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第6回 | ロータスの最新車デザイン・性能情報をお届け

エンスー垂涎! 1960年代調のケータハム『セブン』

2017年は、ロータスの創始者、コーリン・チャップマンが2シーター・ライトウエイトスポーツカーの『セブン』シリーズを誕生させてから60周年にあたる。それを記念して、ロータスからセブンを受け継いだケータハムがリリースするのが、1960年代調に仕立てた特別な内外装をもつ『Seven Sprint(セブン スプリント)』だ。英国のレーシングカーを象徴するブリティッシュ・レーシング・グリーンで塗装されたボディ、格子状のラジエーターグリル、レトロ調のエンブレムなど、60年代への敬意と、現代のテクノロジーが融合した1台となっている。

1957年にコーリン・チャップマンが発表したレーシングカー、ロータス『Seven』

ケータハム『セブン スプリント』を語るうえで、欠かせないのがロータスによるオリジナル『セブン』の歴史である。

原型は、1957年秋のロンドンモーターショーにて披露された一台にある。ロータスの創設者コーリン・チャップマンが、セミモノコック構造にアルミ外板を張ったレーシングカー、ロータス『Seven(セブン)』を発表。それは、タイヤをフェンダーで完全に覆わない「オープンホイール」のレーシングカーで、サーキットまで自走し、そのままレースにエントリーできるように開発された。これこそ、チャップマンの設計理念である「軽量化」を体現するクルマで、完成品と自分で組み立てるキット・フォームで発売された。

このキットについては、面白いエピソードがある。当時のイギリスでは自動車を購入する際の物品税がとても高く、しかし、クルマをキットの状態で購入して自分で組み立てれば、安価にクルマを手にすることができた。このキットの配送は郵便扱いだったため、「クルマを郵便屋が運んでくれる」とまでイギリスのクルマ好きに言わしめるほどだったという。

また、エンジンやトランスミッションなどの高価な部品を含まない廉価版のキットを購入し、ジャンクヤードにあるクルマから好みのエンジンを流用。それを組み立てることにより、さらにコストを抑えることもできたそうだ。

セブンは、1950年代後半に生まれたロックとオートバイを愛する不良カルチャー“ROCKERS(ロッカーズ)”が全盛だった当時のイギリスで、経済力に劣る若者がモータースポーツを始めるには最適なモデルであった。

『セブン スプリント』は、このロータスのレーシングカーから始まったセブン・シリーズの誕生60周年を記念して作られた限定モデルだ。

軽自動車の馬力規制を受けない『セブン スプリント』のスズキ製ターボエンジン

しかし、このクルマは一般的な記念モデルとは少々異なる。じつは『セブン スプリント』というのは、1960年代にロータス社で計画・開発されながら発売されなかったモデルの名前。いわゆる「お蔵入りモデル」を再現、復刻したクルマなのである。

エンジンは、スズキ製660cc直列3気筒ターボを搭載する『セブン160』をベースとし、最高出力は80馬力。軽自動車のエンジン出力の上限を64馬力とする日本国内の馬力自主規制のないパワーを、乾燥重量がたったの490kgの車体で楽しむことができる。現在、注文から納期まで3カ月待ちのホンダ『S660』が830~850Kgだから、いかに『セブン スプリント』が軽量かがわかるだろう。

パウダーコート・グレーのシャシーは、ロータス『セブン シリーズ2』をオマージュしたもの。ボディカラーには、1966年に設定されていた6色を用意し、ポリッシュ仕上げハブキャップを装備するホイールはクリーム色仕上げとなっている。そして、タイヤは知る人ぞ知るAVON(エイボン)製の ZT5だ。

価格は約470万円、日本国内でわずか20台しか販売されない『セブン スプリント』

1960年代調に仕立てられた内装も見逃せない。スカーレットレッドのダッシュボードにはSMITHS(スミス)製のクローム・メーターパネルが採用され、スポーツステアリングホイールはMoto-lita(モトリタ)製ウッドリム。

クラシックなデザインのシートの色も同じくスカーレットレッドで、Muirhead(ミュアヘッド)製スコティッシュレザーを手縫いで仕上げたアジャスタブルシートとなっている。そして、クラシックカー好きなら涙を流して喜ぶスペアホイール&キャリアも装備するという。

この1960年代のエッセンスに満ちた『セブン スプリント』は、ケータハム工場にて2017年1月より生産開始され、日本でのデリバリーは2017年3月以降となる。車両本体価格は469万8000円(消費税8%込)だ。

とはいえ、販売されるのはイギリス20台、EU20台、日本20台の限定60台。セブン・シリーズのエンスージアストは日本にも多いが、たったの60台ではさすがに手に入れるのは至難の業となりそうだ。なんとか10倍の600台に増産してもらえるように、ケータハムに熱烈なリクエストを送ろうではないか。

Text by Katsutoshi Miyamoto

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第8回 | ロータスの最新車デザイン・性能情報をお届け

エヴォーラGT430──史上最強430馬力のロータス

電子制御などの進化により、スポーツカーにもドライバーの操作にダイレクトに応えるモデルが少なくなってきた。そうしたなかでも、電子制御を前面に押し出すのではなく、「走る」「曲がる」「止まる」というクルマ本来の性能を追求しているストイックなメーカーが英国のロータス・カーズである。お家芸は“軽量”であることを追求したライトウェイトスポーツ。2017年8月、そのロータスがロードゴーイングレーシングカーと呼ぶべき最高出力436psを誇る高性能モデル『エヴォーラ GT430』を発表した。いわく「ロータス史上最高もっともパワフル」という、全世界60台の限定モデルだ。

スーパーカーのような佇まいを持った『エヴォーラ』の進化版『エヴォーラGT430』

現在日本に正規輸入されるロータスのラインナップは、『エリーゼ』『エキシージ』『3-イレブン』、そして『エヴォーラ』の4モデル。このうち『エリーゼ』『エキシージ』『3-イレブン』はいずれも2シーターのライトウェイトスポーツカーだ。このロータスの伝統は、1970年代終わりに池沢さとしの『サーキットの狼』で脚光を浴びた名車、『ヨーロッパ』の頃と少しも変わらない。

しかし、2009年に登場した『エヴォーラ』は少し毛色が異なる。『エヴォーラ』はこれまでのモデルよりもグランドツーリング性能が高められ、室内には2+2シーターの4人乗りの快適な空間が与えられている。ボディも流麗な曲線を描くスーパーカーのような佇まいとなり、高級感も加味された。

とはいえ、ピュアなスポーツカー作りを信条とするだけに、やはりロータスも乗り心地の良いGTカーでは満足できなかったのかもしれない。すでに『エヴォーラ』には、各国で高い評価を受けている『エヴォーラ400』『エヴォーラ スポーツ410』というエヴォリューションモデルが存在するが、そのさらなる進化版として登場したのが限定モデルの『エヴォーラGT430』だ。

『エヴォーラGT430』の最高速度は305km/h、まさしく「史上最速最強のロータス」

車名にある「430」という数字でもわかるように、ミッドシップに搭載されたパワーユニットは『エヴォーラ スポーツ410』よりも20psアップとなる320kW(436ps)/7000rpmを発生する3.5L V6スーパーチャージドエンジン。最大トルクは440Nm(44.8kgm)/4500rpmだ。

トランスミッションは、6速MTのみ。これは現代のモデルでは思い切った設定といえる。0-100km/hまでの加速は3.8秒。最高速度は305km/hに達する。

この加速とトップスピードに大きく貢献しているのが軽量化された車体だ。もともとロータスは伝統的に“軽さ”を最も重視してきたメーカーだが、『エヴォーラGT430』はカーボンで作られたボディに加え、エンジンにより軽量なチタン製エキゾーストを組み込んだ。これによってリアアクスルにかかる重量を10kg削減。シートの削減なども含めて、車重はコンパクトカー並みの1258kgに抑えられている。

ほかにも、オーリンズ製の車高調整ダンパーやアイバッハのスプリングなど、豪華なチューニングパーツが随所に散りばめられた。

エンジンパワーは車内から任意に変更が可能で、「ドライブ」「スポーツ」「レース」「オフ」の4つのダイナミックドライブモードを搭載。可変トラクションコントロールも装備され、3%、6%、9%、12%、オフと、リアのスリップ量を5段階まで設定できる。よりダイナミックなスポーツランが愉しめそうだ。

インテリアの雰囲気はレーシングカー、価格は1944万円で世界60台のみの限定販売

エクステリアでは、リアに立てられた大型スポイラー「モータースポーツカーボンリヤウイング」が印象的だ。フロントのエアダクトやリアのディフューザー、エンジンフードは『エヴォーラGT430』専用で、軽量なカーボン製に変更されている。

これらのエアロデバイスにより、エアロダイナミクス性能も大幅に向上。最高速度の305km/hに達する時点で最大250kgのダウンフォースを発生させるという。この高速域での安定性は、まさに車体を路面に“粘らせる”という表現がふさわしい。

インテリアもピュアスポーツカーらしい雰囲気が一層高められている。ハンドル、ドアパネル、アンダーパネルに至るまで、すべてアルカンターラとレザーのみが用いられ、シートは後部座席が取り払われて2シーターとなった。高級感を纏いながらも、その雰囲気はレーシングカーのそれ。きっとハンドルを握った瞬間、サーキットを走りたくてたまらなくなるに違いない。

インテリアのカスタマイズも豊富に用意された。アルカンターラの内装はレザーに変更可能で、シートにはレーシングカーでおなじみの「スパルコ」製スポーツシートを選択できる。

ボディカラーは全12色。そのほか、グロスブラックかグロスレッドの鍛造ホイール、カーナビ&リアビューカメラ、エアコンユニットなどがオプションで選択可能。最後の仕上げはユーザーに委ねるというわけである。

まさにロードゴーイングレーシングカーと呼ぶにふさわしい『エヴォーラ GT430』。ただし、価格はやや高めの1944万円で、全世界60台のみの限定モデルとなっている。手に入れるためのハードルは高いが、それと引き換えに得られる悦びを考えれば苦にならないだろう。

Text by Tetsuya Abe

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