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第29回 | 大人のための最新自動車事情

天才が作った「パガーニ」という芸術的スーパーカー

スティーブ・ジョブズがパーソナルコンピューティングやモバイルフォンを変えた天才であるように、スーパーカーの世界にも天才と呼ばれる人たちがいる。そのひとり、オラチオ・パガーニが設立した「パガーニ」は、芸術的かつオンリーワンのクルマを作るスーパーカーメーカーだ。厳選された極上の素材やパーツを惜しみなく使い、すべてハンドメイドで組み上げられるスーパーカーは、もはや工業製品というよりアート。2億円以上の価格にもかかわらず、世界中の超富裕層がパガーニを手に入れるために長い列をなしているのだ。

パガーニは、エンジニアやデザイナーではなく「芸術家」が作っているアート作品

イタリア北部のモデナ近郊、サンチェザリオ・スル・パーナロに本拠地を置くパガーニは、デザイナーとしてランボルギーニに9年間在籍したオラチオ・パガーニによって1992年に設立されたスーパーカーメーカー。クルマはビルド・トゥ・オーダーにより、職人たちがハンドメイドで組み上げ、2億円を超えるプライスタグがつく。

日本でも数年前、「ZOZOTOWN」を運営するスタートトゥデイの前澤友作社長がパガーニ「ゾンダ」をオーダーしたことで話題になった。現在生産されているのは、このゾンダの後継モデルとなる「ウアイラ」シリーズ。メイン写真は、限定20台の特別モデル「ウアイラBC」だ。

ウアイラは、カーボン・チタニウム製のセンターモノコックによる1350kgの軽量ボディに、メルセデスAMGのV12ツインターボを搭載。AMG製といっても、ウアイラのために再設計された特別なエンジンで、最高出力730hp/5800rpm、最大トルクは驚異の1000Nm/2250~4000rpmを発生する。3.3秒の0-100km/hタイム、最高速度360km/hは、V12エンジンを搭載するスーパースポーツのなかでもトップクラスだ。

しかし、パガーニをパガーニたらしめているのは、じつはこうしたスペックではない。

「パガーニを作っているのは、エンジニアやデザイナーではなく芸術家。ビジネスマンであれば、顧客のニーズに応じて商品を開発しますが、オラチオ・パガーニ氏はそうではありません。作りたいから、作っている。それがパガーニというスーパーカーメーカーであり、オラチオ氏なのです」。そう話すのは、希少なスーパーカーを取り扱う「ビンゴスポーツ」代表で、正規ディーラー「パガーニ東京」の代表をつとめる“スーパーカーを知り尽くす男”、武井真司さんだ。

芸術の域にまで高められたパガーニのパーツ、工芸品のように美しいギアレバー

武井さんがパガーニ東京を立ち上げたのは、2005年にジュネーブモーターショーで発表された「ゾンダF」と出会ったことがきっかけだったという。

「乗った瞬間、『買わなければいけない』と思いました。『これが私の作ったクルマだ』というオラチオ氏の強いメッセージが五感に訴えかけてきたんです。これこそ、僕が探していたスーパーカー。たんなる工業製品ではない、『オンリーワン中のオンリーワン』のスーパーカーだと」

カーボンファイバー、チタニウム合金、削り出しのアルミニウム、特級のレザーといった極上の素材をはじめ、パガーニに使われているパーツはすべてオラチオ・パガーニによって厳選されたもの。メーターの針ひとつを取っても緻密に設計されている。マニュアルギアシフトのようなアルミニウム製のギアレバーは、まるで工芸品や美術品のような美しさだ。

クルマの加工や組み立てに用いる「治具(じぐ)」などもオラチオ自身が設計し、常に美しく磨き上げられている。パガーニの工場そのものが、オラチオ・パガーニという芸術家のアトリエなのである。

「芸術品の域にまで高められたパーツを組み上げていくので、クルマ自体も芸術的なものになります。そのため、パガーニは分解しても美しい。しかも、最新のデジタルデバイスを用いず、あえてアナログ的手法で極限まで作り込んでいます。だからこそ、パガーニは『本物』のオーラを放つのです」

パガーニのオーナーには「自分の価値判断で物事を成し遂げてきた成功者」が多い

本物であるがゆえに、パガーニは「並の富裕層」では手に入れることができない。「パガーニのオーナーには、人の価値基準にとらわれることなく、自分の価値判断で物事を成し遂げてきた成功者が多い」と武井さん。クルマだけではなく、オーナーにも「本物」が求められるわけだ。

「パガーニは歴史が浅いので、ブランド力ではまだフェラーリやランボルギーニに及びません。その分、高級腕時計の精密な美しさや完成度のような、本物を見極められる人に訴えかける魅力があります。誰もが知っているブランドではなく、人とは違うオンリーワンを求める人が行き着くのがパガーニなのです」

パガーニを所有するためには、数千万円もの予約金の支払い、仕様決定を経たのち、納車まで2年以上待たなければならない。さらに、パガーニが特殊なのは、特注のハンドメイドなのに、すべてがオーナーの思い通りの仕上がりになるとは限らないことだ。

「オーナーは、完成に至るまでに何度でもアトリエと呼ばれるパガーニ本社工場を訪れることができるのですが、足を運んで打ち合わせを重ねるほど、オラチオ氏のテイストに影響されて、当初思い描いた完成像とは違うクルマに仕上がることも多々あります」

それでも、オーナーの満足度は高いという。オーナーの考えのさらに先を見抜き、その想像を超えるものを完成させる。そんなところも、オラチオ氏が天賦の才能を持つ芸術家と称されるゆえん。オラチオ氏にとって、クルマ1台1台が自分の命を吹き込んだ「作品」なのだ。

オラチオ・パガーニは、エンツォ・フェラーリやスティーブ・ジョブズと並ぶ天才

「オラチオ氏の存在は、フェラーリ創業者のエンツォ・フェラーリや、アップルのスティーブ・ジョブズとオーバーラップします」と武井さんは語る。

「自分の美意識や哲学、理想を徹底的に追い求め、そしてビジネスとして成功に導く。パガーニこそ、現代における本物のスーパーカーメーカーです」

芸術品に近いスーパーカーだけに、パガーニは現在、年間20台ほどしか生産されていない。その希少性も加わって、世界中の超富裕層やセレブリティがパガーニを購入するために何十人も列をなし、順番待ちをしている状態だという。

いつの日か、より大きな成功を収めて、この本物かつオンリーワンのスーパーカーを手に入れたい…。天才が作り上げたパガーニという芸術的なスーパーカーは、大人の男にそんな夢を抱かせるクルマなのである。

Text by Tetsuya Abe

取材協力
ビンゴスポーツ 東京ショールーム
住所:東京都千代田区永田町2-12-4 赤坂山王センタービル1F
TEL:03-5511-7722
FAX:03-5511-7723
MAIL:info@bingosports.jp

2011年よりパガーニの日本総代理店となったビンゴスポーツ。パガーニの購入の相談はもちろん、希少なヴィンテージカーやスーパーカーを独自のネットワークを駆使して世界中から取り寄せ、ユーザーが望むスーパーカーライフを精力的にサポートしてくれる。なお、2017年5月ごろに「パガーニ東京ショールーム」をオープンする予定。詳細は近日発表される。
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マッチョな軍人たちへ──愛国仕様のダッジチャージャー

『ワイルド・スピード』の第一作が公開されたのは2001年のことだ。主人公ドムの愛車は、圧倒的パワーをもつ古き良き時代のダッジ『チャージャー』。言わずとしれたマッスルカーである。あれから10余年。アメリカでは今、シリーズにたびたび登場する1960〜70年代の『チャージャー』の価値が上昇し続けている。なにしろ、このSUV全盛の時代にあって、現行の『チャージャー』『チャレンジャー』までもが10年間で70%も販売台数が伸びているのだ。そして、この人気を逃すまいとブランドもさまざまな限定車やオプションを設定。今年4月には、なんとも印象的なストライプのカスタムルックが登場した。

モダンマッスルカーの代表車種2台。ダッジ『チャージャー』と『チャレンジャー』

マッスルカーとは、広義では大排気量のV8エンジンを搭載するハイパフォーマンスのアメリカ車を指す。狭義では1968年から1971年にかけて作られた高性能でハイグレードなアメ車のこと。フルサイズのセダンやクーペ、後輪駆動車が多い。したがって、より正確にいうと、現行車種はマッスルカーではなく、ニューマッスルカーなどと呼ばれる。

そのモダンなマッスルカーのひとつが、ダッジブランドの現行『チャージャー』『チャレンジャー』だ。『チャージャー』は2ドアクーペで、いわば生まれながらのマッスルカー。『チャレンジャー』は4ドアセダンで、フォード『マスタング』と同様にポニーカー(手頃な価格のスポーティカー)として誕生した。いずれも現行型は第三世代で、発表されてから10年以上の時を刻んでいる。にもかかわらず、本国では依然高い人気を誇るモデルだ。

その証拠に、4月のニューヨークオートショー2019において、2台の上位グレードに設定可能な特別パッケージが発表されると、それだけでニュースになったほど。パッケージの名称は「stars & stripes edition(スター・アンド・ストライプス・エディション)」。ミリタリーをテーマとする渋いストライプをまとったカスタムルックのオプションである。

テーマは星条旗。フロントからリアにかけて走る極太のサテンブラック・ストライプ

「stars & stripes edition」は、その名のとおり、「スター・アンド・ストライプス(星条旗)」をテーマにしたカスタムルックだ。最大の特徴は、フロントからリアにかけてボディを覆うようにペイントされたサテンブラックのストライプ。この極太ストライプの正面に向かって右側、つまりドライバーズシート側には、シルバーの縁取りが入っている。

シートはブラックのファブリック(布製)で、ヘッドレスト側面に刺繍されたブロンズのスターが目を引く。このブロンズカラーはシートとステアリングホイールのステッチにも使用されている。そのほか、ボディ側面にさりげなく描かれている星条旗、20インチホイール、前後のスポイラー、装備されるバッジ類は、すべてサテンブラック仕上げだ。

選択できるボディカラーは、「デストロイヤーグレイ」「F8グリーン」をはじめ、「グラナイトクリスタル」「インディゴブルー」「マキシマムスティール」「オクタンレッド」「ピッチブラック」「トリプルニッケル」「ホワイトナックル」の全9色。写真の『チャージャー』はデストロイヤーグレイ、『チャレンジャー』がまとっているのはF8グリーンだ。

軍人や愛国精神をもつマッチョたちのために設定されたカスタムルックのオプション

「統計によると、軍人が購入するアメリカンブランドのなかで、もっとも人気があるのはダッジ」。これはダッジのプレスリリースにある一文だ。とりわけ、彼らがもっとも多く選択しているのが『チャージャー』と『チャレンジャー』だという。つまり、軍人や愛国精神をもつマッチョな男たちのために設定されたのが今回の星条旗ルックというわけだ。

愛国精神はともかく、マッスルカーがマッチョな男に似合うのは『ワイルド・スピード』シリーズを見れば一目瞭然。日本人はよほど筋トレしないとむずかしいかもしれない。

なお、「stars & stripes edition」が設定されるのは『チャージャーR/T』『チャージャー スキャットパック』『チャージャーGT RWD』『チャレンジャーR/T』『チャレンジャーR/T スキャット・パック』『チャレンジャーGT RWD』の6車種。5月から発売される。

Text by Kenzo Maya
Photo by (C) Fiat Chrysler Automobiles
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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