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第21回 | ポルシェの最新車デザイン・性能情報をお届け

ポルシェオープンの代名詞『911タルガ』特別モデル

「タルガ・フローリオ」。今から100年前の1906年、イタリア・シチリア島で第1回目が開催された由緒ある公道サーキットレースだ。このレースにおいて、最多優勝記録を誇る自動車ブランドが「ポルシェ」である。ここまで書けば、カーガイなら、ピンときたかもしれない。「タルガ・フローリオ」は、ポルシェのオープンカーの代名詞である『911タルガ』の車名の由来となったレースだ。『911タルガ』のデビューは1966年。屋根の一部が外れる「タルガトップ」という言葉は、このときに誕生した。それから50年後になる2016年、『911タルガ4S デザインエディション』が発表された。

ボディカラーは50年前のポルシェ『356B』に設定された伝統色「エトナ・ブルー」

『911タルガ4S デザインエディション』は、『911タルガ4S』の特別モデルだ。究極のカスタマイズを実現する「ポルシェ・エクスクルーシブ」による手作業で仕上げられるという。「デザインエディション」の名が示す通り、最大の特徴はエクステリア、特にカラーリングだろう。

ソリッドのボディカラーは、1960年と1961年にポルシェ『356B』の標準色として設定されていた「エトナ・ブルー」を再現した。このブルーに合わせて、「タルガバー」やホイール、ドア下のポルシェロゴ・ストライプをサテン仕上げのホワイト・ゴールド・メタリックでまとめている。

オープン状態にしたときに衆目に晒されるインテリアは、ダッシュボードやステアリング・コラムに至るまで、「グラファイト・ブルー」のレザー張りだ。ステッチやフロアマットの縁取り、そして空調の吹き出し口にはプロバンスブルーが組み合わされている。シートにはヘッドレストに「ポルシェクレスト(楯)」と呼ばれるエンブレム、センター・コンソールに備わる小物入れの蓋には『911タルガ』のシルエットデザインがエンボス加工されている。

高いボディ剛性とオープンの爽快感を両立する『911タルガ4S』の「タルガバー」

パワートレインはベース車両である『911タルガ4S』を踏襲。911シリーズの新パワートレインである3L水平対向6気筒エンジンを搭載し、最高出力420ps、最大トルク51kgmを叩き出す。「PTM(ポルシェ・トルク・マネージメント)」と呼ばれる、前後のトルク配分を電子制御する4WDシステムを搭載しているので、路面状況に応じて最適、最大の加速と走行性能を実現してくれる。

タルガトップが開くギミックも魅力のひとつ。機構自体は『911タルガ 4S」と同じで、リアガラスがスライドしてトップが収まるという仕組み。開閉時間は約19秒とフルオープンモデルよりも短く、急な天候の変化にも対応可能だ。

もちろん、タルガトップの魅力は、ギミックや開放感だけではない。オープンカーはその構造上、ボディ剛性が低くなりがちだが、「タルガトップ」は太いタルガバーの存在により、クーペ並の堅牢性を備えている。走りと安全性にこだわった結果生まれた、機能美に所以するデザインも魅力のひとつなのだ。

日本での価格や販売台数は執筆時点では発表されていないが、短期間限定販売ということなので、かなりのプレミアムになることは必至だろう。

Text by Tsukasa Sasabayashi

Photo by (C)Porsche AG

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第51回 | ポルシェの最新車デザイン・性能情報をお届け

甦る伝説のイエローバード──ルーフCTRアニバーサリー

1990年からシリーズ全体で20年以上にわたり連載されてきた楠みちはるの『湾岸ミッドナイト』。大人のカーガイなら、主人公が駆る「悪魔のZ」の永遠のライバルとして登場する漆黒の930型ポルシェ『911ターボ』、通称「ブラックバード」を覚えていることだろう。じつは、この最高出力700psのモンスターマシンと似たスペックをもつカスタムモデルが実在する。ルーフ・オートモビルによる930型ポルシェ『911』をベースにしたコンプリートカー、「イエローバード」こと初代『CTR』だ。3月のジュネーブモーターショーでは、初代の誕生30周年を記念したアニバーサリーモデルが発表された。

ポルシェのようでポルシェではない。340km/hを記録した伝説の「イエローバード」

ポルシェのようだが、じつはポルシェではない。ポルシェのボディシェルを使いつつも、まったくのオリジナルのハイパフォーマンスカーを製造する世界的な自動車ブランド。それがドイツ南部のプファッフェンホーフェンに本拠を置くRUF Automobile(ルーフ・オートモビル)だ。もともとポルシェ車のチューナーだったが、1980年代から独自のコンプリートカーを生産・販売し、ドイツの自動車工業会にも属している。小規模ではあるが、卓越した技術力によってユーザーの信頼を集めるれっきとした自動車メーカーなのだ。

ルーフの名は、1987年に発表された初代『CTR“イエローバード”』によって世界中のスポーツカーファンに認知された。930型『911カレラ』をベースに、排気量を3.4Lへと拡大。チューンナップされたインタークーラー付きのツインターボエンジンは最高出力469ps、最大トルク553Nmのパワーを発生する。アメリカの老舗自動車雑誌『ロード&トラック』がフォルクスワーゲンのテストコースにスーパーカーを集めて行った走行テストでは、ランボルギーニやフェラーリを抑えて当時の市販車最速となる約340km/hを記録した。これにより、ルーフと『CTR』の名を世界に知らしめたのである。ちなみに、「イエローバード」の異名は『ロード&トラック』が誌面で使ったキャッチに由来する。

販売台数はわずか30台。バブル景気だった日本には10台近くが、あるいはそれ以上の台数が上陸したといわれる。この「イエローバード」をルーフの技術力によって現代に甦らせたモデルが、ジュネーブで発表された『CTR Anniversary(アニバーサリー)』だ。

『CTRアニバーサリー』は最高出力710ps、最高速度360km/hのモンスターマシン

『CTRアニバーサリー』は、2017年のジュネーブモーターショーで発表されたプロトタイプ、『CTR 2017』の市販バージョンとなる。前述のとおり、初代『CTR』は930型『911』をベースとしたが、『CTRアニバーサリー』はポルシェのボディシェルを使用していない。モノコックシャシーやボディはルーフが独自に開発したもの。つまり、一見すると古いポルシェのようだが、このクルマはベースが存在しないまったくのオリジナルなのだ。

モノコックとボディにはカーボンファイバーを採用し、それによって総重量1200kgという軽さを実現。ルックスは初代『CTR』のイメージをそのまま踏襲しているが、『CTRアニバーサリー』専用のエクステリアとして、リアに大型のウィングを装着する。

思わず唸らされたのがエンジンルームだ。『911』といえば、古いポルシェファンなら空冷エンジンの印象が強いと思うが、『CTRアニバーサリー』は往時の空冷エンジンを彷彿とさせるクラシカルなデザインをあえて採用した。しかし、そこに搭載されるのは、ツインターボを装着した排気量3.6Lの水平対向6気筒エンジン。最高出力710ps、最大トルク880Nmのパワーを発揮し、最高速度は360km/hに達するモンスターぶりである。

甦った「イエローバード」は全台ソールドアウト。NAエンジンの現行型は販売継続

残念ながら、『CTRアニバーサリー』はすでに生産予定の30台が全台売約済み。プロトタイプの『CTR 2017』が発表された時点でソールドアウトしたとの一部報道もある。

ただし、ルーフには今回の『CTRアニバーサリー』とカーボンシャシーやボディを含めた多くの仕様が共通する『CTR SCR』という現行モデルがある。搭載するのは710psのツインターボではなく自然吸気エンジンだが、現在も販売を継続中だ。ポルシェのようでポルシェではないコンプリートカーをお望みなら、こちらを選択する方法もあるだろう。

Text by Kenzo Maya
Photo by (C) RUF Automobile GmbH
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

動画はこちら
メイキング・オブ RUF CTR 2017
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