editeur

検索
サービス終了のお知らせ
第30回 | 大人のための最新自動車事情

電気で走る高級SUV、テスラ『モデルX』が日本上陸

アメリカのEVベンチャー、テスラモーターズが初のSUV『Model X(モデルX)』を発表、2016年9月16日から日本での販売を開始した。世界的に人気の高いSUVカテゴリだが、「電気で走るSUV」というのは他に類を見ない。日本国内でも、市販車として初めての電気自動車SUVとなる。テスラが投入したニューモデル『モデルX』は、過熱するSUV市場に風穴を開けることができるのか?

イーロン・マスクが設立したシリコンバレー発のEVベンチャー「テスラモーターズ」

テスラモーターズは、世界最高の起業家といわれるイーロン・マスクが2003年にアメリカ・カリフォルニア州のシリコンバレーに設立したベンチャー企業だ。その目的は「電気自動車がガソリン自動車を超えることを証明したい」というもの。そこで、これまでテスラは2つのモデルを開発、販売してきた。

最初のモデルは『ロードスター』。その名の通り、2ドア2シーターのオープンモデルで、ボディのベースとなったのはロータス『エリーゼ』だ。最高出力292ps、最大トルク400Nmのモーターをミッドシップに搭載し、最高速度が200km/hに達するなど、従来のEVの常識を覆してテスラの名を世界に知らしめた。

次に登場したのが『モデルS』。ロードスターとは打って変わり、上質で高級感あふれるセダンタイプのモデルで、環境意識の高い富裕層やビジネスマンの間で人気となっている。2016年8月には高性能グレードの『P90D』を追加。フロントとリアにそれぞれモーターを装備するツインモーターAWD方式を採用し、最高速度は250km、0~100km加速は2.7秒と高性能スポーツカー顔負けの性能を誇る。半自動運転システム「オートパイロット」への対応もトピックのひとつとなった。

そして、これらに続く3つめのモデルとして投入されたのが、3列シートを持つ電気自動車SUVの『モデルX』である。

テスラ初のSUV『モデルX』の車内は手術室レベルのクリーンさで「生物兵器」にも対応

モデルXは、一見するとそれほど大きなクルマとは感じないが、じつは全長5037mm×全幅2070mmという堂々たるサイズを持つ。これだけ大型でありながらそう思わせないのは、デザインの妙だろう。フロントフェイスやボディはモデルSのイメージを受け継ぎ、それほどSUV然としていない。

特徴的なのは、格納式のドアハンドルを操作するとリヤドアが上に開く「ファルコンウィングドア」だ。このガルウィングは単なるギミックではなく、狭い駐車スペースでもドアを開閉できる利点を持つ。車体側方に30cmのスペースしかなくても開閉できるという。さらに、ファルコンドアは開口部が大きいので、後席へのアクセスも容易となる。

インテリアもモデルSと同じテイストでまとめられているが、室内はモデルSよりもゆったり広くなった印象だ。2列シートの5人乗りが標準だが、「2・2・2」レイアウトの6人乗り、「2・3・2」レイアウトの7人乗りを選ぶこともできる。SUVの魅力のひとつである、ミニバン的な用途にも対応可能なのだ。

また、テスラのこだわりが表れているのが、業界初となる「HEPAエアフィルトレーションシステム」の採用である。これは、車内を病院の手術室と同レベルのクリーンな空気に満たすことができる空調システムで、極端な話、車外に生物兵器が撒かれても車内環境の安全を保つほどの性能を持つ。現実的には、花粉症の人などにとってモデルXの車内は心地いいものとなるはずだ。

価格帯はポルシェ『カイエン』と同じ、スーパーカー並の加速力を持つ『モデルX』

動力性能の基本的な部分はモデルSと同じだが、モデルXでは、フロントとリアにそれぞれモーターを備えたツインモーターAWDを採用し、グレードに応じてトータル出力422ps〜539psを発揮する。最上級グレードの『P100D』は、最高速度250km/h、0-100km/hはわずか3.1秒。フェラーリ『488GTB』の0-100km/hが3.0秒だから、加速は「スーパーカー並」である。また、キャンピングトレーラーを軽々と引っ張る、2268kgの牽引能力を持つ。

従来のEVの弱点だった航続距離も、モデルXのそれは「特筆すべき」といえるもの。モデルXには『75D』『90D』『P90D』『P100D』の4グレードが設定され、それぞれのグレードに応じた容量のリチウムイオンバッテリーが搭載されるが、下位グレードの『75D』でも1回の充電で417km、『P100D』なら542kmを走行可能としている。EVだからといって行動範囲が限られてしまうことはない。


モデルXの価格は1029万円〜1611万2000円。同価格帯にはポルシェ『カイエン』やBMW『X5』『X6』、メルセデスベンツ『GLS』などが並ぶが、使い勝手やパフォーマンスを比較してもモデルXを選ぶ価値は十分にあるだろう。モデルXが「特別なEV」としてではなく、プレミアムSUVとして選ばれる日もそう遠くないかもしれない。

Text by Tetsuya Abe

ピックアップ
第129回 | 大人のための最新自動車事情

マッチョな軍人たちへ──愛国仕様のダッジチャージャー

『ワイルド・スピード』の第一作が公開されたのは2001年のことだ。主人公ドムの愛車は、圧倒的パワーをもつ古き良き時代のダッジ『チャージャー』。言わずとしれたマッスルカーである。あれから10余年。アメリカでは今、シリーズにたびたび登場する1960〜70年代の『チャージャー』の価値が上昇し続けている。なにしろ、このSUV全盛の時代にあって、現行の『チャージャー』『チャレンジャー』までもが10年間で70%も販売台数が伸びているのだ。そして、この人気を逃すまいとブランドもさまざまな限定車やオプションを設定。今年4月には、なんとも印象的なストライプのカスタムルックが登場した。

モダンマッスルカーの代表車種2台。ダッジ『チャージャー』と『チャレンジャー』

マッスルカーとは、広義では大排気量のV8エンジンを搭載するハイパフォーマンスのアメリカ車を指す。狭義では1968年から1971年にかけて作られた高性能でハイグレードなアメ車のこと。フルサイズのセダンやクーペ、後輪駆動車が多い。したがって、より正確にいうと、現行車種はマッスルカーではなく、ニューマッスルカーなどと呼ばれる。

そのモダンなマッスルカーのひとつが、ダッジブランドの現行『チャージャー』『チャレンジャー』だ。『チャージャー』は2ドアクーペで、いわば生まれながらのマッスルカー。『チャレンジャー』は4ドアセダンで、フォード『マスタング』と同様にポニーカー(手頃な価格のスポーティカー)として誕生した。いずれも現行型は第三世代で、発表されてから10年以上の時を刻んでいる。にもかかわらず、本国では依然高い人気を誇るモデルだ。

その証拠に、4月のニューヨークオートショー2019において、2台の上位グレードに設定可能な特別パッケージが発表されると、それだけでニュースになったほど。パッケージの名称は「stars & stripes edition(スター・アンド・ストライプス・エディション)」。ミリタリーをテーマとする渋いストライプをまとったカスタムルックのオプションである。

テーマは星条旗。フロントからリアにかけて走る極太のサテンブラック・ストライプ

「stars & stripes edition」は、その名のとおり、「スター・アンド・ストライプス(星条旗)」をテーマにしたカスタムルックだ。最大の特徴は、フロントからリアにかけてボディを覆うようにペイントされたサテンブラックのストライプ。この極太ストライプの正面に向かって右側、つまりドライバーズシート側には、シルバーの縁取りが入っている。

シートはブラックのファブリック(布製)で、ヘッドレスト側面に刺繍されたブロンズのスターが目を引く。このブロンズカラーはシートとステアリングホイールのステッチにも使用されている。そのほか、ボディ側面にさりげなく描かれている星条旗、20インチホイール、前後のスポイラー、装備されるバッジ類は、すべてサテンブラック仕上げだ。

選択できるボディカラーは、「デストロイヤーグレイ」「F8グリーン」をはじめ、「グラナイトクリスタル」「インディゴブルー」「マキシマムスティール」「オクタンレッド」「ピッチブラック」「トリプルニッケル」「ホワイトナックル」の全9色。写真の『チャージャー』はデストロイヤーグレイ、『チャレンジャー』がまとっているのはF8グリーンだ。

軍人や愛国精神をもつマッチョたちのために設定されたカスタムルックのオプション

「統計によると、軍人が購入するアメリカンブランドのなかで、もっとも人気があるのはダッジ」。これはダッジのプレスリリースにある一文だ。とりわけ、彼らがもっとも多く選択しているのが『チャージャー』と『チャレンジャー』だという。つまり、軍人や愛国精神をもつマッチョな男たちのために設定されたのが今回の星条旗ルックというわけだ。

愛国精神はともかく、マッスルカーがマッチョな男に似合うのは『ワイルド・スピード』シリーズを見れば一目瞭然。日本人はよほど筋トレしないとむずかしいかもしれない。

なお、「stars & stripes edition」が設定されるのは『チャージャーR/T』『チャージャー スキャットパック』『チャージャーGT RWD』『チャレンジャーR/T』『チャレンジャーR/T スキャット・パック』『チャレンジャーGT RWD』の6車種。5月から発売される。

Text by Kenzo Maya
Photo by (C) Fiat Chrysler Automobiles
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

ピックアップ

editeur

検索