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第28回 | 大人のための最新自動車事情

日伊合作で復活した名車『アバルト124スパイダー』

「アバルト」のスコーピオンエンブレムには、長い歴史がある。元をたどると、フィアットの小排気量車をベースにしたエンジンチューンやレース車両の製作を手がける自動車メーカー、「アバルト&C.」へと行き着く。「アバルト&C.」は1971年、フィアットに買収されレーシング部門を担うようになるが、1981年には会社自体が消滅。アバルトの名は残ったが、会社としての歴史は途絶えた。「アバルト&C.」の名称がFCA(フィアット・クライスラー・オートモービルス)の一組織として復活したのは2007年。その翌年の2008年には、新型『フィアット500』をベースとした『500アバルト』を発表。世間の耳目を集めた。そのアバルトが新たに手がけたのが『アバルト124スパイダー』である。

『マツダ・ロードスター』をベースにアバルトが味つけを施した『124スパイダー』

そもそも『124スパイダー』は、WRC(世界ラリー選手権)をはじめとする様々なレースにおいて、幾多の栄冠を手にした名車である。その名が、40年の時を経て『アバルト』ブランドとして甦った。

ベースとなったのは、新型『マツダ・ロードスター』。生産はマツダが本社工場にて行い、スタイリングデザインやパワートレイン、室内装備・材料、サスペンション及びステアリングフィールはFCAが独自で開発した。

心臓部には、1.4Lマルチエア4気筒ターボエンジンを搭載。最高出力170ps、最大トルク250Nmを発揮し、0-100km/hの加速は6.8秒(欧州仕様参考値)となっている。軽量素材の使用によって車両重量は1150kg(マニュアルモデルは1130kg)に抑えているので、パワーウェイトレシオはクラストップの6.2kg/hp(乾燥重量1060kgの場合)を達成した。

また、エンジンノートは、エンジンの回転数に応じて排気経路が変わる「レコードモンツァ・デュアルモード・エキゾーストシステム」をアクセサリーで設定。心地よい深みのあるサウンドを愉しむことができる。

トランスミッションは6速マニュアルと6速オートマチックを設定。マニュアルはストロークの短いダイレクトなレバーによる速やかで正確なシフトが特長だ。オートマチックはトルクコンバーターを採用し、エンジントルクをフルに活用するとともに本格的なレーシング感覚を実現している。

エンジンとトランスミッションから産みだされるパワーを路面へと伝えるサスペンションには、フロントにダブルウィッシュボーン式、リアに5アームのマルチリンク式を採用。コーナリング時や減速時の安定性を高めるよう特別なチューニングを施した。

『マツダ・ロードスター』とは異なる『アバルト124スパイダー』独自のデザイン

エクステリアで印象的なのは、フロントエンドのオリジナルラインと六角形のフロントグリル。『ロードスター』とは一線を画す『アバルト124スパイダー』ならではの個性を主張している。ボンネットの膨らみはエンジンが縦置きであることを示唆するもので、オリジナルの『124スパイダー』を彷彿させる。

インテリアは見られることを意識したスタイリッシュな造作だが、その根底にあるのはドライバーズファーストの思想。シートはサポート性と快適性を兼ね備えていると同時に、ドライバーがクルマの挙動を感じやすいように可能な限り後方に低くセッティングされている。ちなみに、シートの素材はアルカンターラとレザーの組み合わせに加え、オプションでオールレザーを選択可能だ。

オープンカーらしいのは、快適性の確保のために標準装備されたシートヒーター。そして、防音型のウィンドスクリーン、リアウインドウ、2層ソフトトップを設置することで高い遮音性能を実現した。ソフトトップの開閉は手動だが、運転席から片手で簡単に行うことができる。

軽量でキビキビと、鋭く走る姿は、小さくても侮れない一刺を持つサソリそのもの。40年ぶりにその名が復活した『124スパイダー』に、伝統の『アバルト』のチューニングと『ロードスター』の技術が加わった1台。走りを堪能できるピュアスポーツであることは間違いないだろう。

Text by Tsukasa Sasabayashi

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第129回 | 大人のための最新自動車事情

マッチョな軍人たちへ──愛国仕様のダッジチャージャー

『ワイルド・スピード』の第一作が公開されたのは2001年のことだ。主人公ドムの愛車は、圧倒的パワーをもつ古き良き時代のダッジ『チャージャー』。言わずとしれたマッスルカーである。あれから10余年。アメリカでは今、シリーズにたびたび登場する1960〜70年代の『チャージャー』の価値が上昇し続けている。なにしろ、このSUV全盛の時代にあって、現行の『チャージャー』『チャレンジャー』までもが10年間で70%も販売台数が伸びているのだ。そして、この人気を逃すまいとブランドもさまざまな限定車やオプションを設定。今年4月には、なんとも印象的なストライプのカスタムルックが登場した。

モダンマッスルカーの代表車種2台。ダッジ『チャージャー』と『チャレンジャー』

マッスルカーとは、広義では大排気量のV8エンジンを搭載するハイパフォーマンスのアメリカ車を指す。狭義では1968年から1971年にかけて作られた高性能でハイグレードなアメ車のこと。フルサイズのセダンやクーペ、後輪駆動車が多い。したがって、より正確にいうと、現行車種はマッスルカーではなく、ニューマッスルカーなどと呼ばれる。

そのモダンなマッスルカーのひとつが、ダッジブランドの現行『チャージャー』『チャレンジャー』だ。『チャージャー』は2ドアクーペで、いわば生まれながらのマッスルカー。『チャレンジャー』は4ドアセダンで、フォード『マスタング』と同様にポニーカー(手頃な価格のスポーティカー)として誕生した。いずれも現行型は第三世代で、発表されてから10年以上の時を刻んでいる。にもかかわらず、本国では依然高い人気を誇るモデルだ。

その証拠に、4月のニューヨークオートショー2019において、2台の上位グレードに設定可能な特別パッケージが発表されると、それだけでニュースになったほど。パッケージの名称は「stars & stripes edition(スター・アンド・ストライプス・エディション)」。ミリタリーをテーマとする渋いストライプをまとったカスタムルックのオプションである。

テーマは星条旗。フロントからリアにかけて走る極太のサテンブラック・ストライプ

「stars & stripes edition」は、その名のとおり、「スター・アンド・ストライプス(星条旗)」をテーマにしたカスタムルックだ。最大の特徴は、フロントからリアにかけてボディを覆うようにペイントされたサテンブラックのストライプ。この極太ストライプの正面に向かって右側、つまりドライバーズシート側には、シルバーの縁取りが入っている。

シートはブラックのファブリック(布製)で、ヘッドレスト側面に刺繍されたブロンズのスターが目を引く。このブロンズカラーはシートとステアリングホイールのステッチにも使用されている。そのほか、ボディ側面にさりげなく描かれている星条旗、20インチホイール、前後のスポイラー、装備されるバッジ類は、すべてサテンブラック仕上げだ。

選択できるボディカラーは、「デストロイヤーグレイ」「F8グリーン」をはじめ、「グラナイトクリスタル」「インディゴブルー」「マキシマムスティール」「オクタンレッド」「ピッチブラック」「トリプルニッケル」「ホワイトナックル」の全9色。写真の『チャージャー』はデストロイヤーグレイ、『チャレンジャー』がまとっているのはF8グリーンだ。

軍人や愛国精神をもつマッチョたちのために設定されたカスタムルックのオプション

「統計によると、軍人が購入するアメリカンブランドのなかで、もっとも人気があるのはダッジ」。これはダッジのプレスリリースにある一文だ。とりわけ、彼らがもっとも多く選択しているのが『チャージャー』と『チャレンジャー』だという。つまり、軍人や愛国精神をもつマッチョな男たちのために設定されたのが今回の星条旗ルックというわけだ。

愛国精神はともかく、マッスルカーがマッチョな男に似合うのは『ワイルド・スピード』シリーズを見れば一目瞭然。日本人はよほど筋トレしないとむずかしいかもしれない。

なお、「stars & stripes edition」が設定されるのは『チャージャーR/T』『チャージャー スキャットパック』『チャージャーGT RWD』『チャレンジャーR/T』『チャレンジャーR/T スキャット・パック』『チャレンジャーGT RWD』の6車種。5月から発売される。

Text by Kenzo Maya
Photo by (C) Fiat Chrysler Automobiles
Edit by Takeshi Sogabe(Seidansha)

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