「流線形のフォルム」と「アルミ材によるボディ」を持つ高級キャンピングトレーラー
日本におけるキャンピングカーは、保管の難しさや交通事情から、ワゴン車を改造した「改造キャンパー」と呼ばれるモデルがほとんどだ。牽引が必要なトレーラータイプは一般的とはいえない。しかし、キャンプブームと高級品志向の高まりなどから、近年はより快適でゴージャズなキャンピングトレーラーに注目が集まっている。なかでも、独特のルックスとワンランク上の居住性を持つ「エアストリーム」は、機能面だけではなく、その歴史に心擽られる人も多い。
「少年時代に見た幌馬車をモチーフにして、キャンピングトレーラーが作りたい」と、さまざまな設計図を書いていた創業者のワーリー・バイアム。彼が1931年に完成させた1号機はすぐに売れ、後発モデルも作るたびに捌けていった。
丁寧にハンドメイドされるトレーラーは、さらなる快適さを追求して試行錯誤を繰り返し、もともと設計経験のあった飛行機の要素まで取り入れることとなる。飛行機は、丈夫なのは当然として、重量や空気抵抗など、多くの条件を満たさなければならない。バイアムは、限られた空間で快適に過ごすヒントを当時の先端技術に見出し、アメリカ文化お馴染みのアイテムであるキャンピングトレーラーに反映させたのだ。その結果が、「流線形のフォルム」と「アルミ材によるボディ」。コストがかかっても最良のものを提供したいと考えたバイアムの精神とともに、今も継承されているアイデンティティである。
五つ星ホテル並みの豪華内装を備えた最上位モデル、エアストリーム「クラシック」
第二次大戦後、多くのエアストリームが放置状態にあったが、バイアムはオーナーたちに呼びかけてキャラバン隊を組織。エアストリームとの旅に出た。以降、庭で埃を被っていたキャンピングトレーラーたちは、毎年メキシコやカナダへ出かけるようになり、再び輝き始める。これが同車オーナー・クラブ設立のきっかけであり、現在では世界各国に総勢1万7000人ほどのメンバーが存在する。
このキャラバンで培った経験からユーザー目線の改良と工夫を施し、1980年代に入るとエアストリームはさらに進化。トレーラー自体の安定性はもちろん、牽引車の運転操作性まで計算し、内部レイアウトも使い勝手を考えたうえで手作りの家具が設置している。ともすれば、自宅以上に快適な空間かもしれない。
バリエーション豊富なエアストリームのラインナップのうち、比較的ロープライス(新車価格800万円前後)にもかかわらず、外観は他モデルと変わらないのが小型軽量の「スポーツ」モデル。ヒッチメンバーを取り付ければ乗用車で牽引でき、エントリーにもってこいのタイプとなっている。サイズは就寝可能人数3名の16フィートと、4名まで就寝できる22フィートの2タイプ。特にファミリーキャンプに十分なスペースと設備を備えた後者が人気だという。
US感たっぷりの見た目を残しつつ、ヨーロッパ市場向けに製作されたニューモデルも存在する。シャーシや内装、設備関係はすべてEUモデル専用設計で、新しい間取りと、女性に優しい収納配置なども採用。連結装置、灯火系カプラーはヨーロッパ製トレーラーを踏襲しているので、すでに欧州式ジョイントを付けている車なら改造せずに牽引が可能となっている。
もっともハイクラスなのが「クラシック」(メイン写真と下の写真)。ほかのトレーラーではオプション扱いのアイテムを標準装備し、高級素材を使った内装、くつろげるベッドルーム、奥行き深い収納スペースなど、その豪華さはまるで動く別荘。長い休暇で家族と出かけても、五つ星ホテル並みに心地良く過ごせるだろう。
国内正規ディーラー20周年を記念した日本仕様のスペシャルモデル
車体サイズ25フィート以上の本国向けエアストリームはワイドボディとなり、日本の車検に適合しない。そのため、少し細みに設計された日本仕様が存在する。正規ディーラーであるエアストリームジャパンが20周年を記念して2014年にオーダーした「インターナショナル25フィートFB」(1400万円前後)は、ジャパンナローボディに特別なデコレーションを追加。アニバーサリー仕様のエンブレムや刺繍入りレザーシート、鍵掛け、スクリーンドアガードなどが付いたスペシャルスペックとなっている。
幾度も繰り返される厳しいテストをパスしたモデルしか世に出ない高級キャンピングトレーラー「エアストリーム」。住宅と同じほどの耐久年数を誇り、メインドアから入れられるファニチャーしか取り付けられていないため、リフォームしながら一生付き合うことができる。生産台数が年間500台程度というのも惹かれるツボだろう。アウトドアを愉しむ大人のキャンパーにとって、いつか手に入れたい逸品といえる。
Text by Sachio Kanai
Photo by (C)AIRSTREAM JAPAN(main)
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