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第31回 | 大人のための最新自動車事情

甦ったマッスルカー、ダッジ『チャレンジャーT/A』

最近、“マッスルカー”と呼ばれるアメ車がクルマ好きの40代を中心に人気となっている。その人気の理由は、一度はドイツ車を手に入れた彼らだが、街中で同型のドイツ車とすれ違うことが多く、また、上位グレードの多さにも興ざめ。そこで、子供のころに映画やテレビで見て憧れたマッスルカーに乗り換えているという。マッスルカーといえば、シボレー『コルベット』『カマロ』、フォード『マスタング』、ダッジ『バイパー』などが有名だが、そのなかでも大注目株の1台を紹介しよう。それが、ダッジ『チャレンジャーT/A』だ。

映画『バニシング・ポイント』や『デス・プルーフ』で活躍した伝説のマッスルカー

このクルマほど、多くの映画でその激走ぶりを披露したマッスルカーは他にない。たとえば、アメリカン・ニューシネマの代表作『バニシング・ポイント』(1971年公開)、この作品をオマージュしたクエンティン・タランティーノ監督の『デス・プルーフinグラインドハウス』(2007年公開)、さらに『ワイルド・スピード2』(2003年公開)等々。アメリカ映画の主役に、あるいは敵方として登場し、その格好良さに目を見張った人も多いはずだ。

さて、本題に入ろう。1970年に登場したチャレンジャーには、『T/A』という特別なモデルがあった。『T/A』とは「TRANS AMERICAN」の略称で、当時開催されていた「トランス・アメリカン・セダンレース」、通称「トランザム」のこと。このレースに出るために2500台だけ作られたホモロゲーションモデルが『T/A』だ。

ダッジブランドを擁するクライスラーは、2016年9月、伝説ともなっているこのクルマをチャレンジャーシリーズの2017年モデルとして復活させると発表。幻の『チャレンジャーT/A』が現代に甦ることになったのだ。

ライバル『カマロ』『マスタング』を打倒するべく投入された『チャレンジャーT/A』

1970年デビューのチャレンジャーは、大排気量のV8エンジンからハイパワーを発揮するスペックで、タービン・エンジンの搭載を想定したグリルデザインが特徴的だった(最終的には搭載されなかったが)。

低く精悍なボディシルエットで、当時流行の「コークボルトライン」と呼ばれたデザインを採用。グレードは3種類あり、最上位の『チャレンジャーR/T(ロード/トラック)』をベースにして、トランザムレース出場用のホモロゲーションモデル、『チャレンジャーT/A』が製造された。当時はトランザムレースの結果がマスタングやカマロなどのマッスルカー市場の販売実績に大きな影響を与えており、『チャレンジャーT/A』は既存のマッスルカーを追い上げるべく投入されたモデルだった。

そのため、ワークス参戦は絶対条件で、『チャレンジャーT/A』に搭載されたパワーユニットは、340キュービックインチ(5700cc)V8エンジンに3つの2バルブキャブレーターで、290馬力を絞り出したという。軽量化のために、専用のFRP製エンジンフードが採用され、排気管をボディのサイドにレイアウト、リアデッキスポイラーも標準装備していた。

下の写真の手前が先代の『チャレンジャーT/A』、奥が2017年モデルだ。

『チャレンジャーT/A』の393万円から、自分のなかの狼を呼び起こしたい大人の男へ

今回発表された2017年モデルの『チャレンジャーT/A』には、2種類のグレードが用意されている。

現行モデル『R/T』の排気量5700cc V8エンジン(370馬力)と、同じく『SRT392』の排気量6400cc HEMI(ヘミ)仕様V8エンジン(485馬力)があり、両グレードとも先代の『T/A』を思い起こさせるボディシルエットと装備になっている。この「ヘミ」とは、ダッジを作っているクライスラーのパーツ部門の中のレース活動を行っている「MOPER(モパー)」が仕上げたエンジンのことだ。

エンジンフードはFRP製ではないが、太陽光の反射を防ぎ、レースに出場した際はカーナンバーが目立つつや消し黒のサテンブラック仕上げで、アクセサリーとしてフードピンが純正装備されている。ルーフもサテンブラックなうえ、リアデッキスポイラーも装備し、これらによって否が応でもレーシング気分を盛り上げてくれる。

内装は現行モデルと大きな変更はないが、スピード・タコメーターはホワイトメーターが採用され、シートの背もたれには『T/A』の刺繍が入っている。復活モデルだからといって、仰々しい記念プレートもナンバリングもない。この潔さが逆にうれしい。

北米での予約注文は10月から始まっており、価格は下位グレードなら約393万円からとなっている。意外にお手頃だけに、そろそろ「自分のなかの狼」を呼び起こしたい大人の男は、そのきっかけのひとつとして『チャレンジャーT/A』を選択肢に加えてみるのもいいのではないだろうか。

Text by Katsutoshi Miyamoto

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第129回 | 大人のための最新自動車事情

マッチョな軍人たちへ──愛国仕様のダッジチャージャー

『ワイルド・スピード』の第一作が公開されたのは2001年のことだ。主人公ドムの愛車は、圧倒的パワーをもつ古き良き時代のダッジ『チャージャー』。言わずとしれたマッスルカーである。あれから10余年。アメリカでは今、シリーズにたびたび登場する1960〜70年代の『チャージャー』の価値が上昇し続けている。なにしろ、このSUV全盛の時代にあって、現行の『チャージャー』『チャレンジャー』までもが10年間で70%も販売台数が伸びているのだ。そして、この人気を逃すまいとブランドもさまざまな限定車やオプションを設定。今年4月には、なんとも印象的なストライプのカスタムルックが登場した。

モダンマッスルカーの代表車種2台。ダッジ『チャージャー』と『チャレンジャー』

マッスルカーとは、広義では大排気量のV8エンジンを搭載するハイパフォーマンスのアメリカ車を指す。狭義では1968年から1971年にかけて作られた高性能でハイグレードなアメ車のこと。フルサイズのセダンやクーペ、後輪駆動車が多い。したがって、より正確にいうと、現行車種はマッスルカーではなく、ニューマッスルカーなどと呼ばれる。

そのモダンなマッスルカーのひとつが、ダッジブランドの現行『チャージャー』『チャレンジャー』だ。『チャージャー』は2ドアクーペで、いわば生まれながらのマッスルカー。『チャレンジャー』は4ドアセダンで、フォード『マスタング』と同様にポニーカー(手頃な価格のスポーティカー)として誕生した。いずれも現行型は第三世代で、発表されてから10年以上の時を刻んでいる。にもかかわらず、本国では依然高い人気を誇るモデルだ。

その証拠に、4月のニューヨークオートショー2019において、2台の上位グレードに設定可能な特別パッケージが発表されると、それだけでニュースになったほど。パッケージの名称は「stars & stripes edition(スター・アンド・ストライプス・エディション)」。ミリタリーをテーマとする渋いストライプをまとったカスタムルックのオプションである。

テーマは星条旗。フロントからリアにかけて走る極太のサテンブラック・ストライプ

「stars & stripes edition」は、その名のとおり、「スター・アンド・ストライプス(星条旗)」をテーマにしたカスタムルックだ。最大の特徴は、フロントからリアにかけてボディを覆うようにペイントされたサテンブラックのストライプ。この極太ストライプの正面に向かって右側、つまりドライバーズシート側には、シルバーの縁取りが入っている。

シートはブラックのファブリック(布製)で、ヘッドレスト側面に刺繍されたブロンズのスターが目を引く。このブロンズカラーはシートとステアリングホイールのステッチにも使用されている。そのほか、ボディ側面にさりげなく描かれている星条旗、20インチホイール、前後のスポイラー、装備されるバッジ類は、すべてサテンブラック仕上げだ。

選択できるボディカラーは、「デストロイヤーグレイ」「F8グリーン」をはじめ、「グラナイトクリスタル」「インディゴブルー」「マキシマムスティール」「オクタンレッド」「ピッチブラック」「トリプルニッケル」「ホワイトナックル」の全9色。写真の『チャージャー』はデストロイヤーグレイ、『チャレンジャー』がまとっているのはF8グリーンだ。

軍人や愛国精神をもつマッチョたちのために設定されたカスタムルックのオプション

「統計によると、軍人が購入するアメリカンブランドのなかで、もっとも人気があるのはダッジ」。これはダッジのプレスリリースにある一文だ。とりわけ、彼らがもっとも多く選択しているのが『チャージャー』と『チャレンジャー』だという。つまり、軍人や愛国精神をもつマッチョな男たちのために設定されたのが今回の星条旗ルックというわけだ。

愛国精神はともかく、マッスルカーがマッチョな男に似合うのは『ワイルド・スピード』シリーズを見れば一目瞭然。日本人はよほど筋トレしないとむずかしいかもしれない。

なお、「stars & stripes edition」が設定されるのは『チャージャーR/T』『チャージャー スキャットパック』『チャージャーGT RWD』『チャレンジャーR/T』『チャレンジャーR/T スキャット・パック』『チャレンジャーGT RWD』の6車種。5月から発売される。

Text by Kenzo Maya
Photo by (C) Fiat Chrysler Automobiles
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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