねえな。そろそろ収録始まっちまうぞ!」


(時刻を告げる音)
カリーナ「私のトークはちょっぴりコールド。あなたのお耳を完全ホールド! 久し振りに逃げられないから、覚悟しなさいよ? というわけで。大復活! OBCレディオステーションプレゼンツ、ブルーローズの、ミッドナイトアイスクリーム、リターンズ! (音楽)改めましてこんばんは。ヒーロー回のスーパーアイドル、氷の女王こと、ブルーローズです。て皆さん、お久し振りー! 元気にしてましたか? スポンサー様のご厚意もありまして、ミッドナイトアイスクリーム、今夜限りの完全復活です! そして、今夜はなんと! 素敵なゲストに来てもらってます!」
バーナビー「お久し振りです。バーナビー・ブルックスJr.です」
キース「久し振り、実に久し振り! スカイハイだ!」
アントニオ「どうも! ロックバイソンです!」
イワン「シュシュシュシュー! おり――」
カリーナ「やっぱり一旦止めて。(音楽止まる)どうしてあんたたちも来てるの?!」
アントニオ「ん?」
キース「ハッハハー! それは、呼ばれたからだ!」
カリーナ「スカイハイはね」
キース「え?」
カリーナ「そもそも今回の企画って、トップヒーロー座談会みたいな話で動いてたはずなんだけど?」
イワン「ええ……実はそういうお話があるということを、スカイハイさんから、バイソンさんと僕が伺って」
キース「折紙君が是非参加したいと言うから、私が声を掛けたのさ!」
イワン「へ?!」
アントニオ「そう! コイツがどうしてもって言うもんで、じゃあ俺も付き合うか、ってな」
イワン「ええ?! 僕は、別に、何も……!」
カリーナ「あ、ああ……。大体わかったわ……」
アントニオ「で、俺らはそういう理由だけど、おまえらは何で来たんだ?」
ネイサン「あら、知らないの? この枠ってヘリオス一社提供なの。改変時期のスペシャル番組として復活企画したのアタシだし。何だったら二部から彼を――」
カリーナ「う、うわあああ!」
宝鈴「そうだったの?」
ネイサン「そ。オーナー特権よぉ?」
宝鈴「だからボクも誘ってくれたんだね」
ネイサン「それよりも、……アタシたちまでいるとアンタに何か問題でもあーるのかーしらん?」
カリーナ「ええ?! ッ別に全然、そんなんじゃないんだけどさ……」
アントニオ「ん?」
宝鈴「どうかした?」
イワン「あ、そっか。僕ら六人揃っても、肝心のあの人がいないから――ッ」
(凍る音)
アントニオ「オイ! なんか、折紙が凍ったぞ!」
キース「いけない! ファイヤーエンブレム君!」
ネイサン「ホント世話焼けるわねぇ」
(燃える音)


(PDAの環境設定音)
虎徹「……だっ。こんなときに通信できねえとはよ……。斎藤さんにこっそり見といてもらうんだった……。おまけに一文無しだし。こらもう、ラジオ間に合わねえかもしんねえな……。って、……ん? え、あれ? あの信号待ちの車、あれ乗ってんのって、あれ……もしかして……!」
(車をノックする音)
虎徹「あのー……すんません?」
ユーリ「ん?」


カリーナ「ブルーローズの! ミッドナイトアイスクリーム! リターンズ!」
スタッフ「はい、CM入りましたー!」
キース「いやあ、ラジオもなかなか、楽しいものだね!」
アントニオ「な、ブルーローズ。あの、面白コーナーやってくれよ。あの、罵倒するやつ!」
カリーナ「ハァ? 何それ。そんなのないけど」
イワン「え! ありましたよ」
カリーナ「そうだっけ? 憶えてない」
ネイサン「あれあれ。何でそんなに不機嫌なのかしら」
カリーナ「別に。そんなことないけど」
ネイサン「ふっ」
カリーナ「なに」
バーナビー「大丈夫ですって」
カリーナ「大丈夫って、何の話よ」
バーナビー「昨日訊いたら、ちゃんと憶えていましたからね。必ず来ますよ」


虎徹「いやーあ、まさか管理監殿が通りかかるとは、おかげで助かりました!」
ユーリ「勘違いしないでください。一部ヒーローの公務にあなたが呼ばれたという事情があったから。それだけです」
虎徹「ハハ……」
(PDA呼び出し音)
ユーリ「出動要請ですか」
虎徹「あ、ええ……。ま、よくある窃盗事件ですけど」
ユーリ「この辺りは細かい事件がひっきりなしに起きますからね」
虎徹「車を……止めてもらえますか」
ユーリ「行かれるんですね」
虎徹「ええ勿論。……で。申し訳ないんですがー、ブルーローズには管理官から巧く伝えておいてもらえませんか」
ユーリ「わかりました」


宝鈴「(咀嚼音)タイガーおっそいね。何してるんだろ」
ネイサン「もう次で最後のコーナーよ」
アントニオ「結局間に合わなそうだな」
イワン「次のコーナーは、何ですか」
宝鈴「台本には、マイスイートヒーローズメモリー……って書いてある」
キース「このコーナーは自分だけのオンリーワンヒーローとの出逢い、つまり、淡い恋の、甘い想い出を語ってもらうというコーナーです。だ、そうだ!」
ネイサン「へーえ。淡い恋ねぇ……」
カリーナ「何よ!」
スタッフ「では、CM明け本番参りまーす」


カリーナ「ブルーローズの、ミッドナイトアイスクリーム、リターンズ。続いてのコーナーは、これ! マイスイートヒーローズメモリー」
扉が開く音
虎徹「お待たせしました! タイガー参上ー!」
カリーナ「ええ?!」
虎徹「サップラーイズ! ……て、あれ……? ああああれ?」
バーナビー「まったく……あなたって人は……」
虎徹「え?」
バーナビー「本番中にそんなのってありますか」
虎徹「あーいや……サプライズになるから、そのまま入れって指示されたんだけども、……ああれ? そんなでもなかった……?」
キース「ッハハー! 私は、驚いたよ!」
宝鈴「ボクもボクも!」
アントニオ「ま、来ないよりはマシか」
ネイサン「しかもいーいタイミングで来たかもねェ」
虎徹「ん?」
カリーナ「はいはい再開再開! ブルーローズの、ミッドナイトアイスクリーム、リターンズ! さあ、続いてのコーナーは、これ! マイスイートヒーローズメモリー! 大人気だったこのコーナーも復活。ということで、このコーナーからは、ワイルドタイガーにもゲストとして参加してもらいます!」
虎徹「どもー! ワイルドタイガーでーす」
カリーナ「さて。今回のテーマは、夢。というわけで、リスナーの皆さんは夢に出てくる人を――」
虎徹「え、え、あ、夢? 夢っつった今?」
バーナビー「本番中ですよ……」
虎徹「え、え、あ? すまん……」
カリーナ「ううん、タイガー。確かに今夢って言ったけど、何? 何か想い出でもあるの?」
虎徹「あ、いやー……夢っつったらな? 昨日ー、おまえが夢に出てきたことを憶い出してさ」
カリーナ「え? 私が?」
虎徹「おう! 昨日ー……だっけな。あうんうん、昨日だったな」
カリーナ「え……ええー……? そうなんだね……」
ネイサン「アナタ……早く台本の続き読みなさい。夢に出てくる人が何なのか」
キース「夢に出てくる人を好きになってしまうことって、ありますか?」
ネイサン「アンタが読んでどーすんの!」
キース「え? 何か、マズかったかい?」
イワン「あれ、ブルーローズ殿、顔真っ赤でござ――」
(凍った音)
アントニオ「オイ! 折紙が、また凍ったぞ! ファイヤーエンブレム!」
ネイサン「もう!」
虎徹「フハハハハ! 何だか、相変わらず面白ェなあおまえら」
宝鈴「ねえねえタイガー。で、ブルーローズは、どんな風に夢に出てきたの?」
虎徹「え? あいやー、それが傑作なんだよ! ブルーローズが急に俺んちまでやってきてさ」
カリーナ「え、ちょとちょっとちょ待っ」
ネイサン「うんうん。で?」
虎徹「俺が玄関を開けるなりさ。トイレ貸してー、トイレ貸してー、って大声で叫びだしてさ!」
カリーナ「ハァ?!」
虎徹「俺爆笑しそうになったんだけど、あまりに切羽詰まった顔で言ってくるから、俺も真顔じゃないとマズいか――」
(凍った音)
アントニオ「おおどした! また凍ったぞ! おい、大丈夫か、虎徹!」
ネイサン「ホントデリカシーのない男ね!」
アントニオ「オイ、しっかりしろ! 虎徹! 虎徹ぅ!」
バーナビー「あ、ロックバイソンさん!」
アントニオ「どうした、バーナビー」
バーナビー「ラジオで本名言っちゃマズいですよ!」
アントニオ「あ」
カリーナ「……どっちにしろ録り直しよ!」


カリーナ「ブルーローズの! ミッドナイトアイスクリーム、リターンズ!」


虎徹「いやーあ、終わった終わったー」
バーナビー「久し振りの皆さんとの絡みは、やっぱりどこかほっとしますね」
虎徹「だな。気のいい連中だよ」
バーナビー「それにしても、ブロックス地区まで走って追いかけるなんて、虎徹さんも相変わらずですね」
虎徹「や、バニー。復帰はいいけど、二部ヒーローも色々と大変なんだぞ? ……て、そういやおまえ……何で復帰したんだ?」
バーナビー「……ッ、それはやはり……ファンにちやほやされたいからですよ」
虎徹「っだ!」
バーナビー「冗談ですよ。……何でしょうね。ただ、僕のヒーロー人生はこれからが本番だろうな、と思っていますよ」
虎徹「……だな」
バーナビー「ところで虎徹さん。急な出動要請の一件は、結局どうなったんですか。どう考えても間に合わないですよね」
虎徹「おうおうおう。あいやそれがな?」
バーナビー「誤報だったとか?」
虎徹「いや。行くには行って、コソ泥も獲っ捕まえて警察にも引き渡したんだよ。んで、もう間に合わないし、そのまま帰ろうかなーって思ってたら、そこにコイツのカタパルトが通りかかったんだよ」
アントニオ「え? 俺のカタパルトが?」


整備スタッフ「はい。ちょうど点検整理に行ってきたところだったのですが、帰路はこちらのルートからという指示がありまして」
虎徹「え? そうなの?」
整備スタッフ「どうされますか」
虎徹「で、ど、ど……どうされますかってー……」
整備スタッフ「許可は下りています、ワイルドタイガー」
虎徹「え、あ、そう? ん……まぁ……じゃ……いっちょ……ワイルドに吠えるかぁ!」
(カタパルトを飛び出す音)
虎徹「うわああああああああああああああああああああああああ」


虎徹「ちょうど能力が戻ったところだったしなぁ。一発バーンて打ち上げてもらって、サクッと戻ってきたってわけだ」
アントニオ「お、おまえ……そんな乱暴な……」
虎徹「へへへへ。おまえいつもやってたんだろ? 結構大変な思いしてたんだなぁ。やってみてわかったよ」
アントニオ「へへ……。だろ?」
バーナビー「でもさすがですね。管理官」
虎徹「なー? 多分、手を回してくれたと思うんだけどな」
バーナビー「そうですね」
虎徹「ブルーローズのラジオあるって言っといたから、管理官、聴いてくれっかもな」
アントニオ「聴くわけねえだろ」
虎徹「あ、やっぱり? ハハハハハ……だよな」


カリーナ「ブルーローズの! ミッドナイトアイスクリーム、リターンズ!」
ユーリ「ふっ……まさか公務がこんなくだらんものとはな。くだらない。実にくだらない。ふっ。ヒーローが夢、だと。笑止。ワイルドタイガー、そもそも夢とは現実世界のメタファー、暗喩に過ぎない。故に、低レベルで下劣な人間ほど、夢というものを見る。またそして語りたがる。ワイルドタイガー。相変わらず低俗でくだらぬ男だ。翻って――」